神様からのプレゼント/伊藤雅雪VSジャメル・ヘリング

直近のWBOランキングには入っていないものの、特別な力が働いてこの試合が予定通り開催される模様です。伊藤が与えたプレゼントは、ヘリングにとって、米国民にとってかなり大きな意味を持つ。スポーツに感動的なシナリオがあるならば、そのプレゼントはヘリングの、米国民のためのものだ。

WBOスーパーフェザー級王者の伊藤雅雪は5月25日にフロリダで2度目の防衛戦を迎える。その日は対戦相手の元米海兵隊ジャメル・ヘリングにとって大きな意味を持つ。

日本からやって来る伊藤は昨年夏にアップセットでクリストファー・ディアスを破り王者になった。

PBCからトップランクに移籍した33歳のヘリングについて注目してみよう。

ヘリング
「とてもエキサイトしている。伊藤は素晴らしい王者で、アマチュア経験もないのにここまで来たことに感銘を受けた。しかし同時に伊藤のアマチュア経験の欠如が俺に有利に働くかもしれない。ここで詳しく作戦はいいたくないけど伊藤に多くのトラブルを与えることになるだろう。俺は伊藤が過去2試合で戦ってきたような小さな男ではないよ。クリストファー・ディアスとの戦いは素晴らしかったけど俺はあんな風にはならない。事実、俺の方がディアスはもちろん伊藤よりも大きい。ボクシングもファイトもできる。どっちの準備も大丈夫さ。

5月25日を本当に楽しみにしている。その日はSIDS(乳幼児突然死症候群)でこの世を去った娘の誕生日なんだ。記念すべき日だ。そんな大事な日に試合ができるなんて、伊藤や関係者に本当に感謝するよ。」

大柄なヘリングは元々ライト級の選手だったが、スーパーフェザー級に落としてきた。ヘリングは病死した娘の事を想う。

ヘリング
「ずっと悲しみにくれていたけど、時が経つにつれて娘の記憶を胸に刻み、彼女に誇りを持つことをモチベーションに変えてきた。うまくいけば彼女に最高の誕生日プレゼントを贈ることができるし俺のシンデレラの物語に添える勝利となるだろう。」

ヘリングは過去にデニス・シャフィコフとラダリアス・ミラーに敗れ、変化を必要としていた。その時にトップランクに移籍し。階級を見直し、新たなる再起を図った。

ヘリング
「伊藤対策のためにチームとトレーニングキャンプに余念がない。俺たちはこの試合を本気で勝ちに行く。俺の周囲のどんなスタッフの声にも耳を傾けている。」

この試合は過酷な過去を持つヘリングにとって特別なものだ。
彼は計り知れない誇りと尊厳を胸に抱いてこの試合に臨む。

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https://www.youtube.com/watch?v=dL6P1xjJP0Y

最後の一文はシンプルにしてしまいましたが、本当は、ヘリングに共感しない人はいないだろう。メディアもファンもヘリングのサイドストーリーに共感し応援する、みたいなニュアンスでした。

会場の詳細までは書いていなかったが、南カリフォルニア州のペンドルトン海軍基地であるとすれば伊藤にとってのアウェー感は半端ないものになる。

さわやかイケメンの伊藤でも今回は心を鬼にして、悪魔(ヒール)の役を買ってでなければならない。

クリストファー・ディアス戦は伊藤の見事なアップセットであったが、体格差、当日体重差というのも大きな要因であったとおもう。パワーファイトが信条のディアスから逃げずにパワーファイトでやり返した事で、かつてそんな経験などしたことがないであろうディアスは面喰い、よもや敗れ、実際に階級を下げることを余儀なくされた。

しかし今回のヘリングは伊藤と互角かそれより大きな体格を誇るサウスポーだ。米国を代表してロンドン五輪にも出場したエリート。五輪ではリオで金をとるダニヤル・イエレウシノフに敗れた。その他も古くはダニエル・ジェイコブスやフランキー・ゴメス、ラシディ・エリスらとの対戦歴もあり、本来もっと上の階級のスケール感のある選手なのだろう。デニス・シャフィコフとラダリアス・ミラーに敗れ、彼もクリストファー・ディアスと同じく階級を下げることにしたのだ。

敵地でトップランクの無敗プロスペクトに勝って王者になった伊藤に対する本場の評価、注目度は低くない。さわやかな風貌とエキサイティングなスタイル、何より最近の流れと違い、アマチュアのキャリアがない世界王者というのがアピールポイントだ。

アンビリーバブルなのだ。

結果を出し続ければ、海外でかなりの契約を結ぶ可能性が高い日本人ファイターといえる。

しかし現実的には、WBOの上位にGBPのライアン・ガルシアやラモン・ローチが控え、テビン・ファーマーやゲルボンタ・デービスも統一を志向し、ワシル・ロマチェンコも帰ってくると言われるスーパーフェザー級において、伊藤の在位は長くない。狙うべき穴王座のひとつにすぎないのかもしれない。

以前何度も書いたが、伊藤の良さは伸びしろだ。
アマキャリアがない分、今でもグングン伸びている。

クリストファー・ディアス戦の伊藤はかつての伊藤ではなかったし、エフゲニー・チュプラコフ程度の世界ランカーでさえ、かつての伊藤であれば危険といえたかもしれない。

王者になった自信と本場意識の高さが伊藤を進化させている。日本では井上尚弥に続くシンデレラボーイだ。こうした状況と意識が今伊藤をさらに進化させ強くさせていると強く感じる。

それでも、ヘリングが言うように

アマチュア経験もないのにここまで来たことに感銘を受けた。しかし同時に伊藤のアマチュア経験の欠如が俺に有利に働くかもしれない。

技術でヘリングに対抗しようとするにはまだ早い。
伊藤は賢いから、何が勝利への突破口であるかを見抜いているだろう。

先日ゲスト解説を務めたスペンスVSマイキーのスペンスのようなファイト。相手を圧倒的に凌駕するフィジカルや強襲、ガッツ石松がロベルト・デュランに対して言っていた言葉

彼はスーパーチャンピオンであり、ありとあらゆる面で優れていた。デュランの強さの源っていうのは途方もないスタミナなんだ。並外れたフィジカルパワーがあって、パンチのボリュームと回転速度で相手を圧倒してしまう。いつも相手の2倍、3倍のパンチを打っていただろう。デュランの総合力っていうのは人間離れした猛烈なスタミナだね。

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これが鍵だとおもう。
超アウェーで結果を出すにはやや消極的で手堅いファイトをするヘリングに対し、アクション、運動量で大幅に上回ること。ボコボコに破壊、誰がみても圧倒するかノックアウトしなければならない。

そこを突き詰めていかないと、猛者ばかりのスーパーフェザー級王者でい続けることはできない。
デービスやロマチェンコには太刀打ちできない。

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