コンセントレーション/井上尚弥の解体新書

「汝自身のために英雄を創るべからず」とはアレクサンダー・ベスプーチンの言葉・・・ではなく聖書の言葉だそうですが、個人的に共感している部分があるのですが、この男の事をあれこれ想像し、書こうにも、もう本人がもっと深く深く自覚している、冷静に自己分析できており、そこに感服するのです。

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辰吉以上の天才かもと知人に聞かされて観たデビュー戦、確かに超優等生ボクシングだったが、よくいるタイプとしかおもっていなかった。それがここまで進化、成長するとは・・・

本人の言葉に疑問や現状の答えがほとんど出ているので、抜粋しながら紹介します。

パンチ力について

何だろ…。しっかり下半身から打つイメージはしてます。
でも、アマチュアの時はできなくて、プロでも最初はその名残で下半身が浮いたままちょこちょこ打っているような感じで。田口さんとの試合(4戦目の日本王座戦)が終わってから、これじゃダメだと思って、ちょっとずつ重心を下げて打つ練習をし始めて・・・

(初期の頃とは)全然違いますね。(初期のボクシングは)最初からハイテンポでポイントは取れるけど倒せないボクシングです。(今は)下半身をグッと下げて、フットワークは残したまま、打つ時は腰を低くしてしっかり軸をひねるイメージです。

たしかにライトフライ級時よりも今の方が一打必倒である。パンチの質が違う。
日本人の佐野や田口と戦った頃の井上は自分にとってはよくいる海外エリートと変わらなかった。
井上拓真は今このあたりにいるのかもしれない。

亀田昭雄氏はパヤノを倒したワンツーを「時間差カウンター」と絶賛した。

たしかにワンテンポずらして右を入れているので、カウンターっちゃ、カウンターですね。理想としている『打たせずに打つ』が、’18年の2試合は完璧にできたと思います。ポイントは距離。距離のやり取りですね。たとえばパヤノのパンチはバックステップでよけているつもりが、腹をかすめてきた。意外に伸びてるな、と。あとは呼吸。どんな選手もフルラウンド、完全には集中できない。ちょっと息を吐いたりとか、一瞬のスキができる。しっかり相手を分析したうえで集中し、チャンスを見逃さないことですね。

あの短い時間でパヤノのパンチの伸びを警戒したりもしていたのだ。一撃圧勝だったけれども、開始数十秒でスピードを見切って余裕でガンガン攻めていけたマクドネルよりパヤノは強かったんだろう。ゾラニ・テテのパンチはもっともっと伸びてくる。わかってるから問題ないけど。

長谷川も似たような事をいっていたが、これは感覚、嗅覚の世界で下手に真似できるものではなさそうだ。パッキャオにも絶対備わっていそうな殺傷本能。だから大胆に攻めることができる。

井上拓真について

拓真はオールマイティー。何でもできるタイプのボクサーです。成績だけ見ればKO率が低いので、『迫力に欠けるんじゃないか』などと言われますけど、間違いなくパンチ力はある。あとはコツさえつかめば倒せる。KOのコツをどうつかむか? それは経験と……ちょっとの閃(ひらめ)きですね。場数を踏めばいいっていうもんじゃなくて、本当に閃きなんですよ。技術は相当なものがあります。小さいころからずっとスパーをしてきたから、よくわかる。

拓真は相手の打ち終わりがよく見えている。打ち終わりを見極められると、カウンターをケアするあまり、手が出なくなる。『打ったら打たれる』と手詰まりになるんです。それに、パンチが見えていれば打たれても倒されずにガマンできる。

なるほど、この後に「自分が攻撃態勢じゃないといけない」という言葉がありますが、ペッチ戦しかり、拓真君は攻撃態勢じゃないからパワーレスにみえてしまうのかもしれない。(下がって守ってなんとなく打つという感じで能動的でない。)

集中力について

それは意識してますよ。相手の集中力が途切れた瞬間、目とか、呼吸とか、一瞬の間ですね。人は3分間も絶対に集中できませんから。自分も無理です。

その瞬間を待っているということですか?

待っているというか、見てますね。息を吐く瞬間というか、たぶん相手が反応できないだろうなというタイミングがあるんです。いま(打ちに)いってもカウンターは来ないだろなという間。自分の中でですけど、それはなんか雰囲気で。それが合っているか間違っているかはいってみないと分からないんですけど。

パヤノを倒した瞬間も?

あの瞬間はそうでしたね。まず、左手でフェイントをかけていたんで、ここで相手の肩の動きとか、(相手の動き)全体をぼんやりですけど見ているんですね。それで、KOになる前にアッパーをカウンターで打ったらパヤノの勢いが落ちた感もありましたから、あそこは瞬間的にいける!という雰囲気でした。

キャリア…いや、勘ですね。キャリアを積んでもできない人はできないですから。もう戦う本能というか。

その戦う本能は昔から備わっていたのですか?

ここ最近ですよ。相手がふっと(集中力が)切れた瞬間にジャブを当てるのは得意でしたけど、それが試合でさらにガガッといけるようになったのはここ最近ですね。なんでしょう、集中力でしょうね。自分が集中してないといけないですし、自分が攻撃態勢じゃないといけないですし。

相手の反応できない瞬間を瞬時に見分けるというのはまさに達人です。

勘ですけどね。まだそれが100%どの選手にもできるわけじゃないですし。
それがパヤノ戦はたまたまはまったというだけで。

この勘がさらに研ぎ澄まされれば無双だろう。
ディフェンスの達人はたくさんいるが、ディフェンスしている限りは無害なのだ、さらに攻めていける瞬間でもあるのだ。

そういったところに井上尚弥というボクサーの成長点がある……。

それはあるかもしれません。そもそもバンタム級で自分よりパンチ力ある選手はいっぱいいますし、スピードのある選手もいます。いくらパンチやスピードがあっても、結局はそれをどう生かすかじゃないですか。ミット打ちとがうまいとか、腕っぷしの強い人はいっぱいいますよ。それを動いている相手に当てる、タイミングを合わせて当てるのが難しいわけです。

マジかぁ、数値的には井上よりパワフルなパンチャーはいるのだろう。
亀〇も腕相撲は強いと言われている。
スーパーバンタムあたりでは全ての数値で井上を凌駕している選手もいるはずなのだ。

WBSSについて

自信なんてありません。

自分はまだ『試されていない』と思っています。
うまくいきすぎている。今度、『WBSS』の準決勝で初めて同年代の選手(IBF王者のロドリゲス)と戦うんですが、これが本当の勝負かなと思っています。

勝つために心がけていることはあります。
それは、試合当日、不安なくリングに上がれるための練習をすること。『これだけやったんだから負けるはずがない』と思えるほどの練習です。

こういう自覚が出来ていれば安心だな。
ロドリゲスは今頃キューバで打倒井上の猛特訓の最中だろう。
『これだけやったんだから負けるはずがない』と思えるほどの練習をしているだろう。
彼だって同じ境地に達した人間なのかもしれない。

今後について

来年(2019年)は環境を変えていきたいと思っています。海外で長めの合宿を張ってみたい。ボクシング以外の私生活でも刺激を受けて、自分を変えていきたい。

https://boxvideo.sports-web.net/the-boxing-round-up/10037

ボクシング以外の私生活でも刺激を受けて、自分を変えていきたい。

へんなタニマチがつかんで欲しい。
こういう発言からしてさらに成長するには今の環境に甘えてはいけないという自覚があるのだろう。

WBSSでの未知なる強豪の世界
スーパーバンタムなどの新たな階級
そういう自分を試す緊張感のある舞台、環境が井上を刺激させ、進化、成長を促す。モチベーションの持続こそ一番大事で、練習から含めて環境を整えることが大事になってくる。

年末にスポーツ賞みたいな式典の際に野球の大谷にオーラを感じたとか言っていたが、私はボクシングファンなので井上の方が稀有で大きな存在である。大谷は身体が大きいからではないか?当たり前か・・・凄い世界で活躍している、大金を稼いでいる・・・のではなくその世界で頂点たれ、である。

気になった言葉を複数記事から拾い集めてみました。
常人には理解できない感性、集中力の話などもありました。

絶対的な自信と裏腹に「自信なんてない」「まだ試されていない」と自覚しているのは凄いことだとおもいます。もう既にP4P5傑くらいに評価されている井上ですが、2019年はさらに評価を上げるのかもしれません。今までただ口をあけてアングリ眺めていた面々に井上が名を連ねるとしたら・・・
DAZNや海外メディアのキラーコンテンツ、1試合100万ドル超えるのが当たり前の選手になるでしょう。そしたら対戦候補もわんさかです。

今も断言できますが、まさに日本史上最高峰、いやアジア、世界の頂点に君臨する日も近いのかもしれません。ロマゴンがP4Pナンバーワンという評価を勝ち得た以上の存在に・・・

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