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秘密・孤独な使徒/S.O.G.(神の子)アンドレ・ウォードVol.3

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「私は両親の事や彼らの苦労について話したことがありません。いつも彼らの名前や彼らが誰であるのか守りたかった。私の物語を、無一文から成り上がった男、スラムから這い上がった子供みたいなありふれた決まり文句に還元したくなかった。」

なぜウォードは過去を閉ざしてきたのだろうか・・・

信仰

その夜、オラクルアリーナでウォードは友人を応援するためにゴールデンステート・ウォリアーズ(バスケ)の観戦に訪れた。妻のティファニーと共に白いポルシェで現れたウォードは、気付いたファンや従業員に笑顔と手振りで応えた。

ウォード
「オークランドを離れることができませんでした。有名になると人は変わるとよく言いますが、周囲の彼らは何も変わりません。私は自分が一生恥ずかしがり屋のままだとおもいます。」

ウォードが10代のころからずっと一人の女性と付き合い続けていることをバージル・ハンターはからかってきたが、ハンターの預言通りにウォードは高校時代に付き合った最初の彼女と結婚した。しかし少し問題が生じた。16歳の時彼女は妊娠した。ウォードとティファニーには4人の子供がいる。アンドレジュニア15歳、マラチ13歳、アミラ7歳、そして唯一の娘ミカ3歳。

しかしちょうどその頃、数年先のオリンピック代表の可能性があったにも関わらずウォードのボクシングへの情熱は崩壊した。

2002年8月26日、父親が心臓発作で突然亡くなった。

ウォード
「けれど父は注射針を持たずに死んだ。結局父も最後までファイターでした。私はボクシングに人生を捧げ焼け尽きました。あの頃はただただ子供でありたかった。何も心配したくなかった。とても動揺して感覚が麻痺しました。神の存在など考えたくもなかった。」

ウォードは精神に異常をきたし、うつ病となり、ドラッグに救いを求めたりした。

ウォード
「私は神に腹を立てていました。私のヒーローはいなくなりました。最悪のシナリオでした。予告なしに父はいなくなりました。私は混乱し制御不能なスパイラルに陥りました。」

制御を維持することは、ウォードの人生の基本的な強迫観念であるはずだ。

ウォード
「その後2,3年、私は壊れ、全てを失っていたかもしれません。父がそのような形で死んだことに傷つきました。「偉大になれたかもしれなかった(がなれなかった)」と人々が言う人間になっていたでしょう。父が死んだ日をはっきりと覚えています。私は19歳未満のアマチュアトーナメントの準備をしていました。父はいつものように私をトラックにのせて試合会場に行きました。父は気分が悪いから仕事を休めるかと電話していました。翌日、父が死んだという電話を受けました。急いで病院に行くと冷たい金属板に父が横たわっていました。

私は彼の耳元にささやきました。

「一緒にはじめた事を終わらせます。金メダルを獲得し、偉大な男になるつもりです。」

父の固く冷たい体の感触は決して忘れられません。」

信仰はウォードの人生の重要な一部だ。ウォードはバージル・ハンターの言葉を思い起こした。
「お前がどうなるか俺は知らない。でも神がお前の拳に特別なものを託したことは知っている。お前は何も得ずに逃げ出すことは出来ない。」

元NFLのランニングバック、ナポレオン・コーフマンは、後に牧師となり、父の死後ウォードの人生を軌道に戻した時から最も大きな心の支えとなった。

ウォードの兄のジョナサンは父親の死を克服することは決してないと告白した。父親の死を受けた電話を再び受けることに怯えていたが(母の死)長い戦いを経て、母のマデリン・アーヴィー・テイラーは薬物依存症を克服した。

ジョナサン
「4,5年前から母は私たちの人生、子供達の人生に戻ってきました。」

ウォードのDNAは呪われているのだろうか?

ウォード
「私が経験した事という意味ですか?自分がどうこうできる事ではありませんでした。神のみぞ知るです。」

私たちはウォードの父親が死んだ家を訪れた。2656ペッパープレイズストリートの閑静で狭い袋小路にあるその家には売り出し中の看板がかかっていた。

ウォード
「通りがとても狭くみえます。子供の頃は近くの丘もこの通りも巨大にみえました。ここで父のヘロイン中毒を知りました。3.4年は住んでいたでしょうが、ここで育った感覚はないです。両親は確かにそこにいましたが、そこにはいませんでした。ボクシングでは私は多少目立っていたけれど、それ以外は甘く苦い思い出ばかりです。子供時代は若干タフな状況でしたが、ほとんどそれを理解できませんでした。あるいは、理解すべきではなかったのです。」

室内は空虚で、ウォードは裏庭に向かって歩いた。レンガの床の上にガタガタした木製デッキがあり、階段を昇ると木がきしんだ。両親の暴力的な喧嘩はここに移った頃にはじまった。母がお金を求めてストリートから戻ってくる。父親が麻薬に使うお金を与えることを拒否すると母は父に殴りかかった。

ウォード
「父もやり返しド派手な喧嘩がはじまりました。ある時母が父を刺したのを覚えています。壁も床も血まみれでした。あの時の事は忘れません。数年毎にあの時の残像がオンとオフを繰り返します。」

ウォードが寝室の窓を指さした。

「私はいつもあの窓越しにいて母の帰りを待っていました。母は何度約束しても姿をみせませんでした。学校だけが私が持っていた空虚でした。学校には父親のいない子供が多くいました。しかし私の場合は逆でした。11歳か12歳の時に親の治療費が払えず家を失い一家離散しました。その時バージルが私を引き取ってくれました。彼は奥さんと近所に住んでいました。」

なぜ親戚の家に行かなかったのですか?

ウォード
「誰も引き取ると手を挙げませんでした。」

同年、ウォードの父親は他界した。

時を同じくして、ウォードはボクシング界のヒーロー、ロイ・ジョーンズJrに初めて会った。
90年代半ばからウォードはジョーンズのファンだった。

Vol.4に続く

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プクー

原始的で単純明快なスポーツです。生涯一度の敗北、無敗で引退したボクサーもいます。負けても次頑張りますというスポーツとは違う残酷さ、無常さが好きです。

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