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わらの犬・その彼の名を誰も知らない/ディージェイ・クリエルVSカルロス・リコナ

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かつて日本のボクシングは暗黒時代で世界と大きな隔たりがあった。華奢だけどセンスある若者のために、”軽いハエ”よりさらに軽い”わら”の階級を作って裸の王様に祭り上げた。今をときめく大橋ジムの会長も”軽いハエ”の壁に泣き”わら”の階級で不名誉な記録を遂に打ち破った。

けれどそんな”わら”の階級から、レジェンドのリカルド・ロペスが生まれ、P4Pのトップに上り詰めたロマン・ゴンザレスは誕生した。

ディージェイ・クリエルが最後に負けた試合はすぐに最初の勝利へと変わった。

それはちょうど5年前、クリエルにとってプロデビュー戦、2014年4月に彼の地元、南アフリカのヨハネスブルグでの事だった。クリエルは新興団体からプロボクサーになったが、順調なデビューを果たす事ができなかった。コリン・トラバトラという相手に2ラウンド右でダウンを食い負けた。

クリエル
「神経質になりすぎていました。」

現在14勝6KO1敗1分のクリエルは振り返る。それは15歳の頃アマチュアで0勝3敗だったクリエルにとって4度目の敗北だった。彼の少ないボクシングキャリアはその時点で0勝4敗だ。アマチュアでは何も成しえていない。

これは、後に世界挑戦をするファイターにとってありふれた話ではない。ディージェイ・クリエルという一人のボクサーの話だ。彼は2月16日、レオ・サンタ・クルスVSラファエル・リベラのアンダーでIBFミニマム級王者のカルロス・リコナに挑戦する。

この試合を目当てにしている人はほとんどいないだろう。しかしクリエルにとっては、叔父とトレーニングを続けてきた少年の頃からずっと夢にまでみた舞台だ。

クリエル
「ボクシングに全身全霊で取り組んできました。ボクシングは私の初恋相手です。」

デビュー戦から3カ月も経たぬうちにコリン・トラバトラとリベンジマッチが実現し成功した。それ以来、1試合の引き分けをはさんで連勝中だ。

クリエルの夢を追いかけるのは簡単なことではない。
勝てなかったクリエルは16歳でアマチュアを諦めるが、18歳になるまでプロになれなかった。クリエルはひたすらコリン・ネイサンの下、ジムでトレーニングに励んだ。そこでは、ヒッキー・ブトラーやシンペウェ・コンコ、モルティ・ムザラネのような南アフリカを代表するファイターとも拳を合わせた。

ここ半年間、クリエルはチャンスの少ない南アフリカを離れ、ラスベガスで暮らしている。

クリエル
「南アフリカにもミニマム級はあるけれど、極端に少なくて試合が困難なのです。お金になりません。プロモーターも僕もその状況に耐えきれず、キャリアも進まないので今の選択をしたのです。」

現在23歳になったクリエルは言う。

クリエル
「リスクをとったのです。現状に甘んじていては何も起きないから。」

クリエルは妻を南アフリカに残して、ラスベガスのケニー・アダムスのジムに飛んだ。
自己犠牲について話す時、クリエルは鳥肌がたつ思いがした。

クリエル
「みんなには理解できないだろう、狂っている、孤独、ただそれだけです。でも、僕には欲しいものがある。ずっと欲しているものです。世界王座、このチャンスのためには何かを諦めても構わないとおもっています。ボクシングは僕の人生、家族、全てです。家族は理解してくれました。孤独は一時的なものでも、栄光は永遠に続くものです。」

対戦相手である、新王者のカルロス・リコナ(14勝2KO)も自己犠牲の申し子だ。カリフォルニア州、ウェストミンスターに住むリコナは、川沿いにあるロベルト・ガルシアのジムに行く交通費を稼ぐために空き缶集めをしていた。プロデビュー前、リコナの父親は息子のボクシングライセンスと試合で着る衣装のために作業トラックを売った。

リコナは12月に、ロンドン五輪代表、フィリピンのマーク・アンソニー・バリガにスプリット判定で勝利し王座を手にしたが試合前にファンファーレが鳴ることはなかった。ラスベガスのステープルズセンターの客席は、先行して行われたデオンティ・ワイルダーVSタイソン・フューリーが終わると空になった。予備カードとして組まれたこの試合は中継されることすらなかった。

クリエル
「あの試合はバリガの勝ちだ。おかしなジャッジだった。」

ビデオで試合をみたクリエルは言った。

リコナとクリエルの身長差は1インチ足らずだが、クリエルは低く構えるので、試合ではその差がかなりあるようにみえるだろう。リコナは父親が大好きなファン・マヌエル・マルケスの影響を受けている。クリエルにすれば、それは「動きのないスタイル」だ。

この試合のTV中継はない。ボクシング中継は多様化し拡大傾向だが、依然としてミニマム級に対する人々の無関心や不人気は深刻だ。レオ・サンタクルスVSラファエル・リベラをメインとするPBCとFOXの興行の中でこの試合はなかったかのように埋められている。

けれど、クリエルにとってそのベルトは人生全ての価値を意味する。

クリエル
「リスクをかけて悪い時間を全て過去に追いやりました。残すはビッグショットだけです。その舞台で勝利を掴み取るだけです。」

補足するとデビュー戦で負けちゃったクリエルですが、相手がおらずフライ級だったそうです。

すごい才能、胸熱き試合を目撃したいだけなので、個人的にはミニマム級の存在を否定しない。実際すごいファイターがそこから出てきたのだ。しかし団体も王座も多すぎ、わけがわかない状況こそがボクシングをマイナースポーツに貶めている気もするから、階級的にはアマチュアくらいの数が心地いい。という相反する気持ちもある。

ミニマム級の功罪

今はストロー級と言わないのでしょうか? 僕のボクシングジャンキーの原点であり今でもナンバーワンのリカルド・ロペスを輩出した階級なんで思い入れはあるんですが、最近はスカスカで不要論もあるほどですよね。 ...

続きを見る

人生を賭けた男がそこにいるならば、その決意表明のリングをただじっと見守るだけだ。

そういえば面影だけは、ファン・マヌエル・マルケスVSフロイド・メイウェザーみたいだな。

アメリカに2人しかプロボクサーがいないミニマム級王者のリコナ。
京口紘人のベルトを受け継いだ。
ここにもロベルト・ガルシア・・・

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原始的で単純明快なスポーツです。生涯一度の敗北、無敗で引退したボクサーもいます。負けても次頑張りますというスポーツとは違う残酷さ、無常さが好きです。

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