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不屈のブラック・ジャック/(The Surgeon=外科医)フランキー・ランドール

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ランドールといえば、フリオ・セサール・チャベスに初めて土をつけた男という名誉だけがついてまわるが、キャリアを通して振り返ると、不遇、不運の王者だった。こんな地味な男が輝いてはいけない、何かの間違いだとばかりに再戦や不運なジャッジが付きまとった。

ボクシングの政治と悪癖に翻弄されながらも粘り強く耐えたファイターの一人が、3度王者に輝いた(The Surgeon=外科医)フランキー・ランドールだ。

ランドールはタフなボクサーパンチャーだった。多くのハンデを克服しボクシング史にその名を刻んだ。アラバマ州バーミンガムで生まれ、テネシー州モリスタウンで育ったランドールは1981年にプロになり24勝19KOを記録、のちの世界王者、エドウィン・ロサリオに初黒星、同じくのちに世界王者となるフレディ・ペンドルトンと引き分けた。ペンドルトンは敗戦多き雑草選手だったが、ランドールよりずっと早く世界王者になった。

ランドールにはきっといつの日か、世界に到達するだろうという希望だけが残った。

1987年、プリモ・ラモスにキャリア2敗目を喫したランドールはプロモーターのドン・キングと契約。エドウィン・ロサリオとの再戦(7回TKO)を含む17連勝を記録、結果的に51戦目で遂に世界初挑戦に到達した。

しかし相手は89勝1分、伝説の王者(エルグランカンペオンメキシカーノ)フリオ・セサール・チャベスだった。チャベスは無敗で100連勝を目指す過程で90勝目の相手を探していた。

1994年1月29日、ラスベガスMGMグランドアリーナ。
ランドールはチャベスからプロ初のダウンを奪い、さらにはプロデビューからの無敗記録を90(89勝1分)でストップさせた。試合に備え、ランドールはパーネル・ウィテカーがチャベスをアウトボックスした試合を研究し、攻略法を見出していた。1-15というアンダードックで迎えた寡黙な外科医はそれを試合で見事に披露し世界を驚かせた。

ペイパービューを観ていたファンは、ショータイムのコメンテーターが「チャベスに初めて黒星がつく」と叫んだ瞬間を忘れない。

ランドールは遂に念願の世界王者に輝いただけでなく、伝説のチャベスを倒した最初の男になった。

チャベスはランドールに敬意を払うことなく、ローブローを見逃したレフリーのリチャード・スティールに負けたと非難した。即時再戦を要求し実現したリマッチではバッティングによる8回負傷判定。ランドールは悲願の王座を失った。偶然のバッティングで流血していない方から減点するというWBCルールがなければランドールのテクニカルドローが妥当といえる内容だった。

ランドールは失意を振り切り、1994年9月17日、WBA世界ジュニアウェルター級王者ファン・マルチン・コッジに挑戦し、12回判定勝ちで世界王座を再び獲得。

2度の防衛に成功後、コッジと再戦するも再び不運に見舞われる。4回偶然のバッティングでコッジが倒れ、続行不可能となり負傷判定で王座陥落、コッジの続行拒否は演技にみえ、多くのファンはコッジを王者ではなくオスカー男優賞ものだと罵った。

世論の支持を受け、コッジとラバーマッチ、12回判定勝ちで三度王座に返り咲いた。

しかしランドール3度目の王座は長くは続かなかった。

1997年1月11日、初防衛戦でカル・ライリーと対戦し、11回TKO負けで陥落。

18か月のブランク、ドン・キングとの関係も解消したランドールは再起し、スターのデラホーヤの対戦候補に躍り出たが、エリミネーターでオーバ・カーに敗れチャンスを断たれた。

トップランカーとしてのランドールにとってはこれがほぼ終着駅だった。
その後も戦い続けるも、ほとんどの試合で敗北した。

2000年12月10日、アントニオ・マルガリートと対戦し、4回TKO負け。
2001年8月24日、ホセ・アントニオ・リベラと対戦し、10回KO負け。
2004年5月22日、フリオ・セサール・チャベスとラバーマッチで対戦し、10回判定負け。

2005年7月15日の試合を最後に引退。

生涯戦績58勝42KO18敗

フランキー・ランドールは忘れられたヒーローだ。遂に功績にふさわしい賞賛を得ることはなかった。いつも不運に泣かされながら、決して諦めることはなかった。

ランドールは「フリオ・セサール・チャベスを止めた男」だけではなく真のボクサーでありチャンピオンだった。

51戦目で世界初挑戦、相手はチャベスというだけでも過酷な条件だが、そんな逆境をバネに奇跡のアップセットを演じてみせたランドール。

しかし、チャベスもコッジも即時再戦を求め、負傷判定で明け渡したベルトを元に戻した。マニアは知っている。きちんとフルに戦っていれば、恐らくランドールの返り討ちだった事を。

プライドをかけてコッジから取り戻したベルトをあっけなく失うことになるが、そこからはもう黄昏、転落期だった。何か大きなことを成し遂げたそのすぐ後の未来が暗転することはボクシングではよくある事だ。心身のダメージが抜けきらなかったのだろうか。

地味に駆け抜けたキャリア、隠れた名王者だった。

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プクー

原始的で単純明快なスポーツです。生涯一度の敗北、無敗で引退したボクサーもいます。負けても次頑張りますというスポーツとは違う残酷さ、無常さが好きです。

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