この試合が最後の日本の世界戦、本当の世界へのテイクオーバー(継承)最終章でいいと私は考えている。
大晦日のボクシングカードは、アメリカの主要なプラットフォームのサポートなしで進行されることになる。
日本人男子ボクサーとしては初めて4階級でタイトルを獲得した井岡一翔は、木曜日の夜、東京・大田区総合体育館で田中恒成との対戦を控えている。この試合は井岡のスーパーフライ級タイトルが争われることになり、日本のTBSやオーストラリアのFox Sports、イギリスのBoxnation、ラテンアメリカのESPNなど、世界中のいくつかの放送局でライブ放送される。
残念ながら、アメリカのボクシングファンは、2020年最後のタイトル戦を生中継で見るために、もう少し知恵を絞らなければならないだろう。
井岡のキャリア9回目の大晦日の登場となるこの試合に間に合うように、イベントの運営者はアメリカ国内での中継を確保するために努力してきた。問題は、米国のプラットフォームからの関心の欠如だけではなく、米国東部標準時の午前4時の開始時間が非現実的であることもあるが、むしろ、イベントを配信するための価格がはるかに潜在的なリターンを超えていることだ。
アメリカでは、YouTubeやソーシャルメディアでライブ配信されない場合、アメリカ国内のファンにとっては、日本から最大98チャンネルを配信しているストリーミングサービ「iSakura」で購入するのが最善の方法となる。初めてのユーザーは3日間のトライアルを購入するオプションがあり、98チャンネルが3.00ドル、48チャンネルが2.50ドルで利用でき、どちらのオプションもTBSを放送している。
井岡と田中は昨年の大晦日にこの会場で同じショーに出演して以来、ともにリングを離れている。井岡(25勝2敗、14KO)は無敵のジェイヴィエール・シントロンの挑戦を振り切り、12ラウンド全会一致の判定勝ちで、昨年6月に千葉で行われたアストン・パリクテの10ラウンドKOで獲得したベルトの初防衛に成功した。
田中(15勝0敗9KO)は、アンダーカードでウラン・トロハツを3ラウンドKOしてフライ級王座の防衛に成功した。この勝利は、2018年9月に木村翔を12ラウンド判定で下してワシル・ロマチェンコに並び、男子ボクサーによる3階級制覇への最速記録を樹立した。
木村への勝利とそれに至るまでの猛烈なペースの12ラウンドは、BoxingScene.comが2018年のファイト・オブ・ザ・イヤーに認定した。木曜日に勝てば、田中はボクシング史上最速の4階級記録制覇達成になり、パウンドフォーパウンドのトップ10入りを果たすことになる。
31歳の井岡は、2011年12月に当時無敗だった挑戦者ヨグドアンCPフレッシュマートを1ラウンドでノックアウトしたのを皮切りに、9回目の大晦日のタイトル戦出場となる。この勝利で、同年にプロ8戦目で獲得したミニマム級王座の2度目の防衛に成功した。
井岡にとって最後のミニマム級王座防衛戦は、2012年6月に八重樫東に全会一致の判定で勝利したことだった。今週の木曜日には、井岡が日本人ボクサーとタイトルマッチを行うのは、キャリアの中で2度目となる。
井岡は大晦日に8勝1敗で、全てのタイトル戦に出場しており、唯一の敗戦は2018年12月にマカオで行われたスーパーフライ級タイトル戦で、ドニー・ニエテスにポイント負けを喫した。田中は年末に3勝0敗で、すべてタイトル戦で、2015年にはミニマム級、2016年にはライトフライ級、昨年はフライ級と、それぞれ別の階級で戦っている。
未だに日本で行われる試合が世界で最も視聴が困難というジレンマ・・・
この国では中継をSNSなどでライブ配信したら罰せられるのだろう。
コロナウィルスのパンデミックが続く現状、2020年は試練のボクシング道だった。このサイトのアクセスも落ちた(ような気がする)が、そんな事はどうでもよく、ただのライフワークと化した。これからも、ボクシングを取り巻く状況は時代の流れに合わせ、変化を続ける必要がある。
長谷川
内山
山中
ら、日本の長期政権王者は偉大で崇高な存在だが、彼らが歩んできた「日本国内限定」という図式はもう通用しなくなった。王座乱立の昨今、いかに本場の世界が遠く、強力で、興行的なメリット(収益)が少ないといえど、ボクサーは世界を、アウェーを目指していくことが宿命だ。
西岡利晃が切り開いた世界への道は、帝拳の後輩に少しづつ受け継がれ、井上尚弥が100%切り開いた。一度は引退した井岡一翔は、庇護された環境を捨て、本場強豪と戦い続けることで己の矜持を示した。可能性を秘めた無敗の岡田博喜は、アメリカ大手と契約したが、本場の洗礼を浴び続けた。伊藤雅雪が実現させた本場でのアップセットは、今や中谷正義が日本人トップを完全に奪った。ライト級は本場にしか真の強豪はおらず、そこで想像以上の結果を出してみせた。
ライトフライ級というどうにもこうにも不人気階級の京口紘人は、試合こそ流してしまったが、YouTubeに活路を見出し、世界大手のマッチルームとの契約を実現させた。日本でチマチマ無名を呼んで防衛を重ねても、人気も知名度も上がらない最軽量級のもがきだ。
新しいボクシング興行のあり方を模索したA-SIGNという興行が一定の成功を収めたらしいが、これも、古い体質のJ●Cではなしえない業績だ。今、何をすればボクサーやファン、関係者が熱が持てるのかを真剣に考え、行動した結果だ。淘汰されるべきものはとっととなるべし。
日本ボクシングの歴史、先人たちに敬意を表しながらも、今の日本人こそが本来あるべきファイターの姿であり、世界王者を名乗るなら、奪うなら、海を越え、世界中のファンに己をアピールし、認めさせ、感動させる必要がある。
もはや、従来の固定観念、TVやマスコミ主導の情報(感動)の押し売りは終わった。
その意味で、大晦日の井岡VS田中は、それぞれにとっても、日本ボクシングにとってもひとつの転換期と言える試合だ。
井岡はファイター人生の最終章を本場の大物、ロマン・ゴンザレスやファン・フランシスコ・エストラーダに絞りたい。彼らと対戦することが最後のやり残しだ。
田中恒成は無敗の世界最速3階級制覇という記録を持つが、世界への露出は皆無。東京での試合もわずかしかないローカル王者に過ぎない。ロマチェンコとは記録は同じでも中身が違う。井岡に代わって主役となり、全ての権利を奪いたい。
これからも、ジムの力、選手の段階、知名度などで、こじんまりした国内世界戦は繰り返されるだろうが、この試合が最後の日本の世界戦、本当の世界へ継承、最終章でいいと
私は考えている。