砂漠の狼のごとく/アンドリュー・カンシオ

気のせいか今年は試合が多い。気のせいだろう。昨日、今日と熱き闘いが終わりしばし茫然だが、この2日のMVPはアンドリュー・カンシオだろう。こういうアップセットがあるからボクシングはやめられない、止まらない、かっぱえびせん・・・

カリフォルニア州インディオ、アンダードッグのアンドリュー・カンシオは、プエルトリコの無敗王者アルベルト・マチャドに殺人襲撃を仕掛け、WBAスーパーフェザー級王者になった。カリフォルニア州ブライズの小さな砂漠の町で最初の世界王者になった。

カンシオには地元から100人の応援団が駆け付けた。

初回にマチャドの左アッパーで痛烈にダウンしたカンシオは、ファンの後押しで生き残り、その後も捨て身のアタックを仕掛けていった。2人の体格差は顕著で、カンシオにとってマチャドは強力で大きすぎるように見えた。

カンシオ
「苦しいのは経験済みだった。何をすれば相手をノックアウトできるかわかっていた。俺もいいパンチを当てていたし、ホールドやクリンチで逃げたりしたくなかった。」

ロッキー・ファレス、ダードン・ゼニュナジ、レネ・アルバラートらとのサバイバルを勝ち抜いてきたカンシオ、劣勢を挽回してきたカンシオはその時の闘志、決意を再び示した。

ガス会社で働く2人の子供を持つ父親であるカンシオは2ラウンドでガスを噴出させた。マチャドに対する上下のコンビネーションのペダルを踏み続けた。

マチャドはこの波状攻撃から身を守る術を失っていった。なんとかカンシオのコンビネーションを止めようと試みたが、嵐が止んだとみえたその時にカリフォルニアの砂漠のファイターは再び容赦なくコンビネーションを浴びせ続けた。

ファンの歓声は3ラウンドでカンシオの火に燃料を注いだ。
大歓声が上がった。コロラド川近くの砂漠の町に住む19000人の住民全員がそこに集結したような声だった。

カンシオ
「地元のファンの声援は俺を奮い立たせます。」

カンシオは4ラウンドで少し慎重に立て直し、ボディ攻撃を増やしていった。そのボディが貫通し、マチャドは我慢できず膝をついた。その後は負傷した獲物を追いかける狼のごとくカンシオはマチャドに襲い掛かり試合を一気に決めた。

カンシオ
「これは人生の戦いでした。ノックアウトで決めることができた。長い道のりでした。信じられない気持ちだ。」

マチャドは減量苦が自分の弱さに影響したとコメントした。

マチャド
「リングで自分の弱さを痛感した。階級を上げる必要があるかもしれません。」

それを差し引いても、一度は引退しかけたカンシオにとってこの日は人生のハイライトとなった。

カンシオ
「とても嬉しいです。負ける気などさらさらなかった。」

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アンダードッグの視点から、事前記事があれば紹介することがあるが、これもたまたま一度引退したボクサーの再浮上であったこと、ガス会社で働く苦労人ぽいところ、キャリアの中身が濃いことなどから取り上げていました。

ほとんどが、負け犬の強がりであり勝利には届かないのですが、カンシオの場合は記事通りの中身がありました。引退(ブランク)中はボクシングから離れていたらしいですが、全てを見直すため、一度ゼロに戻してやり直す必要があったというように、元は期待のボクサーだった彼は何かを変えて、何かを掴んで、確かに強くなって帰ってきたようです。

元々は、サバイバル戦を勝ち抜いた、レネ・アルバラードが挑戦者でした。負傷で間に合わず、カンシオは代役でした。

誰もが言うであろう。

感動的な試合ではあったが、同日行われた、ゲルボンタ・デービスの敵ではない。
穴王者の誕生だ。

たしかにそうかもしれないが、今はそこには触れず、大きくて無敗でパワフルな将来有望な若き王者を恐れず粉砕したカンシオの勇気と決意溢れるファイトをただただ賞賛すべきだ。苦節のキャリアの凄みをこれほどまでに感じた試合はめったにありません。デービスのような無敵の怪物を倒すのは、時としてこういうアンダードッグでもあるとさえいえる。

アンダードッグが巨大な敵に挑むひとつの究極、覚悟のファイトでした。

感動をありがとうございました。

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