溢れ出る尊厳/ノニト・ドネアのWBSS

最も人道的な側面において先週2人のファイターが敬意を示し合い、男は2人の息子への約束を果たした。我々は、人生において、スリル、溢れる出る感情、尊厳、優しさに満ちたドネアや井上をもっと必要としている。

https://www.youtube.com/watch?v=3SGpGFHmPCQ

ノニト・ドネアは私がなぜこのスポーツが好きなのかを思い出させてくれる。

彼はもうすぐ37歳だが、かつてないほど絶好調にみえた。もうキャリアの終わりに近いが、アゴは強く、破壊的な強打者のままだった。

勝っても負けても、いつも笑顔で手を振ったり抱擁したり、喜びを示してみせる。

彼は難しい質問に答える。妻を愛し、子供たちの手本となり、ボクシングに憧れ、賞賛され、高く評価されている。

ドネアはノックアウトオブザイヤー、アップセットオブザイヤーを獲得しているが、お金のためでなく常に偉大さを追いかけている。レジェンド、ノニト・ドネアはベストを目指し挑戦をあきらめない。

我々はWBSSの決勝でドネアが日本のセンセーション、井上尚弥の17番目のノックアウトの犠牲者になると考えていた。

しかしドネアは己の力を誇示し12ラウンドの戦争を闘いぬいた。彼らが最後に抱擁を交わした時、井上は流血し眼底、鼻の一部を骨折していた。それは世界最高のファイターとして井上の地位を固めた意識調査であり、決して教えることができない、お金では買えない貴重な経験となった。

尊厳は2人の間だけでなく試合全体で感じられた。

井上尚弥がWBSSを制しモハメドアリ・トロフィーの王冠を手にした。しかしドネアは敗北でさらなる世界的な信用を得た。

ドネアは一緒に来日した2人の息子にモハメドアリ・トロフィーを持って帰ると約束していたので、井上に一晩トロフィーを貸してくれないかと頼んだ。多くの人と違い、ドネアは自分の名前がトロフィーに刻まれると心から信じていた。

ボクシング関係者はノニト・ドネアがこのトーナメントに選出されたのは、大会に色を添える、名前を貸すためのものだと考えていた。しかしドネアだけがそのように考えてはいなかった。

ドネアは最初から自分と井上が決勝で対戦すると考えていた。2人が世界を驚かせることになることをわかっていた。それは運命であり、井上の優しさのおかげで、たとえ一晩だけであっても、ドネアは息子たちとトロフィーを共有することができた。

もちろん、全てのファンを満足させることは不可能だ。
11ラウンドの恐ろしい井上のボディでダウンしたドネアは、10カウントを聞いたという意見がある。しかしボクシングにビデオ判定はない。ドネアはレフリーに従い試合を続けた。

カウント10に意義を唱える者がいても、誰も声を大にはしなかった。公式にクレームしたり調査したりはしなかった。このスポーツの最高の作品が展示されているその時にストップウォッチ片手に虫メガネで些細な事にこだわる者などいなかった。

ボクシングではポジティブではなくネガティブなアラを探そうとする人が常にいる。そして彼らはしばしば正しい。ボクシングには確かに多くのネガティブな側面があるが、偉大な試合のさなか、ネガティブな要素を積極的に探す必要はない。

WBSSには多くの利点がある。過去3階級に渡って、ファイトオブザイヤー候補の試合を続々と生み出してきた。

まさにクレイジーなロジックだ。ベストとベストをペアリングすると、どんなハイクラスなマッチアップが得られるだろうか。お決まり的な側面は否定できないが、結果が全てを物語っている。カレ・ザワーランドとコモサのチームは世界で最も優れたファイターが成長するだけでなく、ブレイクすることを可能とするプラットフォームを作り上げた。

彼らはタイトルを統一し団体を一掃し、魂の一部をリングに残し、未来を切り開いた。そしてなによりファンは熱狂した。

非常事態もあった。法廷闘争、紛争、しかしそれは戦争、血、情熱、スポーツマンシップ、勝敗と同じくらいスポーツにはよくあるつきものだ。

最も人道的な側面において先週2人のファイターが敬意を示し合い、男は2人の息子への約束を果たした。ボクシングは問題を抱え、間違った方向に舵をとることも多いが、WBSSは何としても継続しなくてはならない。

我々は、人生において、スリル、溢れる出る感情、尊厳、優しさに満ちたドネアや井上をもっと必要としている。

やはり、ノニト・ドネア、5階級制覇のレジェンドの底力は伊達ではなかった。
そして人間的にも想像以上に大きな男だった。

偉大な試合、偉大な人格は勝敗すら超えていた。

https://www.youtube.com/watch?v=OUEwu52LrrM

https://www.youtube.com/watch?v=czLcs6GBxuA

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コメント一覧
  1. 井上陣営が冗談まじりで言ってるぐらいで、マジで抗議してるわけでもないから、いいじゃん、

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  2. レフリーの指は9。でもリングサイドの時計を持ったコミッショナーの指が3のタイミングでレフリーがカウントを始めた。レフリーのカウントは確かにゆっくりだった。が、井上陣営からの抗議もなく、井上も苦笑いの「幻のテンカウント」と言う程度。どうでも良いことなんだよ

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  3. そのうちAIが審判するようになるんでしょうね
    味気ない物になるか、公平な物になるか、どちらでしょう?

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  4. >ボクシングには確かに多くのネガティブな側面があるが、偉大な試合のさなか、ネガティブな要素を積極的に探す必要はない。

    観客とかファンの外野はコレでいいと思うけど、コミッションまでこの感性でやった結果が今の界隈の惨状だよね。
    悪意はなかったにせよミスジャッジには違いないんだから責任はとらなきゃでしょ。
    無関係の外野が騒いでるのは関係者がそういうのを野放しにしてるせいでもある。
    コレでお咎めなしなら曲がりなりにもちゃんと謹慎処分受けてるだけカネロの方が立派。

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  5. この件はどちらの意見もある程度理解できるから難しい
    今回の試合、見る人にもよるがどちらの株も下がらず、ドネアのノックアウトなんて見たくなかった個人としては、嬉しい結末だった
    ジャッジによってこういう結果になって良かったというわけでは決してなく、結果的にこういう終わり方になって良かったというか…ニュアンスは伝わるだろうか

    ただし、こういうもんだよねと安易に容認するのも違うと思う
    そこから誤審や不正が増えると悲しむのは選手だ
    エンターテイメント、興行なのは事実だが、その前にスポーツであり格闘技なんだから、あるべき勝敗や選手の尊厳、機会を奪うものであってはならない
    エンタメ要素が行き過ぎると、かつては亀田が日本を席巻し、または今のメキシコみたいにドーピングの一つや二つやったもん勝ちみたいになるわけだろう
    さっきプロフェッショナルの流儀で、当時のプロボクシング(多分亀田の、エンタメ性が強かった頃の)が嫌いだったと井上も言っていた

    話が大げさになったが、結論として、見る方は厳しい視線で見ておいた方が、長期的には選手を守ることになるのでは…という話

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  6. マイク・タイソンだってダグラスのダウンは10カウントオーバーで俺の勝ちだなんてあんまり言わなかったじゃないですか。負けを認め潔かったはず。

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  7. “長文失礼します”さんのコメントが正鵠を得ているように思います。

    仮に誤判断だったとしても、この程度のミスでいちいち叩かれてたらブラッドリーvバルガスのレフリーは八つ裂きにされてますね…

    まあ、これでもし井上が逆転敗けしてたらえらいこっちゃな方々の意見にも同意なんですが。

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    • もっと酷い例があるんだから見逃せよ!
      ってスピード違反で捕まった奴の
      「俺よりもっとスピード出してるやついるだろ!」
      と同じでしょ

      ファンが騒ぐのは無粋だとは思うけど、関係者がなあなあで済ませていいことでは無いと思うよ。
      そもそもこんな無粋な騒ぎ方する奴が多いのは、今までも関係者がなあなあで済ませて仕事しなかったのも原因だよ。

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  8. レフェリーの位置からも当たった場所からも、レフェリーがローブローと誤認したということは無いと思います。ドネアがガードを下げて井上に背を向けたため、(スタンディングダウンは無いはずですが)続行は危険と判断してストップしたのだと思います。また、あの様な極限状態でローブローを偽装して審判を欺くというのも現実的では無いと思います。審判が制止しなければ、ノーガードで井上に死角から殴られることになるためリスクが高過ぎます。おそらく、ロドリゲスも井上のボディでダウンした時は戦意喪失状態になっていた様に、ドネアも一時的に同じような状態になったのでは無いでしょうか。その後ドネアがダウンしたため、審判の制止も正当化されました。(ダウンしなかったら収拾がつかなかったはずです。)審判の制止からカウントが始まるまでの時間が長くなりましたが、これは不可抗力の範囲だと思います。まさか途中からカウントする訳にもいかないですし。ボクシングではダウンしたことによって救われる、戦略的にダウンするということもあり、結果的にそうなったという理解です。
    もし審判の制止がなく、ノーガードで戦意喪失状態のドネアを井上が死角から倒した場合、事故の危険性も高く、KO勝利でも後味の良い結果ではなかったのでは無いでしょうか。また、ビッグマッチ故に問題のある試合終了を避けようとするレフェリーの意思も働いたかも知れません。
    難しい状況で、結果として、選手を守り、試合を円滑に進め、勝つべき者が勝ったということで、むしろ良いジャッジだったと思います。

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  9. まだつまらない事にこだわっている人が多いのはボクシングというものを理解出来ていないからなのでしょう。プロボクシングは他のプロスポーツと違ってエンターテイメント性が強いものです。
    だからと言って今回の10カウントが正しかったという事ではありません。
    この10カウントを見て
    >ボクシングを長いスパンで見てたら、これを小さなことだとは思わない筈
    >今の一瞬、気持ち良くワーワーする為のネタとしてボクシングを見ている人達な気がしますね。
    と思うなら、日本人の井上が出場するのに日本で開催はどうなるの?
    とか井上が出血した時、特に2回目など何故ドクターチェックは入らなかったのか?
    ボクシングではドクターのみ試合や会場の雰囲気をまるで忖度しない結果を産み出す事があります。
    結果的には井上は2か所も骨折しています。鼻血が止まらないのも骨折の疑いアリだったかと思います。
    など様々なつまらない事があります。どんなスポーツにもマニアなファンは存在しますしその人たちの意見は正しかったりしますがプロはマニア以外の最近流行りの にわかファン を獲得してこそ盛り上がっていきます。エンターテイメント性の高いボクシングは尚更です。
    今回の10カウントは言い出したらキリが無い、うちの一つだと思います。
    でもプロレスみたいにワン、ツー、、、ニィテンハチィ!!とかってなるともう見ないと思います(笑)。

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  10. >タイソン×ダグラスを思い出します

    私もすぐに思い出しました。あの時はリングサイドにカウント要員がいてそのカウントではダグラスは完全にKO負けでしたね。その後タイソンが逆転KO負けするという悲劇が起きました。今も未だ反省は活かされてないという事ですね。

    >ボクシングを長いスパンで見てたら、これを小さなことだとは思わない筈
    >今の一瞬、気持ち良くワーワーする為のネタとしてボクシングを見ている人達な気がしますね。

    仰る通りです。

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  11. 10カウントについては、逆転でドネアが勝っていたら、少なくとも日本では大問題になっていますよね。
    タイソン×ダグラスを思い出します。
    ボクシングを長いスパンで見てたら、これを小さなことだとは思わない筈です。今の一瞬、気持ち良くワーワーする為のネタとしてボクシングを見ている人達な気がしますね。

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  12. >ボクシングではポジティブではなくネガティブなアラを探そうとする人が常にいる。そして彼らはしばしば正しい。

    まさにその通り

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  13. まぁドネアのズルい事ねw アレがローブローに見えるあのレフェリーも首にして欲しい。体幹は強くてもレフェリーとしては役立たず(笑)

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  14. 海外のファンも10カウントだったと騒いでますよね
    レフェリーのカウントをしっかり見れば、9で立ち上がってると分かるんですが
    印象で流されて、誰もきちんと検証してないのは問題だと思います

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  15. 10カウントは10カウントでしょ。いい試合だったからって真剣に考えなければいけない事をなあなあにしていく事こそ問題なんです。大体ボクシングのこういうルールは匙加減が過ぎますよ。何で時間における10秒に出来ないのか謎過ぎるんですが。レフェリーが肩入れすればゆっくり休ませることが可能なルールなんて欠陥も良い所。

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    • 国内での井上人気は嬉しい限りですが、悲しいことに普段からボクシング好きな訳ではなく世界的に活躍する日本人が好きなだけな人ほど今回の10カウントについて盛んに紛糾しているように見えます。ドネアの試合後インタビューをみれば分かりますが、仮に正しい10カウントであっても彼は9カウントで立ってましたよ。9カウントまで休むつもりのダウンですから。
      もし問題点として挙げるならボディ入った直後のレフェリーがブレイクした箇所でしょうが、あれはドネアの反応からローが入ったように勘違いしたものだと思います。間違いなくレフェリーのミスではありますが、ボクシングに限らずバスケでもサッカーでも野球でも人為的に裁量する競技にヒューマンエラーは必ず起こり得ます。どんなに努力しても絶対になくなるものではありません。その中で今回の10カウントは作為的でもなく、大げさなオーバーでもなくあなたが言うほど大ごとではありません。一ボクシングファンとして観戦すればそれ以上に心に残るものがあるはず。
      それを今回のような素晴らしい好試合の中でそこに焦点が行く人たちが散見されるのは残念で仕方ありません。

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      • ドネアが立っていたとか今更変えようがない事はどうでもいいのです。言っている事はスローカウント等こういうざっくりとした掴みどころのないルールの問題点です。心に残った事とこれから競技を良くしていこう変えられるものは変えていこうと考える事は別物です。

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      • >ローが入ったように勘違いしたものだと思います

        いやいや、ローブローに見えたならどういう理由、根拠でカウント取り始めたのよ。しかもクソおせぇし(笑)

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        • よしもとボクシング部のYouTubeチャンネルで、ロバート山本さん(彼は審判の資格取得を勉強中らしい)が解説していた内容では、ローブロー(ダウン)かどうかを審判が、リングサイドの副審に確認しに行ったのではないか、その確認後にカウントを取り始めたので、遅れたのではないかということです。
          今朝見た動画の記憶を頼りに書いているので、詳しくはその動画を見てみてください。

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          • 情報ありがとうございます!確かに相撲で言うところの正面側のスキンヘッドの黒人が立ち上がり主審のカウント前に何か指示してるように見えますね。確認にする時間が必要だったのなら自分の判断が遅れている自覚は無かったのでしょうかね。遅れていると思ったレフェリーはよく途中からカウントを始める方もおられますので。ぼくシンゴさんへの意見ではありません(笑)
            何度も超スローで映像を確認し結果として11R1:54に井上君のレバーブローが炸裂する訳ですが、その約1秒前、11R1:55のレフェリーと2選手の3人が映っている位置関係からレフェリーはドネアの右わき腹が正面に見えるベストポジションに立っていると推測出来ます。井上君のボディはドネアが顔面へのフックを警戒しガードを高く上げた瞬間に丁度彼の右肘の真下に滑り込むように放たれており、グローブがベルトライン上部にも掛かっていませんでした。
            ※画像参照 https://d.kuku.lu/84ea74d7e9
            そうなるとこれをローブローと勘違いするレフェリーの力量を疑わざるを得ません。実はレフェリーがよそ見をしていてその後のドネアの動きから判断した不手際も考えられます。まあ私としては井上君が無事勝ったのでトータルで良しとしてますが。動画は後で見てみますね!

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  16. いつのまにか芸人ではなくコメンテーターになった
    松本人●が、11回はカウント10だとおもうでーという発言を
    大手メディアが一斉に流しミーハーはそれに引きずられる。

    悲しき低俗・・・

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  17. この記事書いた方だれなんでしょ?ボクシング記者?素晴らしい見識ある内容ですね。素人上げたYouTubeが沢山が沢山ある中でこんな記事皆さんに読んで欲しいな。ボクシング好きとしては。

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  18. WBSSバンタム級の主役はドネアでしたね。
    優勝は出来なかったけど、バンタム級ではトップオブトップであることを証明しました。

    間接的に階級トップクラスとは大差があることを露呈してしまったロドリゲスがめちゃくちゃ可哀想ですけど、ネリ戦で暴れて名誉挽回といきましょう。

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