
昨日は先々週のPBC6連戦に比べると地味な週末イベントだったので、事後観戦でいいかなぁとおもいつつ、習慣のせいでなんとなくライブ観戦となりましたが、ファイトオブザイヤーどころかファイトオブザディケイドものの興奮のボルテージとなりました。
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互いに4度ダウンのフルアクション、結末の5回まで毎回ダウンシーンが訪れるシーソーゲームでしたが、伏線ははっきりとありました。
[st-card id=104376 ]初回
プレッシャーと剛腕のバランチェクの勢いが勝り、それに飲み込まれるように2度吹き飛ばされたセペダですが、バランチェクの勢いに対抗するには、ある程度開き直って打ち合う、カウンターをぶち込むしかないと覚悟を決めるスタートになりました。バランチェクとしては最高の出だしとなりました。
2回
初回に2度ダウンを奪ったのだから、このまま仕留めてしまえとバランチェクが飛ばしていきますが、開き直りとタイミングを掴んだのはセペダでした。相変わらずバランチェクの勢いが勝り、吹き飛ばされそうなセペダでしたが、抜群のタイミングでカウンターを決めてバランチェクを大きく泳がしダウンを奪い返します。このダウンの方がクリーンヒットで効かせるものでした。
畳みかけるべくセペダが飛ばしますが、序盤のバランチェクはとにかく狂暴でフィジカルも強く、セペダはまた弾き返されダウンを追加してしまいます。この時点でセペダのダウンは3回、バランチェクは1回ですが、パンチのクオリティはセペダが勝っており、ダメージは互角かバランチェクにあったとおもいます。セペダはダウンはしても芯を外しており甚大なダメージではありませんでした。
3回
こうなったら短期決戦、ノックアウトを決めたいバランチェクはトドメを刺すべく襲い掛かりますが、雑に突進してくるバランチェクはセペダにとっては得意のカウンターワールドにもなります。タイミングのいいセペダ渾身の左が何度も捉える。エキサイトしたバランチェクは倒すことしか考えていないので、何度も同じカウンターを同じ場所に食います。セペダの左炸裂でバランチェクダウン。並みのファイターなら終わっているパンチですが、勝ちかけているバランチェクはアドレナリン出まくりで、立ち上がっても同じファイトでセペダに襲い掛かります。
4回
3回と同じ流れ。フィジカルもプレッシャーも強いバランチェクの強襲にセペダがいつ捕まってしまうのかという内容ながらも、カウンターで効果的なダメージを与えているのはセペダの方。バランチェクの突進とスイングは怖いが、カウンターが入りまくる展開ともいえる。押しているのはバランチェクでも、一撃のカウンターでセペダがまたもやバランチェクからクリーンなダウンを奪取。
どちらもしんどいが、意識が朦朧とするほど効いているのはバランチェクの方だろう。
5回
何度もカウンターを食い倒されながらも、初回から自分らしいファイトで勝利を掴みかけているのはバランチェクなので、休むことなくセペダを追いかけまわしトドメの一撃を打ち込みたい。
必死に応戦しつつ、3回、4回と同じカウンターをぶち込みたいセペダが押されながらもバランチェクのクセとタイミングを完全に掴んでいる。バランチェクの気迫とフィジカル、オーバースイングフックの威力はすさまじく、またもや圧力で吹き飛ばされるようなダウンを喫する。(しかしこれもモロに食ってはいないのだ。)ロープダウンのような感じでカウントの一呼吸を入れたのがセペダには幸運となったか。
クリーンヒットによるダウンではなく、致命的な被弾は避けているのだ。ここぞとばかりにノックアウトを決めに来るバランチェクに、ずっとタイミングがあっていた左カウンターをぶち込んで、逆転ノックアウト、ジエンド。
強烈なカウンターだが、全て同じパンチを同じ場所に打ち込まれていたからバランチェクはあんなにも効いた。倒すことに夢中で自分が前のめりになりすぎていたから余計に効いた。さらにはサウスポーのセペダにとって一番パワーがあるパンチが全部カウンターとなった。
セペダの喫したダウンはほとんどクリーンヒットではなく、バランチェクのフィジカルパワーに吹き飛ばされていたのに対し、バランチェクの喫したダウンは全部タイミングドンピシャのカウンターであり、ダメージ差が顕著だった。
この試合をして、ファイトオブザイヤーなんておこがましい、低レベルの乱打戦という批判も聞かれるが
イバン・バランチェクは元世界王者であり、ホセ・セペダは前戦でホセ・ペドラサを破り、2冠王者のホセ・ラミレスにも肉薄したテクニシャンだ。つまりWBSSでも優勝候補レベルの実力者なのだが、バランチェク陣営は少し過小評価していたかもしれない。無策、同じカウンターを食いまくり。セコンドの指示、日頃のトレーニング、セペダ対策で修正できなかったのか。
[st-card id=56207 ]個人的にはセペダの勝利
両者のスタイルが交わり、こういうド派手な内容と結末となった。
かつて、負け試合から人気と富を得た、ルスラン・プロボドニコフのように、バランチェクは人気も信用も失っていない。むしろ、負けて男の価値を上げた試合になっただろう。再起できるかも心配な負け方だが、回復し元気に退院したという。まずはじっくり休養して欲しい。こんなファイトばかりではさすがに壊れてしまう。
勝ったセペダは、世界再挑戦の最終テストをクリアしたといえる。
ライト級時代は神童だとおもったが、テリー・フラナガン戦で脱臼棄権負けしてからいいところがなかった。Sライトに上げると強打は鳴りを潜め、地味なテクニシャンに甘んじていた。
しかし、これで万事OK、準備が整ったとはいえない。
バランチェクの圧力に簡単に倒されるところなどが、彼の特徴であり、弱点でもある。(我慢せず、あっさり倒れた方が余計なダメージを負わずに済むという好例でもあったか)
両者のスタイルがかみ合い、強みと弱みが全部出た試合。
ファイターとカウンターパンチャーの見本のような内容となった。
これも両者が対極の特徴を持つトップファイター同士だったからかもしれない。
ホセ・セペダ 33勝26KO2敗(敗北は脱臼棄権とホセ・ラミレスに僅差)
退屈なアウトボクサーにみえる彼がなぜこんなKO率なのかがよくわかっただろう。カウンターのスペシャリストなのだ。
元神童は過去形ではない。