単なる希望的試合でしかないが、アンカハス擁するMPプロモーションズは、自身の抱えるIBF王者、アンカハスとWBO王者の井岡一翔の統一戦を希望している模様。
アンカハスには3位のジョナサン・ハビエル・ロドリゲスとの試合が予定されており、それを無事クリアすることが条件となる。3月13日にはWBA王者、ローマン・ゴンザレスVSWBC王者ファン・フランシスコ・エストラーダの統一戦が予定されている。その勝者に挑戦権を持つのが元王者、シーサケット・ソー・ルンビサイだ。
個人的なスーパーフライ級の格付けをしてみる。
1位 シーサケット・ソー・ルンビサイ
ゴンザレス、エストラーダを破ったが、エストラーダに再戦で大差負けて今の位置にいる。パワー、タフネスは折り紙付きだが、スキル、フットワークに難があり、ノックアウトしないと勝てないファイターだ。
一度栄華を極めたタイ人は享楽の果てに落ちていくパターンも多く、かつての勢いはないとおもうが、エストラーダに敗れた試合は奇をてらってオーソドックスでファイトした。手遅れ気味にサウスポーに切り替えるとエストラーダはやりにくそうで、何よりそのパワーに押されていた。
シーサケットは元来オーソドックスらしいが、サウスポーでこそ輝く。ノンストップの重戦車のようなファイト、左ボディと右フックの鬼と化して猛アタックした時の彼が一番怖い。恐怖を与えてなんぼのファイターだ。
2位 ジェルウィン・アンカハス
ネクストパッキャオと期待され、アメリカに拠点を移したが、試合にムラがあり相手レベルも上がらず人気も上がらず期待外れ。しかし既に8度(くらい)防衛している。並のランカーとの違いはみせている。
この男の強みもシーサケットと同じく、サウスポーであること、フィジカル、パワーが強いこと。シーサケットと違い、よくスーパーフライを作れるなというほど上背もあり痩せてもいない。ムチムチだ。そして基本に忠実、未だ硬さ、未熟さを感じるが、基礎の軸が強く、優等生的にまだまだ伸びる素材だ。
船井あたりに苦戦したアンカハスなど目じゃないという意見もあったが、苦戦ではなく圧勝だ。身体に宿るパワーが全く違った。誰も、アンカハスをスルーするのは彼がハイリスクローリターンだからである。
3位 ファン・フランシスコ・エストラーダ
キャリア、年齢(まだ30歳)、成熟度では彼がP4P評価通り、この階級のナンバーワンだろう。ゾンビのようなタフなメキシカンスタイルから、職人のごとき万能派に変わった。スタミナ、手数、スキルがあり、とても粘り強く、難攻不落のメキシカンクラシックな領域に達している。
しかし、Sフライでは特筆したパワー型ではなく体格も小さい。この男と技術戦をしたり、同じペースで打ち合いをしてはいけない。スピード差を生かしたり、パワーでプレスし徹底的に潰すような、極端な戦略で挑まねばなかなか攻略できない。万能型でとても総合力、適応力が高い。
シーサケット戦では明らかにフィジカルパワー負けしており、再戦で勝ったのはシーサケットの戦術ミスのせいだ。ただし、エストラーダが現在のこの階級のトップであるという評価と自信は揺るぎない。
4位 井岡一翔
親の庇護から離れてからの数戦のキャリアで完全に見直し、田中とのファイトで揺るぎない評価へと変わった。日本屈指のテクニシャンであり、スケール感はないがボクシングに穴がない。コンパクトに完成されたリングの職人。
田中との試合は100点、完璧だったが、相手がSフライがはじめての田中であり、誰に対してもあのカウンターが炸裂するとは限らない。100点ファイトでもかなり被弾し目を負傷しており、そのままシーサケットやアンカハスにスライドして同じファイトが通用するかは未知数だ。
それでも、もはや、どんな相手とやっても期待を持てる至高の芸術。
5位 ロマン・ゴンザレス
元P4Pナンバーワン、Lフライ時代はエストラーダ得意の打ち合いで凌駕したパーフェクトで特別な存在だった。WBAを戴冠したカリ・ヤファイ戦も内容はよく格の違いをみせつけた。
しかしやはりSフライ級は荷が重い。打ち合い、打たせて相手を凌駕するスタイルなので勤続疲労、ダメージの蓄積、年齢や階級による限界を感じざるを得ない。相変わらず、打たせて、それ以上に打つファイトをしており、眼に輝きがない。
番外 ドニー・ニエテス
上記の中で井岡が勝ち上がることが出来れば、この男がナンバーワンとなる。もう40歳近く、落ちてはいるだろうが、井岡との僅差ファイトでは井岡以上の美しさ、職人的ファイトをみせた。同胞のアンカハスよりは確実に上手く、引き出しの多いリングの職人だが、フィジカル、パワーを抑える事ができるかどうかはわからない。
こんな印象だ。
私の中では本場の巨人、ロマゴンやエストラーダよりもアジアのシーサケットやアンカハスの方が評価が高い。それは、総合力というよりもパワー優位の一点に尽きるのだが、彼ら以外は下から上げてきたSフライという感覚が今なお抜けない。バンタムでも通用しそうな潜在能力という見方をするとこうなってしまう。
技術的には下手で総合力は劣るから、己の強みが生きるファイトに徹底すればの条件付きだ。
Sフライは長きにわたり、ロマゴンやエストラーダが本場の主役だが、彼らと絡むことが金と名声になるからだ。しかし個人的にはアジア人が席巻して欲しいし、出来るとおもっている。