リングの静寂を知る男/葛文峰

ボクシングにおいて聴覚障害というのはどれだけの不利を招くのだろう。相手の息遣い、レフリーやセコンドの声、観客の熱狂を聞き取れないというのは大きなハンデだろうが、別の感覚が研ぎ澄まされるような事もあるのだろうか。

少なくとも、中国の31歳、葛文峰という男はボクシングそのものが天才的ともパワフルとも感じないが、人間力のようなものは強く感じてしまう。

葛文峰は人生の逆境を乗り越えて戦ってきました。
聴覚障害、言語障害を抱えるこの中国のフライ級は、左耳が完全に聞こえず、右耳がかすかに聞こえるだけです。そのため、上手くしゃべることもできません。

アマチュアでナショナルタイトルを獲得しても、聴覚障害を理由に引退勧告を受けました。

葛は上海でフォークリフトの運転手をしていたが、障害のせいで指示をはっきりと聞くことができず、失業しました。彼の将来は真っ暗でした。

葛文峰
「大変苦しい時期でした。私たち家族は妻の給料で支えられていました。工場の仕事をクビになってボクシングに復帰した時、ボクシングこそ我が人生だと確信しました。」

2015年初頭、葛文峰と出身地が同じトレーナーのジャンが葛が世界を獲れるファイターであると信じてチームに招き入れた。

肉体労働者であった葛は140ポンドから階級を下げ、122ポンドで2015年に6ラウンド判定勝ちでプロデビューした。次の試合もフィリピンのタフな選手相手に判定勝利だった。

彼のキャリアは続き、さらに減量し体重を下げて4試合連続でタイで試合をした。戦績は9勝無敗となった。

葛文峰
「何千もの観客の中ではチームの声はほとんど聞こえません。リングに上がれば私はいつも一人です。インターバルでしかトレーナーの声は聞こえません。」

葛は元フライ級王者のアムナット・ルエンロンとタフなフィリピン人、イバン・ソリアーノに勝ってランキングを上げてきた。この勝利は彼だけでなく、彼の家族にとっても大きなものでした。

葛文峰
「WBOオリエンタルタイトルを獲得した事で、2人の娘を養うお金を作ることができました。プロモーターは妻に仕事を紹介してくれたり上の娘をインターナショナルスクールに入れる手助けをしてくれました。」

葛は世界タイトルに向けたステップを望み、次戦はフィリピンのビッグパンチャー、ジエメル・マグラモ(22勝18KO1敗)と1月5日に蘇州のオリンピックセンターで対戦します。

24歳のマグラモは2016年にムハマド・ワシームに敗れてから5連続KO勝利中です。

葛文峰
「マグラモは素晴らしいボクサーです。若くてスマートです。彼は強いけど判定ではなくノックアウトで勝つつもりです。私より高いマグラモの世界ランクをいただくつもりです。」

葛のプロモーターは既に何度か世界戦の交渉をしてきたがうまくいかなかった。

葛のプロモーター
「アムナットに勝ってすぐに木村翔陣営と交渉しましたが、木村にはゾウ・シミンとのオプションがあり、合意に至りませんでした。その後、田中恒成が木村に勝ったので、田中陣営と中国での対戦を提案しましたが拒否されました。なので、葛のランキングをもっと上げてから指名挑戦者として2019年度に世界挑戦のチャンスを掴みたいとおもっています。」

https://www.youtube.com/watch?v=NyL1D4VTyak

アムナットは王者陥落後の微妙なコンディションであるが、ここ数戦の葛のキャリアは世界を目指すものとして王道だろう。日本人より険しく真っ当な道を選んでいる。

経済発展した中国には、スター選手が待望されているのか、お金が余っているのか・・・
たかがWBOオリエンタルタイトルで、娘二人の養育費、インターナショナルスクールへの斡旋など、ゴージャスすぎる気がする。この国で世界王者になれば大金持ちのスターになれるのかもしれない。

そういえば、2018年はカルロス・カニサレスが中国のトップアマ、ルー・ビンを倒す痛快な試合もあったな。

31歳の葛文峰にとっては今年こそが勝負の年となりそうだ。なかなか同情したくなる、過酷なストーリーがありそうな人生だが、

その時の世界王者が日本人であったなら、ゾウ・シミンの敵討ち・・・
堂々と返り討ちにして欲しい。
それが礼儀というものだ。

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