
昔やってたブログでも書いたがすごいボクサーでした。
はじめてみたのは意外と遅く3戦目、タイソンの前座でタイ人王者相手でした。
その試合でいきなりダウンを食らうのですが、ポカしちゃった、効いとらんという感じで怒りのボディで圧倒してしまいました。
なかなかハードパンチャーな相手でしたが。
その後、端正なボクシングの日本王者岡部繁に圧勝しスケールの違いすぎる異能の日本人誕生を確信させ、出世をどんどん急いでいきました。すでに日本に対戦希望者はいず、世界路線でした。
アマ経験豊富そうな技巧派アブラハム・トーレスと引き分け
おもえばこの試合の苦戦で路線変更しじっくり育成して欲しかった。
トーレスは世界王者とまでいきませんでしたが辰吉の強気ロードは変わらず、レイ・パショネス(フィリピンの世界ランカー)をきれいにアウトボックス、同じくフィリピンのサムエル・デュランだったけ?を華麗にKOし世界戦へ駒を進めました。
個人的にはこのデュラン戦がお気に入りです。
とてもいいボクサーで過小評価されてましたが彼はその後ジェリー・ペニャロサに勝ち、オーランド・カニザレスに肉薄する試合をみせました。
逸材でありました。
すごい戦績になっとる
http://www4.pf-x.net/~iyanbox/career-record/OPBF/OPBF-Fe/samuel-duran.htm
8戦目で世界王者となりましたがその後の辰吉は個人的にはギリギリの王者でありました。
印象はもったいないの一言。
ボクサーに必要な要素、パワー、柔軟性、勘のよさ、煌き、全て怪物的才能を持ってはいたが、気持ちが強すぎ、自信過剰すぎ、全てのスキルが未完成のままキャリアが数倍ある歴戦の強豪相手にダメージを蓄積させていきました。
野球の清原とかがデビュー時が一番輝いていたようにキャリアを積めば積むほどに繊細さが欠け能力を発揮できない心身になっていったような気がします。
晩年の試合内容や戦績だけみて今批判的な意見も多くきかれますが、その逸材ぶりは日本歴代トップ。
まさにファイティング原田なんかとは対極に位置する天才だったとおもいます。(原田は自分の中では努力型の非天才だとおもってますので)
彼のいた時代の少しあとくらいにマルコ・アントニオ・バレラやナジーム・ハメドなんかが出てましたが能力だけなら彼らに比肩するボクサーで段階を踏んでいたら対戦も可能、勝敗もわからないレベルだったとおもいます。
長谷川や西岡あたりとも新人時代のスケールは別次元でした。
ただこういう異能、孤高の才能をうまく昇華させるのは難しいのでしょうね。
そのボクシングには驚愕と感動を覚え、大ファンでしたが
「俺の試合は芸術作品」
「一度でも負けたら引退する」
などの発言には白けていました。
あぁ、王様、天狗になっとると。
彼にオーランド・カニザレスのような精神が宿っていれば、世界レベルのボクシングに敬意があればと惜しまれます。
未だ訪れることがないであろう再起に向けて引退はしていない彼ですが、そこは彼の生き様を尊重したいとおもいます。
渡辺二郎が引退したのは辰吉出現のためであったそうだし、今をときめくセルジオ・マルチネスが辰吉をとっても評価しています。
そう、辰吉はまさにセルジオ・マルチネスみたいな選手、そうなるべき逸材だったのです。
自分にとって彼は強かった元王者という位置づけではなく果てしなく強くなる素質をもった未完性の怪物だった。
そういう存在です。