世界に羽ばたけもうひとりのモンスター/田中恒成

田中VS田口、採点以上の激闘でした。
そしてそれは試合前から予想されたものでした。
すごくいい試合だった。どちらも最高だった・・・

のだろうが、こういう日本人対決はもうこれ限りでいいのではないか・・・

1990年代の暗黒時代を経て、日本のボクシング界は活気を取り戻した。日本時間夕方、アメリカでは早朝に行われた田中恒成VS田口良一の試合は、とりわけ接戦といえるものではなかったが、とても激しく、残忍なものだった。

田中の地元で行われたWBOフライ級タイトルマッチは117-111×2、119-109で23歳の田中が初防衛に成功した。

スコアが競っていなくとも、それが競った内容であることは田中の顔面の腫れが物語っている。3ラウンドには田口の右で田中はバランスを崩しダウンしかけた。しかしそれが田中を奮起させ、4.5ラウンドとアッパーやレフトボディで田口を効かせ後退させた。

7ラウンドになると元ライトフライ級統一王者の田口の体力は限界に近い状態におもわれたが、32歳の田口は13年のプロキャリアと執念をみせ、仕留めにかかる田中のハードパンチに耐え続けた。

最終12ラウンドのゴングが鳴ると、田口は田中にもたれかかるように抱擁し互いに尊敬の念を示した。田中は田口がリングを降りるのを止め、再び抱擁した。

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予想された試合内容、結果であった。
元来スロースタートの田口が初回から飛ばし、ペースを掴みかけるも、田口の得意とするボディを序盤から田中に効かされ、ベテランの田口にとっては苦しい、根性だけで立っている12ラウンドとなった。

田中の勢い、強さに田口が初回から行かざるをえなかった
田中だからこそいつもと違う戦術を行使した田口

という論調が多かった。

たしかにそうだろう、決定力がない上にスキルとスピードで上回る田中に先手を取られては活路がなかった。しかし耐久力、スタミナに定評のある田口が序盤で腹を効かされてしまったのは誤算だった。もう少しジャブで距離を作るか、ボディの対処をなんとかしたかった。接近しすぎると田中のパンチの方が威力、精度も上だった。

個人的な心情採点では中差で田中と出たが、余力、試合を支配しているのは明らかに田中だった。足を使って技術勝ちに徹すればもっと楽に勝てただろう。しかしKOで決着をつけたい、田口の想いに応えたいという気持ちが打ち合いを選択した。

が、中盤以降、足を使って翻弄し、メリハリをつけたボクシングをした方がKOチャンスは増えただろう。足を止めて打ち合えばKOチャンスが増えるわけではない。気持ちで倒れない田口のようなモードに入った相手に対してはタイミングでズドンだ。

長く守った王座を明け渡した32歳のベテランのいきなりの再起が一階級上の若き無敗の3階級王者、パワー型でない田口には厳しい展開が予想されたが、大差でも田口らしさが発揮、凝縮された試合だった。この男は気絶するまで倒れない。

田口のバトンを引き継いだ田中、木村、田口の分まで強く、飛躍せねばならない。たしかに圧勝だ。しかし顔面だけみれば敗者といわれてもおかしくないほどボコボコだ。

強気に打ち合って競り勝つのではなく、打って打たせないボクシングに変えないとこの先厳しい。そういうエリートボクシングが田中には出来るはずだ。

統一戦など、この階級でやり残したことはまだまだあるが、今年限りでさらなる階級アップを示唆している。最近の激闘続き、しかし結果として判定ばかりなファイトスタイルではシーサケットを筆頭にスーパーフライのフィジカルに壊されてしまう。

ロマチェンコを真似る必要はない。
マイキーやピログや井上尚弥のような王道のボクシングに倣えばいい。

フライ級の日本の至宝、名古屋でも岐阜でも日本でもなく、世界に羽ばたけ。

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