激闘の果ての代価

年末は恒例行事なので、無責任な1ファンとして当たり前のようにボンヤリ観戦させていただきましたが、KO決着も多く、あたり試合が多かったです。この時期に仕上げてくる選手には敬意を表します。

堤VS穴口

年間最高試合もののすごい激闘でしたが、試合後の経過を知り複雑です。
誰も責める事は出来ない。レフリングさえ責める事が出来ない接戦でした。
最終回さえなければ穴口は深刻なダメージを受けることはなかったかもしれないが、採点では勝っているかもしれず「倒して来ます」と言ってラストに向かっていったという。

堤のカットでリングドクターが傷を何度もチェックしていましたが、堤は元気に「全然大丈夫っす。みえてます」と必死に続行をアピール。対する穴口のドクターチェックは十分だったのだろうか?

強いて言えば試合後速やかに担架で退場すべきだったかもしれません。痙攣して立てない穴口にずっと肩を貸していました。残酷ですが4度ダウンで判定負けは確定でしたので結果を聞くまでもなく。

かつてのサブリエル・マティアスVSマキシム・ダダシェフ、あれは中谷VSテオフィモの前座で起こりました。
あの時も最後の1ラウンドが余計だったのだろうが後の祭り。リング禍というのはラウンド数は関係なく起こるそうですが、どうも激闘の後半が危険な印象を受けます。大激闘になったら毎ラウンドのドクターチェックもより厳重にすべきです。選手の受け答えがおかしかったら熱戦でも即中止すべきなのかもしれません。

勝った堤のダメージの方が心配くらいな内容にみえましたが、彼は元気にインタビューに応えていました。

反論覚悟でいうと、穴口も増田も素晴らしい逸材です。未来の世界王者候補と言えるほどの選手です。しかし、3戦、6戦、楽勝ばかりというキャリアで挑むには色々未知数なところがあります。それは技術やセンスではなく経験値というか、耐性というか、試されていない部分の話です。

堤も決して試合数は多くないが、経験値、戦ってきた相手のレベルが違いました。
本当に難しい、悩ましい、心が抉られる試合となりました。

井上VSタパレス

堤VS穴口が影響したのか、ノックアウトで決めてやると言う意識が井上に作用したのかもしれません。その通りにしてしまう力量があるから安心ですが、タパレスは強かったです。ドネア1を除き過去一番の強敵だったとおもいます。パワーが脅威になるレベルだったからです。フルトンはそこが欠けていたので観ていて安心でした。

「タパレスに同情する必要はない。すごいファイトマネーを得た。人生の勝者だ」という記事をみかけたが、彼はシンデレラボーイのごとく井上戦の切符を手にしたが、確かなる実力を示した。今後の彼にも注目したい。ネリやアフマダリエフ、カシメロ、グッドマンらを凌駕する力があるとおもわれるが、いきなり井上戦を手に入れたのでそのベールはまだ謎のままだ。カネロと戦った男たちのようにB面に追いやられてしまうのか、第二の実力者たる姿をみせるのか、少ないファイトマネーでもやる気を見せて復活できるのか・・・

その後、Sバンタム級ランカーを復習してしまいました。やっぱりあと1、2年この階級でやっていくにあたり、相応しい相手がいません。

2024年、ネリ、アフマダリエフ、グッドマンあたりで卒業となるしかなさそうです。無名選手やアリーム、カシメロなど、手ごわい奴もいるとおもいますが、挑戦資格が伴っていません。

堤VSベンチャーラ

冷静に振り返り、この試合が個人的には新鮮で今後の可能性を感じさせた一戦かもしれません。KOにこだわり、見事な形で実現してみせました。

3月に開催される、ホルマトフVSフォードがかなりハイレベルな王座決定戦と言われていますが、そのホルマトフにアマで勝っているほどの堤。本人が言っている通りまだ4戦ですが、今年が勝負の年なのかもしれません。

アマチュアの偉大な実績から、世界王者最有力候補ですが、堤という選手は全く被弾しないスタイルではなく、打ち合いで相手を凌駕していタイプにみえましたので、フォードやオシャキー・フォスターのようなディフェンスとスピードに優れた選手を上回れるかが鍵といえそうです。

井上尚弥の将来的な進出が期待される階級ですし通用はするだろうが、やはり明らかに体格、骨格が違います。

比嘉VSナワポン

比嘉らしい試合でした。こんな試合ばかりしていたら後遺症が心配と試合後に本人が言ってましたが、危険な打ち合いだなぁと心配してしまいました。4回にボディで決着したからよかったけど、長引いたら身体に毒です。ナワポンは頑丈でガンガン頭を殴り合いしていました。

比嘉のスタイルからしてこれが持ち味ですが、ブロッキングなどを徹底し効かされないようにして欲しいものです。いい時の比嘉が復活してきたとはおもいます。

井岡VSペレス

倒す意思を感じた素晴らしい井岡のファイトでした。パワーのある相手にリスクを犯して前に出る戦いでしたが、緻密さ、精度はさすがでした。しかし相手はエストラーダでも中谷でも、指名挑戦者のジョン・ラミレスでもありません。ラミレスあたりにこのファイトが出来ていたら感服しますし出来たんじゃないかとおもいますが、いい相手に恵まれるといいですね。

天才の行方/(Bible of Boxing=ボクシングの教科書)ウィルフレド・ベニテス

多くのファンはファイターが払う犠牲の世界の暗い側面を観ないことを好む。ファンはヒロイズムに支払う代価があることを望んでいない。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で
What’s your Reaction?
最高
最高
12
いいね
いいね
13
ハハハ
ハハハ
1
うーん
うーん
0
がっかり
がっかり
0
最低
最低
0
コメント一覧
  1. アメリカの放送で試合を解説していたジャメル・へリングは堤VS穴口を、負ける気で試合する者などいない、これこそ崇高なリアルファイトだと絶賛していましたが、その果てがこういう結末とは悲しい。

    6
    0
  2. 軽量クリアすればOKだから、試合に至るまでに色々な事情があります。減量でフラフラ、意識も朦朧、脱水症状で救急車搬送とか・・・軽量後に開放されて何キロも戻して試合に臨むけど、それも戻し方間違えると不健康。試合前のコンディションとかもめちゃくちゃ大事なんだよね。

    0
    0
  3. 1ラウンド3ノックダウン制ではなく1試合3ノックダウン制
    導入してみて検証した方がいい。

    2
    4
  4. スペンスVSクロフォード戦も3度目のダウンでレフリーが止めた。スペンスは続行したそうだったが、仕方ないという感じだった。本当に難しいけど、競っているとか関係なく3度もダウンしたらストップでよくないか?勝っていたとしても。そうじゃないとこういう事故は防げない。

    1
    5
  5. 前に細川バレン(堤の先輩)がKー1の武尊に対してボクシング来たらすぐ壊れるだろうけどねとか言ってケラケラ笑ってたが自分の後輩に言ってやれよと思いました。

    5
    0
  6. 1ラウンド3ノックダウン制ではなく、1試合3ノックダウン制にしてはどうか。勝ってる内容であっても3度もダウンするということはもうガクガクに効いているという意味なので。試合後に言っても仕方ないですが。

    6
    11
    • このコメントにアンチが沸いてることが信じられない。
      自分の身内が死なないとわからないのかな?

      4
      5
      • グッドもバッドも押してないけど、1試合3ノックダウン制に反対したら駄目なのか?
        1試合3のノックダウン制にしたとして、可能性としてボクシング離れが進み、ボクサーが稼げなくなるかもよ。だからボクサーも反対するかもよ?

        4
        1
          • でもさ、これで3回ルールにしてもまた事故は起きるでしょ? 確かに確率は減るだろうけど、1回のノックアウトで事故も起きる。その都度ルール改正していったら、アマのようにヘッドギア着用、頭殴るの禁止、とか最終的にはつまらなくなるよ。

            今回の場合、リングドクターが仕事をしなかった。明らかに試合後の穴口選手の足がおかしかったのに、担架も出さなかった。失神後に救急車で運ばれた(だったような)。運営側にも責任がある。講習会のような感じで、ボクサーの危険な症状を教えてれば、ひょっとしたらここまでの事態にならなかったかもしれない。

            素人の意見ですけど。

            7
            2
    • アマは逆にヘッドギアなしになったよ、男子は。
      ヘッドギアやデカいグローブは逆に衝撃を拡大させるという説もあるよ。

      9
      0
        • ググってみた
          情報が正しいかは分からないけど

          ベストアンサー
          wam********さん

          2012/10/14 14:55(編集あり)

          プロ(日本、インドネシア、アメリカなど)の発生頻度とは比較になりませんが、国内、海外ともにあります。

          国内の事例では、2001年10月に九州で起きた事故が有名です。久留米大学(福岡)ボクシング部で、スパーリング中に部員が倒れて病院に搬送されたが、急性硬膜下血腫で意識不明となり翌月14日に死亡。

          2004年3月、北海道ではやはり高校のボクシング部員だった女子生徒が練習中に倒れ、回復はしたものの退院後に重度の視力障害が残る事故が起きている。

          2008年7月、熊本の私立高校でも、1年生の男子部員が練習中に昏倒し病院に緊急搬送。脳挫傷と急性硬膜下血腫で意識不明の重態。

          2009年に鹿児島で行われたインターハイでも、公式戦初出場の2年生の男子生徒が試合後倒れ、急性硬膜下血腫で緊急手術を受けたが、意識不明の状態が2週間以上に渡って続く重大事故が発生。

          4年に1回ぐらいであるみたい

          5
          0
    • アンチが出るのは、見るからにこの事故に対して単純なアンチ考えの一つで、大して考えて無いのが表れているからでは?

      0
      0
コメントを残す

※相手に対し失礼だとおもわれるコメントは削除される場合がございます。

おすすめの記事