週末の世界戦を経て、圧倒的に面白かったのはWBSSである。下馬評以上にウシク、サウスポー対策を極めてきたブリエディス、それでも第一シードの座を譲らない五輪金メダル男。こういう試合を両者勝者に値するという。
そして、演出。試合前から最後まで通して観た人はいるだろうか?
決して新しさはない、古典的な手法だろう。しかし盛り上げ方がすごい。テンションアゲアゲである。まさに、王者同志の世紀の決戦を期待させる無駄なき最高の演出だ。
ウシクVSブリエディスは、やはり第一シードウシクの運動量、ジャブやストレートなど、テクニックと総合力がわずかに上回った。それでも不利を予想されたブリエディスの近い未来の逆転も予想できる白熱の試合。効き方をみると明らかにブリエディスのパンチの方が強い。そして、トップアマでもないのに、五輪金に肉薄する技術。底のしれぬ強さだった。
しかし、この試合の内容を見て、このレベルで判定や後半TKOが増えた両者と比較して、第3シード圏である、ムラト・ガシエフVSヨニール・ドルティコス戦がさらに目が離せないものとなった。KO必至の剛腕対決だが、ここでどちらかが圧勝するようだと、一気に第一シードウシクを破り、サウジアラビアはジッダの頂上に駆け上がる可能性がある。
もう、今週末だ。
https://www.youtube.com/watch?v=G3DClkvHb1M&t=618s
https://www.youtube.com/watch?v=kzMeKP-ZsNw
ヨニール・ドルティコス
Yunier Dorticos
22勝21KO
アマ257戦
身長191センチ
リーチ203センチ
31歳
WBA王者
キューバのトップアマだが現アマトップオブザトップのフリオ・セサール・ラクルスに勝てず大きな勲章はない。ほぼパーフェクトレコードだが唯一の判定はエディソン・ミランダ。
ロシアの全KO男のグドリアシェフもわずか2回で倒し駒を進めた。大変な強打者に感じるが、それが特徴ではない。下がったり、ブロックしたり、警戒したり、守りに時間を費やすなら仕掛けてしまえと自分からドンドンパンチを打っていく。最も得意であろう踏み込みとフォローの効いた右ストレートを惜しげもなく打っていく。どのパンチもしっかり振り抜く。
そこが特徴だ。彼こそ激闘王だろう。まだ打つか、また打つかというくらい右を振ってくる。同じ攻撃パターンなので単調と言えなくもないが、これだけ迷いなく踏み込んで体重の乗ったパンチ、タイミングも的中率もいい必殺パンチを打ち込まれると皆根負けし掴まってしまう。まさに絵にかいたようなKOパンチを迷いなく打てるのでこれだけのKO率なのだ。
試合ぶりが一番気持ちいい。スカッとする。出したいパンチは全部出す、覚悟の決まった王者である。強いて言えばきちんと打つのでモーションが大きいかな。
https://www.youtube.com/watch?v=NUQOQKG_nNU
https://www.youtube.com/watch?v=luzGIlQJF6Y&t=720s
悔いの残らぬ戦いっぷりだ。
ムラト・ガシエフ
Murat Gassiev
アマ数戦
25勝18KO
身長192センチ
リーチ193センチ
24歳
IBF王者
アベル・サンチェスが指導する第二のGGGといわれるIBF王者。アマの経験は少ししかなくプロで叩き上げたキャリアだそうだ。
レベデフ戦まではえらく筋のいいホープがいるな、くらいしかチェックしてなく、実はそんなに試合を見ていない。
レベデフ戦も判定だし、KO率も化け物級ではないので判定も視野にいれたボクサーなんだろうか?しかし、ハイライトやWBSS一回戦のグヴォダルチク戦を見るととんでもない破壊者にみえてしまう。
常々、ボクサーにとって一番の勲章はカッコよさじゃなくて怖さだとおもっているが、その怖さを備えている。あまりに怖い勝ちっぷりをしているとタイソンのように当たってないのに怖くて倒れる選手も出てくるのだ。
色々なスタイルのボクシングがあるが、パンチの交換がなくても無言の圧力をかける事が出来、少々打ってもまったく動じず軽くはじき返し、ロープ、コーナーに追い詰めたら滅多打ち。こういう勝ち方ができるならこれが一番理想だとおもうが、そういう勝ち方をしている。
ガードも固く、自然に圧力をかけ、パンチはショートコンビネーション主体。大振りやロングの一発は打たない。そしてロープ、コーナーに詰めてからの連打が強烈だ。上から打ち下ろすショートフック、ガードの上からそれをぶち抜く渾身の破壊力。下からショートアッパー、そして一番は左ボディ。コーナーに詰めた時のラッシュが鬼である。体幹が強く脇が締まりバランスを崩さない。
https://www.youtube.com/watch?v=1MAW5LzlRJI
https://www.youtube.com/watch?v=XScGzLkzTkE
強いていえばこれだけショートコンビで大きなパンチを打たず危険を冒さないのは見た目に反し効きやすい面があるからか?
この試合は、中間距離でドルティコスがどれだけ自慢のパンチを当てられるかが鍵だろう。ガシエフの隙のないガードとプレスに下がってしまうようだと鬼ラッシュとボディに屈する。
逆にガシエフは、これだけ正確に迷いなく強振してくるドルティコスのパンチの嵐を中間距離でどこまで封じ込めてコーナーに追い詰めるかだ。グドリアシェフのように中間距離でまともに食ったら倒されてしまう。
どちらも好みで、どちらが勝ち上がってもいい。
しかし冷静に予想すればガシエフだ。頑丈、鉄壁、イカつさで上。
ドルティコスの打ち抜きが当たって序盤で余裕のKO勝利
とことんガシエフに消耗させられて逆転の一発でKO勝利
それ以外は全てガシエフのものだろう。
ウシクVSブリエディスのような技術の拮抗した判定勝負にはならないような気がする。
もしそういう試合なら、決勝もウシクが有利だろう。
一方的なKO決着になった時、第一シードは入れ替わる。
あー楽しみな試合。
今度はロシアのソチで行われますが、もし可能であれば試合の前後、演出も楽しんでご観戦ください。
こういうのを全てのボクシングファンは求めているのだ。