![もっとできる奴/岩佐亮佑](https://box-p4p.com/wp-content/uploads/2019/12/iwasa.jpg)
最近、世間にボクシングが、とりわけ井上尚弥や村田諒太に偏ってはいるが、認知、浸透してきた気配を感じ、嬉しい反面、なんだろう、マニアとしてはもうお腹いっぱい、その他の話題に移行したくなる、で、昨日の岩佐亮佑だ。
「暫定」王者だが、海外で日本人がノックアウトで世界王座を奪取したのは39年ぶりだとか。素晴らしい11回のフィニッシュだった。クロスゲームだったが判定になっても勝っていたとおもう。中には岩佐はポイントで負けているという意見もあったが、厳しい見方だろう。プレッシャーをかける岩佐が試合を支配していた。
前日計量にはアンダーでパス、IBFの当日計量に一度失格していたという常習犯のタパレスだが、30分で700グラム落として合格と、一体どんな体重管理をしてるのか不思議なほどだが、タパレス(33勝16KO2敗)が最後に負けてから12連勝で迎えたこの試合、元世界王者であり、強打で危険なタパレスだけに岩佐の勝利はより偉大だ。日本人で初めてタパレスを破ったことにもなる。
序盤は距離をキープし慎重だったが、やはり時折出すタパレスの左スイングや接近間際に打つアッパーが鋭くて、これを食ったら終わりだなというパワーがあった。テクニカルにもなっており、巧さも増していたようにみえた。中盤には打ち合いに移行した。
完璧に外す、あるいは芯を外す岩佐は冷静かついつもより積極的に前に出てペースメイクしていく。体幹が太く強打で、恐らく試合時の体重が重いタパレスに対して下がらず、前に出ていけたのが勝因のひとつだろう。ロープ、コーナーを背負わないのが頼もしかった。
[st-card-ex url="https://www.sponichi.co.jp/battle/news/2019/12/08/kiji/20191208s00021000318000c.html" target="_blank" rel="nofollow" label="" name="" bgcolor="" color="" readmore="続きを見る"]ここに岩佐の長いインタビューがある。
最後の左ストレートでダウンを奪ったパンチだけが唯一手ごたえがあったとのことだが、立ってからふらついてレフリーにストップされたタパレスは顔面を腫らしダメージの蓄積がみてとれた。
岩佐のプレスが強く、左のクリーンヒットはもらわずとも、強い右ジャブが結構効いていたようにおもう。前にプレスしながら出す右なので、タパレスが押され、下がり、かなりやりにくそうだった。
最後のフィニッシュまでの過程でコツコツとタパレスにダメージを与えていた。
[st-card-ex url="https://www.sponichi.co.jp/battle/news/2019/12/08/kiji/20191208s00021000333000c.html" target="_blank" rel="nofollow" label="" name="" bgcolor="" color="" readmore="続きを見る"]控え目なセレス会長の話も興味深い。
岩佐亮佑の過去の敗北は
山中慎介
リー・ハスキンス
TJドヘニー
だ。山中との試合は才能で勝り、経験で劣ったような素晴らしい内容だったが、ハスキンス戦は墓穴、ドヘニー戦は歯がゆい展開になるも勝ちもありな内容だった。岩佐に期待、あるいは幻滅しているファンの誰もが心の内に「岩佐はもっとできる奴」という気持ちがあったとおもう。だからいつまでもドヘニー戦のような歯がゆい試合を続ける岩佐に、もうこれ以上期待できない、ここが限界と見限る人も多かったのだろう。この試合は日本でも不利な事前予想だった。
[st-card id=91897 ]そんな岩佐の歴史をずっと追いかけてきたからこそ、昨日の試合は
下がらず前に出る、以前と違ったスタイルチェンジと決意
過去の様々な失敗を踏まえた変化
確かなる成長
を感じることができたと同時にまだまだ突き抜けない岩佐らしさも残っているような印象も残した。
岩佐は明らかにパンチはあるが、このレベルで一撃で決めるほどの突き抜けた体力、破壊力はなく、コツコツ痛めつけ、終盤に止めるタイプであり、それにしては手数や回転力がまだ足りないかもとか、実力的には2冠王者のダニエル・ローマンに匹敵するだろうとか、様々なことがわかった。
偶然が必然か、この日はメキシコでスーパーバンタム級最強の呼び声高い、エマニュエル・ナバレッテも試合をしていた。出来はともかく、やはり今勢いがあり、スケールの違う野蛮な強さをみせつけた。勢いだけで圧倒しているようにもみえた。相手の抵抗など蚊にさされたくらいな勢いで潰す。
実は、数値的にはそんなナバレッテと同じか、岩佐の方がサイズが大きいくらいなのだが、なぜだろう、どうしてもナバレッテの方がはるかに大きく狂暴にみえてしまう。
IBFの暫定王者となった岩佐には、もう正規王者との試合、自分より強い(といわれる)相手との試合しか待っていない。標的のダニー・ローマンがこけて、ムロジョン・アフマダリエフやその他の強豪になる可能性だって高い。
そしてナバレッテは2020年の階級統一を公言している。
そんなスーパーバンタム級のトップの一人に日本人が、岩佐亮佑がいることを本当に誇りにおもう。
[st-card id=97922 ]昨日の試合も素晴らしい勝利とともにいい経験となった。
この険しい頂にむかってまだまだ成長し大暴れして欲しい。
ニューヨーク、チャーロの前座という大きな舞台で強烈なノックアウトを演じてみせた岩佐は、井上尚弥に次いで世界のファンの心を捉えたはずだ。
感動をありがとうございました。
今後の楽しみが増えました。
ヒヤヒヤしたけどやっぱり「イーグルアイ」でした。