![ホット&スパイシー/マイケル・ダスマリナス](https://box-p4p.com/wp-content/uploads/2021/01/960x0.jpg)
人生を賭けたチャンスに井上尚弥という最難関を乗り越えんとするダスマリナスの気概は大いに買う。
フィリピンのボクシングシーンには、その才能に見合うだけのメディアへの露出がないファイターがたくさんいる。その結果、フィリピンのボクシングには多くの隠れた宝石が存在する。その中には、出世の機会を得て、大物ファイターとの対戦を実現させ、ハードワークでの逆転劇で名を馳せる選手もいる。また、メジャープロモーターに拾われ、その道に導かれた者もいれば、途中で忘れ去られてしまった者や、成熟したファイターになる頃には、その可能性が無駄になってしまった者もいる。
バンタム級の希望に満ちたマイケル・ダスマリナス (27-2、18KO当時) もその一人だ。
ダスマリナスのキャリアが多い理由は、19歳でプロデビューしたからだ。アマチュアとしてのキャリアの詳細は不明だが、彼は小さい頃からボクシングを始めており、家族の中でもう一人のボクサーである従兄弟の指導を受けていた。しかし、彼の体格はあまりにも薄く、虚弱で、ボクシングには向いていないと言われていた。初期の否定的な見方が、ダスマリナスの原動力となっているようだ。
現在はバンタム級だが、2012年1月にライトフライ級でプロデビュー。
デビュー戦でユナニマスの判定勝ちを収めた後、わずか1カ月後にフライ級に移動し初のストップを決めると、その8日後にはまたもや勝利を収めた。3勝を挙げたダスマリナスは2012年4月にも無敵のヤングスターと対戦。ダスマリナスにとっては残念なことに、ハードパンチのマルボン・ボディオガンに2ラウンドで止められ、プロ初の敗北を喫することになった。この敗戦でもダスマリナスの活動は衰えることなく、2012年末までにさらに5勝を積み上げた。プロになって1年が経過したダスマリナスは、2013年に8勝4KOという印象的な成績を残した。彼のチームはタイトル戦を獲得することはできなかったが、高いレベルで大きなことに向けて準備をしていたことは明らかだった。
ダスマリナスの準備と技術は、2014年にも大いに発揮された。
国内で楽勝を収めた後、海外での初戦は東京で元韓国スーパーフライ級王者の木村隼人と対戦。この試合でダスマリナスは、動き、スピード、ボクシング、そして技巧を駆使して明確な判定勝ちを収めた。この勝利は日本でも多くの注目を集め、山中慎介のスパーリングパートナーとして定期的に来日する実力者であることを示した。木村に勝利した後、ホームでオスカー・ラクナファと対戦し、2度目のフィリピン国外での試合に臨んだ。南アフリカでルワンディル・シティアタとのIBOスーパーフライ級王座決定戦。悲しいかな、ダスマリナスは敗者となり、シティアタがスプリットディシジョンの判定勝ちを収めた。この敗戦はダスマリナスにとって2度目の敗戦だったが、さらなる学習曲線となった。
シティアタに敗れてからわずか数週間後、ダスマリナスはリングに戻り、51秒でアロエル・ロマササを撃破した。この勝利で、ダスマリナスは静かでありながらも印象的な1年をスタートさせ、その後すぐにロイ・ラグラダを倒し、当時無敗だったジャレル・パヤオとWBCユース・スーパーフライ級王座を賭けて戦い勝利した。
このタイトルはダスマリナスのキャリア初のタイトルとなり、実績が認められるチャンスとなった。その後、中国でこのタイトルを防衛し、ウィサンレック・シットサイトンを1ラウンドで止め、2015年を王者として締めくくった。
2016年、ダスマリナスは2度目のタイトルであるPBFバンタム級王座を獲得した。彼は3月にエディソン・ベルウェラを止めて暫定ベルトを獲得したのを皮切りに、その1カ月後にジェッカー・ブハウェに勝利してフルタイトルを手にした。しかし、彼はその年、9月にマイケル・エスコビアを破ってからリングを離れた。
ダスマリナスはその後、11ヶ月間、彼のキャリア最長のブランクを作った。活動休止中にもかかわらず、時間を無駄にせず、代わりにハードなトレーニングを行い、日本のトップファイターとのスパーリングに時間を費やし、ジムでの経験を積みながらスキルを磨いた。
2017年の締めくくりは、再び故郷を離れてシンガポールで戦い、タイ人のプーパ・ポー・ノブノムを2ラウンドで破った。この勝利がダスマリナスのキャリアの新たな章の始まりとなり、シンガポールのリングスター・プロモーションと複数年契約を結んだ。4月20日には、元欧州バンタム級チャンピオンのカリム・ゲルフィとIBO王座を争うことになり、フランス人選手に勝利すれば、WBC世界タイトル戦への扉が開かれる可能性がある。
ダスマリナスは鋭いサウスポーで、美しい動きとスピードを持ち、パワーにも定評があり、バンタム級では大柄だ。パンチのバリエーションも豊富で、ヘッドとボディの切り替えも鮮やかで、将来のスターになる可能性を秘めている。
彼の顎にはいくつかの疑問符がついているが、他のほとんどの部分は定評がある。
2017年までの少し古い紹介でした。
この記事の続き、カリム・ゲルフィ戦が最も印象的なノックアウト劇である。
ゲルフィもその後負けなしでかなり強くみえるが、世界トップレベルとはいえない。
ゲルフィに勝って完全にトップランカーとして勢いにのったダスマリナスは次に無敗のマンヨ・プランゲと戦うも、予想以上の強敵で引き分け。その後は格下に2連勝で現在は
30勝20KO2敗1分
となっている。
身長170センチの強打のサウスポー
格下相手には初回KOも多く、危険なパンチャーといえる。
かなりしっかりしたキャリアを築いているが、日本人との対戦、スパーリングも経験済みで、その実力がベールに包まれているという事はないだろう。木村隼人に圧勝レベル、山中慎介や井上拓真のスパーリングパートナーも務めており、井上尚弥も手合わせした事はあるかもしれない。いわば、いつかの練習仲間という間柄だが、19歳でプロデビューし、30戦以上のキャリアを経て今28歳、成長し、油が乗っている時期であることは間違いない。
日本人だったらこのキャリア、戦績であれば世界挑戦に申し分ない。
フィリピンでこの戦績、KO率はかなりの強打者で間違いないが、試合映像を見る限りは、良いサウスポーではあるが、全てがスペシャルな井上尚弥の敵ではないという見方しか出来ない。先日、トップレベルでその実力の全貌を披露したレイマート・ガバリョよりは、スケールは小さいが、より成熟し完成されているという印象。
井上尚弥のスパーリングパートナーの中でも最上級レベルとおもわれる、KJカタラハやドネアに似たアルバート・パガラの言葉を思い出す
「井上は凄いけど、カシメロとやったらわからない。どちらも驚異的なパワーがある。」
みたいな言葉だったかな。
ドネアの時も50-50と言っていたから、母国を尊重する気持ちはわかる。
果たしてダスマリナスはカシメロ戦への布石、通過点となるのだろうか。いずれにせよ、人生を賭けたチャンスに井上尚弥という最難関を乗り越えんとするダスマリナスの気概は大いに買う。
Hot and Spicyはダスマリナスのニックネームです。