階級別 スーパーウェルター ミドル レジェンド

撲殺の鷹(The Hawk)/ジュリアン・ジャクソン

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今から30年近く前、当時は体系的なボクシングの知識はあったかなかったか、一番怖かったのはタイソンではなくジュリアン・ジャクソンだった。

この角刈り帽子のような恐ろしい黒人は何なんだ?バージン諸島?なんじゃそりゃ・・・ただのノックアウトアーティスト、ハードパンチャーの域を超えて、相手は皆失神か宇宙遊泳していた。ボクシングではなく撲殺のようだった。

恐怖こそがボクシング最大の武器であり、克服しなければならない相手。やはり本人には神から授かった超ハードパンチャーとしての自覚が存分にあった。

ボクシングの格言には「パンチ力は天性のもの、決して作られるものではない」というものがあるが、ジュリアン・ジャクソンにおいてはたしかにその言葉があてはまる。

ジュリアン・ジャクソンはジュニアミドル級とミドル級でタイトルを獲得している。ヴァージン諸島からやってきたこの男のパンチ力は超破壊的でWBCミドル級タイトルは2度獲得している。

ジャクソン
「それは天性のものです。アマチュアの頃にプロ相手に殴ったらノックアウトしてしまいました。17歳か18歳くらいだったとおもいます。右でした。その時はじめて自分にはパワーがあるんだと気づきました。いつもカバンにパワーパンチを入れていたようなものです。自分のパワーを信じていたしコーチは強く打たなくていい、軽く打ってもお前のナチュラルパワーで決まると言いました。たくさんのアマチュア連中と練習していく中で自分のパンチ力に確信が持てました。」

ジャクソンはプロで29連勝したが最終ゴングを聞いたのは2人だけだった。1986年8月23日、無敗のままマイク・マッカラムの持つWBA世界スーパーウェルター級王座に挑戦、初回にマッカラムを痛めつけるも2回逆転TKO負け。

1987年11月21日、マッカラムが返上したWBA世界スーパーウェルター級王座決定戦で白仁鉄を3回TKOに下し、王座を獲得。3度防衛した後返上。防衛戦には後の同級世界王者テリー・ノリスもいた(2回TKO勝ち)


テリーノリスはこの後名王者になりP4Pナンバーワンにもなった。

1990年11月24日、一階級上げてWBC世界ミドル級王座決定戦でヘロール・グラハムと対戦し、4回に右フックによる逆転KO勝ち。2階級制覇を果たした。序盤はグラハムがジャクソンをレッスンする展開となったが、右フック一発で体を硬直させ失神、ジャクソンのパンチ力を見せつけた試合となった。この試合はジャクソンが網膜の損傷を患っていたために認可が下りず、1年近くの歳月ののち、スペインで行われたものだった。

ジャクソンはこの試合の想い出が印象的だと語る。

ジャクソン
「私のノックアウトの中でももっとも歴史的なものになりました。へロールは素晴らしいファイターで背も高く速かった。序盤は苦戦して私の右目は腫れました。レフリーはこのままなら試合を止めるぞと言いました。私はスタンスをサウスポーに変えて右フックを囮に使いました。するとヘロールはすぐに察知して私を仕留めにかかりました。その時に本当に狙っていた右フックをアゴに打ち込んだのです。」

ジャクソンはラスベガスで宿敵、ジェラルド・マクラレンと対決するまでに4回タイトルを防衛、レノックス・ルイスやフリオ・セサール・チャベスと同じ興行に出場したりもした。

ジャクソンは5回でマクラレンに敗れた試合を振り返る。

ジャクソン
「私のパンチ、特にボディでマクラレンは傷ついていたとおもう。けれど本当に狙っていたアゴにはヒットできなかった。マクラレンは顔面へのパンチに対する対処が出来ていた。必死に取り組んだのでしょう。私のパンチを食ったら倒される、実際倒されたのは私でした。」

その後3連勝するもマクラレンとタイトルマッチで再戦し、1回TKO負け。

34歳になったジャクソンの栄光の日々は終わりを迎えたようにおもわれた。しかしながら別の格言に支配された。「ファイターは最後にはパワーを失う」

1995年3月17日、WBC世界ミドル級王座決定戦でアゴスティノ・アルダモネを2回TKOに下し、王座に返り咲いた。しかし、同年8月19日の初防衛戦でクインシー・テイラーに8回TKO負けで王座から陥落した。

最後の2試合に連続KOで敗れ、プロとして18年間で55勝49KO6敗のキャリアを残し引退した。

2003年、ジャクソンは「史上最強のパンチャー100人」の25位に選出された。

後の偉大な王者、テリー・ノリスやグラハムへの印象的な勝利にも関わらず、ジャクソンは1987年の春のミルトン・リークスとの試合を最高の夜だと回想する。

ジャクソン
「はじめての世界挑戦でマイク・マッカラムに負けた後、私にとってとても大事な試合でした。マイクに負けた現実を直視しそれでも自分を信じていかねばならない大事な試合だったんだ。決して忘れない。ミルトンは私を倒した。そして私はミルトンを倒し返した。結局10ラウンドで私がノックアウト勝利した。誰かがこう言ってくれたんだ。勝者は世界王者になるってね。そして実際に私は3回世界王者になれたんだ。」

バージン諸島に暮らすジャクソンは自分の功績に満足しているが、後悔もある。

ジャクソン
「メガファイトをしてみたかった。シュガー・レイ・レナードが私とテリー・ノリスの勝者と戦うと言ったんだ。でも彼は負けたノリスを選んだ。」

現在ジャクソンは地元で役人をして政府のボクシングコーディネーターをしている。2人の息子、ジュリアスとジョン、甥のサミュエル・ロジャースのトレーニングもしている。

ジャクソン
「私の国、家族、今の仕事が好きだからリタイア生活を楽しんでいます。」

ライバルについて

ベストスキル マイク・マッカラム

彼はとても味わい深いファイターで経験豊富でした。既に王者でありスキルフルでした。ボクサーとしてのツールを全てもっていました。彼をノックアウトできるとおもっていましたがそれは逆でした。

ベストジャブ マイク・マッカラム

最高のジャブを持っていました。背が高くそこから繰り出すジャブが効果的でした。キャリアからくるジャブのタイミングが抜群で計算されていました。

ベストディフェンス ジェラルド・マクラレン

初戦で本当にやりたいようにさせてもらえなかった。パンチの当たるところにいるのですがどうしてもきれいにヒットできなかった。つねにディフェンスに気を配りながら動くことができる男だった。ディフェンスが固くて、私がノックアウトするはずがノックアウトされてしまいました。

ベストチン トーマス・テート

マッカラムやマクラレンとは言えない。トーマス・テート、というよりレフリーのリチャード・スチールの事をよく覚えている。テートはもう諦めているようにみえたけどレフリーは続行させた。ノックアウトで決めることが出来なかった。ダウンは奪ったけど彼は立ってきた。

その他にとても寒い場所で戦った相手がいますが名前を憶えていないんだ。記録に残っているかもわからないけど白人と戦ったのを覚えている。彼をずっと強く殴ったけど彼は決して倒れなかった。

ベストパンチャー ジェラルド・マクラレン

間違いなく彼だね。彼は私と同じナチュラルパンチャーだった。私も彼もよくわかっていた。最初にパンチを食った方が倒れると。最初に食ったのは私だった。(笑)

ハンドスピード テリー・ノリス

ヘロール・グラハムも速かったが、ノリスが一番速かった。ジャブ一発が3発、4発のように感じた。スピード抜群だったので私はタイミングが鍵だった。私はそんなに速くなかったから。タイミングがばっちり合ってスピードに対処できた。

フットワーク テリー・ノリス

ハンドスピードとフットワークがひとつのパッケージになっているんだ。手足のスピードは一致しないと意味がない。彼は素晴らしいフットワークも持っていた。

スマート マイク・マッカラム

抜群のテクニシャンであるのはわかっていたので私はパンチャーとしてチャンスを狙っていた。彼は倒さなきゃ殺られるとわかっていたんだ。怖がっていた。彼は合図してきたんだ。レフリーに気付かれないようなローブローを2,3発食った。もちろんスマートじゃなくてダーティーだけど俺のゲームプランを壊す術を知っていたんだ。本当に驚いたよ。

屈強 フランシスコ・デヘスス

ノックアウトするに十分なパンチを打ち込んだ。彼の怪力は恐るべきものだった。彼はただ力持ちで荒っぽいだけだったけどパワーだけならマクラレンやマッカラムよりも上だった。マクラレンはパンチャーだけどデヘススの方が体力は上だった。クリンチした時も彼の怪力にワォ!ってびっくりしたよ。

総合 ジェラルド・マクラレン

マクラレンと言わねばならない。とんでもない才能だった。スピード、パワー、特にパンチングパワー、それでもってアウトボクシングも巧い。俺が戦った相手で一番は彼だよ。

忘れられない思い出のボクサーとしてのジュリアン・ジャクソンは私の中で永遠だが、なかなか興味深いインタビューでした。

生涯忘れえぬ大事な試合というのがミルトン・リークスという無名選手だったり、フランシスコ・デヘススという屈強な男の想い出、寒い国で戦った名もなき白人、ヘロール・グラハム戦の駆け引きは味わい深い。

一撃で勝負を決めるパンチャーとしての自覚を持ち、それを武器に数々の戦慄のKOの山を築いたジャクソンだが、今の井上尚弥のような万能型ではなかった。スキルもスピードも自身より上な相手に強打を叩きこむタイミングをずっと図っていた。

こういうケタ外れの強打者は殺るか殺られるかの覚悟でリングに上がるのか、ジャクソンの6敗(2敗はラスト2連敗なので余計だが)は全てKO負けである。勝利もほとんどKO。潔く判りやすい。そして最後は自分と同じ才能を持つジェラルド・マクラレンに全てを持っていかれた。

今、こんなパンチャーと戦える勇気のあるファイターはいるだろうか。昔は夢にも出てきた。もし俺がこの男とやれといわれたらどうしよう・・・

ジュリアン・ジャクソンのような男がいたから、今でもミドル級はゴロフキンでもカネロでもなくジャモール・チャーロに惹かれるのだろう。現代のファイター誰もジャクソンのような震撼の失神KOを連発する者はいない。

「史上最強のパンチャー100人」の25位に選出されたとあるが、私のリアルタイムの想い出では1位だ。

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原始的で単純明快なスポーツです。生涯一度の敗北、無敗で引退したボクサーもいます。負けても次頑張りますというスポーツとは違う残酷さ、無常さが好きです。

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