階級別 ウェルター レジェンド

絶えゆく光に激しく怒れ/マニー・パッキャオVSキース・サーマン

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7月20日が平和に過ぎますように。
マニー・パッキャオVSキース・サーマン、正規王者とスーパー王者のウェルター級統一戦は、楽観主義の日和見観戦ではいられない。ボクシングというスポーツの勝敗以上のものを危険に晒した戦いだ。

偉大なファイター、シュガー・レイ・レナードはボクシングを5度引退している。最高レベルに達したボクサーが年をとることでリングを去ることがどれほど難しいか葛藤していた。このテーマに30歳のキース・サーマンと戦う40歳のマニー・パッキャオは興味がないかもしれない。7月20日、ラスベガスMGMグランドのメインイベントで両者は激突する。

しかし加齢は残酷な結果を招いているという自然法則を歴史は物語ってきた。パッキャオはレナードの経験に耳を傾けるべきだ。

レナード
「自分がいつだってベストなんだと考えてしまう。人間の本性だよ。これは別に特別成功した者に限った話ではない。誰もがそう考える。多くのファイターがカムバックする理由はお金だ。自分をベストだと言ってくれる人間に囲まれて、彼らは皆別の新たなボーナスを望んでいる。ボクシング以外の事を何も知らず、ボクシングのない第二の人生に不安を抱いているから彼らは戻ってくるんだ。

しかし、決してお金だけが問題なのではなく、他の選択肢があっても、特に頂点を極めたものなら、ファイターとしての信念を失うことは決してない。引退しても食べていかねばならないが、ファイター時代の栄光以外でそんな高みを与えてくれるものをみつけるのは本当に難しいんだ。」

レジェンドのシュガーマン(レナード)は何から話せばいいかよくわかっている。無敵のミドル級王者、マービン・ハグラーと戦うまで35カ月間も引退状態だった。

ウィルフレド・ベニテスやトーマス・ハーンズ、ロベルト・デュランへの勝利が彼を頂点に引き上げ、スプリット判定でハグラーを下すと、次にかなり大きなドン・ラロンデにさえ勝つ事ができた。それはレナードの目の覚めるような自己実現のプロセスだった。

しかしレナードがあまりに長くこの厳しい仕事(ボクシング)に固執するための免疫があったのも不思議ではない。彼がハグラーに衝撃を与えた時はまだ31歳の若さだった。

モハメド・アリがアフリカでジョージ・フォアマンを破った時に終わりにしなければならなかった。しかし険しい山のまさに頂点に上り詰め、十分長くその景色を味わうと、また自分を確かめてみたくなる。

ほぼ4年の引退状態を経て35歳のレナードは23歳の素晴らしい若き王者テリー・ノリスに挑み叩きのめされた。ユナニマス判定で敗れるまでに2度のダウンを奪われもした。その夜、レナードがオッズでは本命とされていたのはファンがレナードを愛し信じ続けてていた証拠だ。アリがラスベガスでラリー・ホームズに打ちのめされた時と同様、一部のレナードのファンは泣いていた。

レナードがリングで魔法を演じることはもうないと決心するための最後の行動があった。さらに6年のブランクを経た41歳の時にパンチの軽いヘクター・カマチョによって5回でストップされた。

レナード
「これが私の最後の戦い、最後の冒険です。」

レナードは遂にすぐ乾く海辺の砂浜にではなく、消えない文字で引退を表明し後に国際殿堂入りを果たした。

ロッキー・マルシアノ、マービン・ハグラー、レノックス・ルイスを除くほとんど全ての特別なファイター達は引退のタイミングに抗い、過去の栄光を追体験しようともがいた。ナポレオンのワーテルローの戦いのように老いたジョー・ルイスは若いマルシアノに、バーナード・ホプキンスは建設労働者のジョー・スミスに厳しい現実を突きつけられた。

8階級で世界王者になった唯一無二のパッキャオは現役にして殿堂入りの異次元の才能だ。今起こることが彼の輝く遺産を損ねることはない。しかし、マニー・ザ・マグニフィセントは最近自らをかなり格下げしているのではないだろうか。

キース(ワンタイム)サーマン(29勝22KO)と対戦するパッキャオ(61勝39KO7敗2分)はこれまで同様、魅力的な対抗者であるし、最新試合でもその実力を示してきた。たとえ劣化があるにせよ最小限にそれを留めてみせた。

パッキャオ
「いかなる相手にも恐れることも脅かされることもありません。私の時間はまだ終わっていません。旅は続きます。それが7月20日に私が証明する事です。サーマン戦に対する気持ちはオスカー・デラホーヤ戦の時以来のものです。アンダードッグ、不利と言われることが好きです。ほとんどの試合で有利と言われてきて時に自信過剰で不注意になったこともある。でも今回は違います。キース・サーマンを選んだ。彼が無敗だからです。40歳でもキースのような無敗のファイターに勝てることを証明したいのです。」

サーマン
「7回も負けたファイターに負けたことなど一度もありません。パッキャオに負けるはずがありません。いかなる形になってもパッキャオの勝利はありえない。彼は40歳、私は30歳です。私はエイドリアン・ブローナーではない。

恐らくパッキャオの最後の戦いになるだろう。ウェルター級のキングはフロイド・メイウェザーだった。しかし彼は行ってしまった。伝説、パッキャオは今ここにいます。7月20日、誰もいなくなるだろう。」

たぶんサーマンの言葉通りになるだろう、いやならないかもしれない。誰もが好きなファイターの錆び付きを認めることは難しいことではない。パッキャオの際立った才能を発見した時、パッキャオが永遠に新鮮で未熟なままでいるべきと感じた私にとっては。

私にとってその瞬間は2001年6月23日のMGMグランドだった。22歳のパッキャオ、それ以前の彼の32戦のキャリアはほとんどフィリピンや日本(ちゃうでしょ)で行われていた。南アフリカのIBFスーパーバンタム級王者レーロホノロ・レドワバに対するパッキャオのアメリカデビュー戦。彼らは、WBCスーパーウェルター級王座をかけたハビエル・カスティジョホVSオスカー・デラホーヤのアンダーカードで戦っていた。

メインを埋めたファンは12480と発表されたが、パッキャオの試合時はその3分の一も観客はいなかった。プレス席でさえほとんど空だった。それでも私はフィラデルフィアニュースの記事のためその試合を観戦し心を動かされた。「パッキャオはファンを魅了した」と記事に書いたが「レドワバを3度倒し血まみれにした」と書いたも同然だった。しかし結局のところ、パッキャオはそんなものではなかった。

映画や他のスポーツに例えているので割愛

どんなに多くの事を望んでも、非情な時の経過はスキルと反射神経を衰退させる。パッキャオに関しては3年前にその事を書いた。37歳だった。パッキャオだって人間であり、他の人間と同じくらい傷つきやすいのだ。「パックマン」が引退のステージに入ったという主張は私には悲しい事実だが、それが認めねばならない現実だ。

加齢による身体の侵害、劣化はボクサーには食い止めることができない。最初は猫の足音のように静かに忍び寄ってきてもその音はやがて無視できないものになる。パッキャオの頭の中にあるその小さな猫の足音が、やがていびきをかいた虎が襲い掛かる叫び声に変わらないかと心配している。

Do not go gentle into that good night,
かの良き夜を穏やかに受け入れるな
Old age should burn and rave at close of day;
年寄りは、日の終りに火を放て、叫べ
Rage, rage against the dying of the light.
絶えゆく光に激しく、激しく怒れ

ディラン・トマス
Dylan Thomas(1914-1953)

チーフセコンドとしてパッキャオのコーナーに復帰するフレディ・ローチはパッキャオが再び輝くと確信している。

フレディ・ローチ
「私は長い間賭けをしていないが、数奇な運命が私を呼び戻しました。私はこの試合でマニーに大金を賭けます。マニーは無敗のファイター、特に若いファイターを殴るのが大好きです。マニーはそれが楽しいのです。マニーが楽しんでいる時、相手はもっともっと気を付けたほうがいいよ。」

長年パッキャオのプロモートをしてきたボブ・アラムはローチの楽観主義は単なるボクシングの結果以上のものを危険に晒していると警告する。

ボブ・アラム
「私はマニー・パッキャオが大好きだ。彼とたくさんの歴史を作ってきた。今回も心からパッキャオを応援している。しかし、自分が40歳であることを理解しなくてはいけない。ボクサーが30歳を過ぎると、プライムタイムは過ぎるのです。」

もっと長かったのだが、感傷的な部分や映画や他のスポーツに例えている部分は省いた。

40歳のアドニス・スティーブンソンはアレクサンダー・グヴォジクにKOされて脳障害を起こし生死を彷徨った。特別に残酷なストップでもレフリーのミスでもない。あれが20代、30代のスティーブンソンであれば、そこまでのダメージとはならなかった、試合に勝利していたかもしれない。

41歳のザブ・ジュダーは先日、クレタス・セルディンに敗れ、脳内出血で病院に搬送された。

パッキャオの功績も意欲も現在の力も凄まじい。
クレイジーすぎる記録と活躍。
だからこそ、ボブ・アラムと同様、結果以上の危険が怖くて仕方がない。

直近の試合内容をみても、練習動画をみても、若いサーマンよりパッキャオの方が速く溌剌としており、歴戦のキャリアも引き出しもスキルも豊富だ。

試合に勝っても驚かない。
賭けがあるなら感傷ではなく現実でパッキャオを支持するだろう。
しかし、単なる結果、ボクシングの勝敗以外の部分でこの試合は歯がゆいものがある。

スペンスは、次はポーター、その次にパッキャオVSサーマンの勝者、そして最後にクロフォード

というプランを明かしていたが

パッキャオの名前を利用するのはこれで最後にしないか。
勝っても負けても無事にリングを降りてこれを最後にしないか。
周囲がどうかそう説得してくれないか。

人間国宝をこれ以上危険に晒してはならない。

本気でこの試合勝っちゃう気がするし、そうであっても・・・

Do not go gentle into that good night,
かの良き夜を穏やかに受け入れるな
Old age should burn and rave at close of day;
年寄りは、日の終りに火を放て、叫べ
Rage, rage against the dying of the light.
絶えゆく光に激しく、激しく怒れ

この詩の続きはこうだ。

hough wise men at their end know dark is right,
Because their words had forked no lightning they
Do not go gentle into that good night.
Good men, the last wave by, crying how bright
Their frail deeds might have danced in a green bay,
Rage, rage against the dying of the light.
Wild men who caught and sang the sun in flight
And learn, too late, they grieved it on its way
Do not go gentle into that good night.
Grave men, near death, who see with blinding sight
Blind eyes could blaze like meteors and be gay
Rage, rage against the dying of the light.
And you, my father, there on the sad height,
Curse, bless me now with your fierce tears, I pray.
Do not go gentle into that good night.
Rage, rage against the dying of the light.

賢人たちは最後には闇が避けがたいと知ってはいるが
彼らの言葉がまだ稲妻を発していないから
彼らはかの良き夜を穏やかに受け入れたりしないのだ
良き人たちは、最後の波とともに、こう嘆く
彼らのはかなき功業が、緑なす湾では、いかに輝かしく躍動できたであろうかと
絶えゆく光に激しく、激しく怒れ
荒ぶるものたちは、飛び去っていく太陽を捕まえて歌う
そして、学ぶ、遅すぎたと、その太陽の行手を悲嘆するのだ
かの良き夜を穏やかに受け入れるな
死に瀕した人たちは、眼も見えなくなっているが
見えなくなった眼も流星のように輝き、陽気でいられる
絶えゆく光に激しく、激しく怒れ
さあ、あなた、死の床にある、我が父よ、
呪え、そしてあなたの激しい涙で私を祝福せよ、お願いだから
かの良き夜を穏やかに受け入れるな
絶えゆく光に激しく、激しく怒れ

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原始的で単純明快なスポーツです。生涯一度の敗北、無敗で引退したボクサーもいます。負けても次頑張りますというスポーツとは違う残酷さ、無常さが好きです。

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