Never Too Late・遅すぎるなんて言わせない/テビン・ファーマーVSジョノ・キャロル

テビン・ファーマーは日本の尾川との試合でミソがついたので、憎き敵、パワーレスな穴王者とみるファンも多いだろうが、その最悪スタートからの偉大なボクシングキャリアには敬意を示さずにはいられない。現在28歳のファーマーは、誰にでも勇気と希望を与えてくれる雑草王者である。

テビン・ファーマーのキャリア、彼の生涯は白いTシャツに黒い文字で印刷されている。

「Never Too Late」

これはもちろん、遅咲きのIBFスーパーフェザー級王者、ファーマーに当てはまる言葉だが、落伍者とみなされ、拒絶され、見下され、蹴飛ばされた経験のある者なら誰にでもあてはまる。

ファーマー(28勝6KO4敗1分)は今週金曜日にDAZNでアイルランドのジョノ・キャロル(16勝3KO1分)と戦う。今となっては王者としてファーマーはこの試合を楽しんでいるかのようにみえるが、彼のさほど昔ではない暗い過去の記憶は、「栄光の時は永遠には続かない」という教訓を呼び覚ますには十分だ。

ファーマー
「人生に遅すぎるという事はない。俺がその証拠だ。「Never Too Late」これが俺のスローガンだ。」

ファーマーのスローガン「Never Too Late」はシャツの前面に印刷されているが、一般発売されるシャツでは裏側に印刷される。このシャツの売り上げはブライス・ハーパー(野球選手)のそれとは違いたいした額にはならないだろうが、そういう状況に置かれた人には勇気を与える。

ファーマー
「俺はボクシングのためだけにここにいるんじゃない。受刑者や最悪の人生のスタートをした者たちのためにいる。もう年寄り?40歳だって?どこに行き何がしたい?それをするのに遅すぎるということはないんだ。

俺はチャンスを得てそれを掴んだ。人生では起こりうることだ。チャンスとタイミングだ。俺はどこから来たとおもう?多くの障害に直面した。まだ慣れていなかった。俺のボクシングは散々なスタートだった。でもそれを乗り越えることができれば何でも乗り越えていけると信じていた。あなただって出来る。全てのものごとには意味があるんだ。

済んでしまった事について文句を言うことも泣くこともできない。ただ前に進む、それだけだ。俺はその精神を持っているだけ恵まれている。簡単な事のように言ってるが簡単ではない。精神を鍛える必要がある。」

ファーマーはボクシングをはじめて4勝3敗1分だった。ある程度の才能はあったが19歳までボクシングをした事がなかったファーマーは、安いギャラのために経験豊富なボクサーたちのカモにされてきた。逃げ出せなくてファーマーは自分自身を永遠の犠牲者だと考え始めていた。

しかしキャリア初期の敗北はそれほど最悪ではなかった。2017年3月、彼はプエルトリコで休暇中、溺死しかけた。1か月後には試合で上腕二頭筋を裂き、手術、片手一本でなんとかアルツロ・サントスを判定で下した。さらに過酷なことに7月には銃で右手を打たれ、医師からはボクシングを諦めろと説得された。

リング内外での不幸の津波はファーマーが個人的なマントラに変身するというスローガン「Never Too Late」を生き始めた。空位のIBFスーパーフェザー級王座を日本の尾川堅一と争い、スプリットで敗れると言うさらなる平手打ちを食らった。そのジャッジはファーマーの心を傷つけたと糾弾されたが、尾川のドーピングが発覚しノーコンテストに変更された。

プロモーターのルー・ディベラはそんな過酷な状況に打ちひしがれることなく克服していくファーマーの姿に心を打たれた。

ディベラ
「私はこの子(ファーマー)が大好きだ。今まで一緒に仕事した中で一番最高だ。彼は決してふてくされたり弱音をはかないんだ。自分にかなりの信念がなければ出来ない事だし、私もテビンを信じることはできなかっただろう。」

尾川戦の屈辱はすぐに晴れた。ファーマーは敵地オーストラリアに出向き、ビリー・ディブを破って遂に王者に輝いた。敗れたディブは引退を発表した。

その後2度の防衛に成功したファーマーは3度目の防衛戦にジョノ・キャロルを迎える。ファーマーの地元フィラデルフィアで開催される試合でもセントパトリックデーの週であるこの時期はアイルランドのキャロルの方が多くのファンが集まるという。実際、ロンドン金メダルのケイティー・テイラーやローズ・ヴォランテなどのアイルランドボクサーがこの日の脇を固める。

黒ひげが特徴のキャロルはそんなファーマーのサイドストーリーには耳を傾けない。

キャロル
「俺は自信がある。ファーマーはいい王者だが、ベルトを奪う準備が出来ている。俺はアイルランドの次期スーパースターになるんだ。」

ファーマーはキャロルの自信と態度にほくそ笑む。弱者が好むフレーズである事をよく知っている。しかしかつては自分がその弱者だったのだ。元に戻すわけにはいかない。

ファーマー
「キャロルでは俺は倒せない。どんな方法もスタイルもない。キャロルはライバルでもない。ベストコンディションで向かってきて欲しいね。楽勝して2カ月後にまた試合をする。俺はテストされたいんだ。全ての対立王者に対戦をアピールした。ベルチェルト、デービス、伊藤だ。でも実現できないからキャロルのような男と戦うんだ。キャロルはサメと一緒に泳ぐようなものだ。」

ファーマーは近年もっとも活発な王者であり、キャロル戦はここ4カ月で3試合目だ。2019年に6試合したいと言う。

フィラデルフィアにはファーマーと同じ足跡を持つ、フレディ・ペンドルトンという元王者がいるが、ファーマーが知らないというのは興味深い話だ。

"Fearless(恐れるものなし)" フレディはプロとして最初の25戦で12勝12敗1分と散々なものだった。しかし辛抱を続け1993年に空位のIBFライト級王者となった。

ペンドルトン
「俺はそういうファイターがもっと増えるべきだとおもう。ファーマーは最初はたいしたことがなかったが初期の敗北から学び、適応していった。賢いんだ。考え方次第なんだ。ファーマーの精神力は驚異的だ。多くのファイターがファーマーと同じことを経験するけど、ただ詰め込むだけか、一生ジャーニーマンで終わってしまうけど、ファーマーは経験を糧にかえ実行してみせた。そしてあまりに大きな見返りを得たんだ。」

今やDAZNチームの一員となったファーマー同様に癌を克服したダニエル・ジェイコブスもいる。彼らは困難な状況に追い込まれた人々の希望だ。

エディ・ハーン
「壮絶な物語を持っている彼らの未来は輝いていくだろう。彼らは今自分が目指す場所、成しえる事を人生のキャンバスに描いている最中だ。偉大で、際立ったファイターになっていくだろう、とてもワクワクしている。」

ええ話なのでご紹介しましたが、かなりテキトウです。ごめんなさい。

最後のエディ・ハーンの話がファーマーの事なのかジェイコブスの事なのか読み取れなかったので、HeなのにTheyと勝手に変えて彼らにしてしまいました。

エディ・ハーンはDAZNの宣伝マン、広告塔である他にマッチルームボクシングのプロモーターでもあるので、彼の所属選手を応援しているのだろう。だからカネロはDAZNの宝物でもゴールデンボーイ所属だから心の底から自分の選手、ダニエル・ジェイコブスを応援しているのだ。

しかしDAZNにとってはカネロの敗北は損失であり、ジェイコブスの方が捨て駒だ、複雑だ。ボクシングとビジネスはコインの表裏なのだ。

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この記事から改めてファーマーの過去記事を見直すくらい自分も忘れかけていたが、彼はなかなかクールでシリアスです。軽率な暴言はしません。(試合となると罵り合いもするが)

「Never Too Late」

素晴らしいメッセージをありがとうございます。
それを体現しているテビン・ファーマー、伊藤雅雪との対決、犬猿のゲルボンタ・デービスとの対決、その時まで強い王者でいてください。

年6試合はすごいな。

おまけ

ジョノ・キャロル
https://www.youtube.com/watch?v=8Wa6jO73j54

すごいひげマッチョなゴリゴリのファイトをしますがKO率が低いという不思議なファイターです。

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