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孤独なサクセスストーリー/ギジェルモ・リゴンドーVol.1

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たまたまキューバが続いたついでにリゴンドーの物語をお届けします。
長いので、3部構成でお送りします。

ブリン・ジョナサン・バトラーはキューバの2度のオリンピック金メダリスト、ギジェルモ・リゴンドーに会いに出かけたが、最初は彼だと気づかなかった。ハバナの屋外のラファエル・トレホジムの戸口に、黒い帽子を被りデザインTシャツを着た小さな男が立っていた。エクトール・ビネント(彼も五輪2度の金メダリストで現在はジムのトレーナー)にリゴンドーはどこかと尋ねた。

ビネント
「そこに立っているのが彼ですよ、史上最高のボクサーです。」

礼儀正しく笑顔をたたえたリゴンドーは握手を求めて近づいてきた。金歯がキラキラと輝いていた。

リゴンドー
「オリンピックの金メダルを溶かして金歯にしたんだ」

キューバのアスリートは世界で最も高価な商品だ。赤い共産主義のベールの背後には世界でみたこともないような最高のボクサーと野球選手を生み出す島国がある。輝くダイヤモンドは厳重に保護された鉱山を出ることはめったにない。

ギジェルモ・リゴンドーもそうしたダイヤモンドのひとつで、キューバという国でカットされ磨かれてきた。フィデル・カストロがアマチュアの世界で何十年も誇らしげに着用してきた王冠の宝石だ。

しかしリゴンドーの物語、親しみをこめて「リゴ」の話はもっと複雑だ。

キューバのアスリートが捕虜のまま囚われの身であることが彼らを国民的英雄にするシステムだが、彼らに自由は決して与えられない。才能を称えはしても彼らを窒息させる。彼らに選択の余地はない。キューバ国内でアスリートにとどまることを余儀なくされる。

一部の選手はそのシステムに永久に従って生きる。モハメド・アリが世界のヒーローだった時、3度のオリンピック金メダリスト、テオフィロ・ステベンソンは500万ドルのギャラで対戦交渉された。

ステベンソン
「800万人のキューバ人の愛と比較して100万ドルにどれだけの価値があるのか?」

オリンピック3度の金メダリスト、フェリックス・サボンも、マイク・タイソンとの対戦で天文学的な報酬を提示されたが辞退した。

1992年、1996年のオリンピック金メダリスト、エクトール・ビネントもキューバ革命を信じアメリカドルを拒否した。今日、ビネントはラファエル・トレホジムで子供達をトレーニングしている。

キューバの哀しき最高傑作/エクトール・ビネント

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しかしリゴンドーは新たな生活、異なる未来のチャンスのためにシステムを突破した。そしてそれ以来、リゴンドーはキューバからずっと追放されてきた。バトラーはハバナのジムで会ったリゴンドーを想い出す。彼は政治的に完全に放射能を浴びていた。彼を愛するボクサーの同僚はいなかった。

バトラー
「キューバでみた一番悲しそうな顔でした。キューバには多くの悲しみの顔がありました。」

バトラーの記録は、彼らキューバのボクサーが祖国を離れ、新たな大地に乗り出す勇気と悲劇の年代記だ。白か黒かの理想論やモラルの話ではなく、キューバのボクサーが密輸業者の船を降りた後に迎える長い航海を巡る灰色の海を描いている。

元々、アマチュアボクシングの経験があるバトラーは多数のオリンピックメダリストを生み出すキューバのボクシングジムが1日わずか6ドルで利用できることに興味を持ったに過ぎなかった。それがリゴとの出会い、誰もが史上最高のアマチュアの一人と考えているリゴを取り巻く政治的嵐の現実に関心が変わっていった。

バトラー
「なんでコーチは誰もリゴに話しかけないのだろうかと疑問だった。リゴがリングに入るだけで怯えていた。あとからわかった事だが、当時、リゴは国民的な話題の中心で、フィデル・カストロは毎日彼を裏切り者だとニュースで話していた。」

バトラーがリゴと出会う4カ月前、リゴはリオデジャネイロで行われていたパンアメリカ大会参加中に脱走を試みていた。2007年7月22日、リゴとチームメイトのエリスランディ・ララは計量前に姿を消した。しかしブラジル当局に発見され、3日後にキューバに強制送還された。

カストロ
「アメリカはドルという武器を使ってキューバを破壊する。リゴンドーとララはアメリカドルというパンチをアゴに食らってノックアウトされた。カウントする必要もないほどに。」

キューバを離れたトレーナーのロベルト・ケサダは語る。

「彼らは軍から脱走した兵士と同じです。ボクサーとしては死んだも同然なのです。」

ケサダの言う通り、カストロの命により、リゴンドーとララは代表選手枠から外された。

Vol.2に続く・・・

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原始的で単純明快なスポーツです。生涯一度の敗北、無敗で引退したボクサーもいます。負けても次頑張りますというスポーツとは違う残酷さ、無常さが好きです。

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