井上の能力は恐るべきものです。生体力学的に完璧です。私はリングのエプロンでロドリゲス戦を観ていました。(解説)SNSの映像では私はとてもはしゃいでいたようです。ロドリゲスに対する井上の勝利は私が今まで見た中で最高のライブパフォーマンスでした。(カール・フランプトン)
ファイターの資質は長所の組み合わせによって形成されるが、井上尚弥の輝きは、恐ろしいほどのパンチングパワーを超えるほどのものだ。プロのリングで井上尚弥ほどエキサイティングでショッキングなパフォーマンスを魅せる者はいない。
ワシル・ロマチェンコは、トップレベルのファイターがフラストレーションをためて試合を棄権するほどのテクニックを持ち、テレンス・クロフォードはスキル、スピード、即興芸術のブレンドでファンを魅了する。ボクシング界最大のスター、カネロはスーパーファイトでファンの夢や想像力を満たす。
全てが偉大だが、誰も井上のような(爆発的なノックアウトという)パフォーマンスを披露しているものはいない。
ルディ・エルナンデス
「最近私はずっと井上尚弥こそパウンドフォーパウンド、ナンバーワンだと言ってきました。ロマチェンコやクロフォード以上に評価しています。なぜなら、井上はベストなチャレンジをしているだけでなく相手をみんな圧倒的にノックアウトし、最も印象的な結果で自分を証明し続けているからです。10年周期でスペシャルなファイターが現れます。井上は相手を簡単にノックアウトします。マイク・タイソンやシュガー・レイ・レナードの全盛期を思い出します。
しかし、彼は小さな日本人です。彼がアメリカ人だった場合、どれだけ注目と人気を集めるでしょうか。井上尚弥こそ、今最も注目すべきボクシング界のスターです。タイミング、パンチ力、ボクシングIQは他の誰よりも優れています。」
2018年にバンタム級に階級を上げた井上はジェイミー・マクドネルとファン・カルロス・パヤノをわずか初回でノックアウトした。WBSSの準決勝では無敗のIBF王者、エマニュエル・ロドリゲスと対戦、多くのファン、識者が、才能ある無敗のプエルトリコ人こそ井上に試練を与えるだろうと予想した。
He didn’t have a prayer.
ロドリゲスにはわずかなチャンスすらなかった。ロドリゲスはプロで一度もダウンしたことがなかったが、3度倒され2回で粉砕された。井上はリングマガジン王者となり、P4Pのトップファイブに議論される存在に浮上した。
バンタム級の3試合で井上はカリスマになった。
井上の次の対戦相手はWBAスーパー王者ノニト・ドネアだ。「フィリピーノフラッシュ」は大いなるアンダードッグとして決勝を迎える。何が井上をスペシャルなものにしているのだろうか?それは一言では表せない。パワー、それは明白だ。長所の組み合わせといっても井上の場合は複雑だ。この天才3階級王者の魅力を、6つのカテゴリーに分けて専門家に分析してもらった。
パワー
スピード
ファンダメンタル(基礎)
エコノミー(無駄のなさ)
バランス
ボディパワー
カール・フランプトン(元2階級王者)
井上の能力は恐るべきものです。パワフルでとても正確です。ナックルの返しも素晴らしく、完璧な角度、距離でパンチを打ち抜く。生体力学的に完璧です。私はリングのエプロンでロドリゲス戦を観ていました。(解説)SNSの映像では私はとてもはしゃいでいたようです。ロドリゲスに対する井上の勝利は私が今まで見た中で最高のライブパフォーマンスでした。井上尚弥は素晴らしかったです。
スティーブン・エドワーズ(トレーナー)
井上は恐らく今のボクシング界で最高のハードパンチャーです。右ストレートを頭に、左フックをボディと頭に、これが彼の得意パンチかとおもいますが様々なショットでノックアウトしています。左右どちらも破壊的です。私の人生でみた軽量級最大のパンチャーの一人です。マニー・パッキャオ、アレクシス・アルゲリョ、ルーベン・オリバレス、このようなレジェンドと同列に語っています。
ジョー・ギャラガー(トレーナー)
井上はリングの中と外では別人のようです。リングではバズーカをグローブに入れているようなものです。ロドリゲス戦は素晴らしい勝利でした。私はロドリゲスと戦うポール・バトラーをトレーニングしていました。
ロドリゲスは実に堅実なオペレーターでした。ロドリゲスがたぶん初回をとったとおもいますが、2回に井上が左フックを爆発させてゲームオーバーでした。2度目のダウンは強烈なボディでした。ロドリゲスの首を左右に振る苦悶の表情が全てを物語っています。井上のような小さな青年にあんなパワーがあるなんて信じられません。スティーブ・キム(ESPNコラムニスト)
最近の結果に基づいて、選手を1から10で評価すると、井上尚弥は10プラスです。マクドネル、パヤノという耐久力のある相手を前例のない速度で切り落としました。彼らは2ラウンドさえみませんでした。パヤノに対しては右のワンパンチショットガンでした。ロドリゲス戦は強打のコンビネーションでした。彼のパンチは多芸多才です。単純にパワフルなだけでなく世界クラスの相手に確実に実行するんです。彼のように結果を出しているファイターは他にいません。
スピード
エドワーズ
スピードが井上が素晴らしいパンチャーである理由です。スピード=パワーです。パンチに備える時間を与えないからです。パンチが来るとわかれば衝撃を吸収できますが、井上の衝撃は速すぎて吸収できません。当たっただけで吹っ飛んでしまうようなパンチです。
ギャラガー
レナードを思い出すと彼はスピードで大きなグリーンやラロンデをノックアウトしていました。井上はスピードとパワーを兼ね備えています。ワンパンチも強力ですがそれをコンビネーションにもできる。
キム
パワーパンチャーの多くはさほどスピードがありません。スピードがあるファイターはさほどパワフルではありません。しかし井上は両方を致命的に備えています。パンチが強いだけでなく目まぐるしいスピードでボコボコにします。井上のスピードが10でない場合でも9は出ています。今の印象が本物ならば彼はほとんど無敵でしょう。
ファンダメンタル(基礎)
フランプトン
井上はカネロのように基礎がしっかりしています。井上が深刻なプレッシャーにさらされた時の動きをみてみたい。どのように動いて対処するのか、カネロはそれをみせてくれました。しかしこれまでみてきたところ、井上はほぼ完璧なファイターのようにみえます。
ゾラニ・テテ
井上はあらゆることを完璧にこなし、背の高いファイターに対する対処法を知っています。彼のテクニックとタイミングは完璧でそれが彼がP4Pである理由です。私との試合はいい試合になるでしょう。頭脳戦、チェスマッチです。ミスをした方が負けます。
ベン・デイヴィソン(トレーナー)
ロマチェンコやクロフォードのような選手の方がスキルやファンダメンタルでは上をいくかもしれないが、井上には酔狂なパワーがあり、それが大きな魅力です。デオンティ・ワイルダーのように一撃で試合をひっくり返す魅力があるのです。
井上にワイルダーのような欠陥や不器用さがあると言ってるわけではありません。井上にまだ未熟な部分があるとしてもパワーがそれを十分補っています。しかし井上には我々がまだ知らない多くのスキルがあるのでしょう。それを披露することさえなく勝っている。エドワーズ
井上のパンチの打ち方、組み合わせは、若い子供たちの手本にしたいです。彼は何度も仕切り直したり、引いたりしません。下半身に体重がのり、腰の回転、肩を入れて真っすぐパンチを打つ、完璧な打ち方です。ジョー・ルイス、アレクシス・アルゲリョ、リカルド・ロペス、そして井上尚弥だけがそのようなパンチの打ち方をマスターしています。
ダグ・フィッシャー(リングマガジン編集長)
スピードとパワーを兼ね備えた井上をダイナミックパンチャーにするのは彼のテクニックです。彼には強固な基礎があります。強い下半身を軸に、自分の力を解き放って相手を捕らえるのが本当に上手い。基礎がそのすべてです。
私はいくつかの理由で井上尚弥の大ファンではありません。
アンドレ・ウォードを思い出してしまうのです。ウォードは正しい男すぎました。(面白くない)足の位置、バランスが正確すぎました。井上の方がウォードよりも動きがあります。より速く、ハンドスピードも豊で、ナチュラルパワーがあります。キム
井上は基本的にはクラシックです。クロフォードはジャズミュージシャンです。アドリブで自然に順応します。脚本を演じません。ロマチェンコのボクシングを私は「バリシュニコフ」と呼んでいます。バレエのようなものです。しかしクロフォードのジャズやロマチェンコのバレエは教えてできることではないかもしれません。それに対し、井上のスタイルは古典的で教科書的です。若い子の教科書になるのは井上尚弥であり、彼が理想像です。
エコノミー(無駄のなさ)
テテ
ファイターはただパンチを打つのではなく、ターゲットに的中させる必要があります。だから私は無駄打ちしないのです。無駄に疲れたくないので、必要がない時は打ちません。どんなパンチにも意図があり、強い意志をこめているのです。井上も同じことをしています。
ビリー・グラハム(トレーナー)
ノックアウトを狙って戦うファイターが大好きですが、井上はガムシャラではなくとても効率的にそれをやっています。足を使い、フェイントをかけ、タイミングを図りセットアップしている。それができるファイターが最高のパンチャーです。井上はバランスが素晴らしく、あの強烈なパワーはすべて地面(下半身)からきているのです。
ルディー・エルナンデス
井上は無駄なパンチを打たない。タイミングを完璧に把握し当てる、彼はそれが非常に卓越している。それがボクシングの理想であり、井上を最高のファイターにしている理由です。相手にはそうみえない、脅威にみえないかもしれないけれど、井上はとても緻密に調整されたマシンなのです。
バランス
ベン・デイヴィソン(トレーナー)
リングで相手に向き合った時の井上尚弥のバランスのよさ、それが彼のテコの原理です。(少ないエネルギーで大きな力を生み出す)井上は時々手を前に伸ばして前に出ます。頭の位置を変えることも上手く、あらゆる体勢から幅広いパンチの選択肢を持っており順応性がとても高いです。
エドワーズ
井上はバランスが全てです。バランスがいいからあらゆるパンチのバリエーションが打てるのです。あそこまでバランスがよくなければ、ワンツー程度の強打に頼るボクシングになるでしょう。デオンティー・ワイルダーは右ストレートだけです。ワンショットですべてを手に入れます。井上はコンビネーションのすべてが致命的なパンチなので、だから彼がボクシング界最高のパンチャーだとおもうのです。ワイルダーが最もヘビーパンチャーかもしれませんが、最高のパンチャーは井上です。
フィッシャー
バランスの良さが井上尚弥を最高のボクサーパンチャーにたらしめています。相手を仕留めにかかっても、井上はいつでも射程外に出ることができます。相手が井上にプレッシャーをかけて追い込もうとしても下がるだけでなく自在にムーブ、ジャブ、カウンターを打ち返すことができます。非常に熟練しており、運動神経、反射神経、手と目のバランスの調和がすばらしく整っています。
ボディ
テテ
非常に優れたボディパンチャーです。彼のボディはノックアウトに直結する。ロドリゲス戦のボディはすごかった。井上のボディを食うと相手はもう戦闘不能です。痛いのです。あれはもう必殺技です。ノックアウトを狙う時はボディで弱らせて頭でとどめを刺す、ボディを殺すのが一番です。
グラハム
井上のボディ攻撃は素晴らしいね。多くの人は背が高く長く正確なパンチを打つ方が強いと考えている。小さな男はよく動いて相手の懐に入らなければならない。そのためにはテクニック、精密さで相手を上回らなければならない。最高のボディパンチャーは適切なタイミングでポジショニングできる男であり、それが井上尚弥がやっていることです。彼は完璧な精密パンチャーです。
ルディー・エルナンデス
井上は知性が高い。アゴを打つとガードが下がり、体が開くことをよくわかっており、コンビネーションを狙い打ちします。頭だけ、ボディだけではありません。上下に打ち分けます。最初にダウンを奪ったロドリゲス戦の左フックのタイミングは素晴らしかった。とても距離の短い左フックでしたが、パンチの打ち方、角度が実に効率的でした。そして次にレバーブローです。(普通は顔面連打だろう)それがトドメであることをわかっているのです。
井上を打ち負かすことはできません。
フィッシャー
井上がはじめてアメリカに来てアントニオ・ニエベスと戦った時に記事を書きました。その夜井上はファンをびっくりさせなかった。ガードを固めて攻めてこないニエベスをストップするのにとても忍耐強く戦ったから。彼はボディで徐々にニエベスを解体した。私は井上のボディ攻撃のファンになりました。
感銘を受けたのは、彼が貝のように守備的な相手を前にしてもボディで解体していく、倒す意思があることです。ロドリゲスもマクドネルもナルバエスもフットワークの達人です。そんな相手でさえ、解体してしまう。ニエベス戦の記事で私は井上のことを「ボクシング界最高峰のボディーパンチャー」と書きました。
いよいよ迫ったWBSSの決勝
ミス、事故さえなければ井上の圧勝を予想している。
ロドリゲス戦の心境とは違う。
八重樫が、ドネアの強運だけが怖いと言っていたがそれに同意する。
世界のボクシングファンはカネロが好きでロマチェンコやクロフォードこそボクシングの芸術だと言う。そう言わなければボクシング通じゃない。
しかしみんなマイク・タイソンが大好きだった。
わかりやすいノックアウトに酔いしれた。
だから、関係者、識者であっても、本当は井上尚弥のようなクラシカルにして鮮烈なノックアウトマシーンが大好きなんだ。