彼らのAゲーム/井岡一翔VSアストン・パリクテ

6月19日、井岡一翔VSアストン・パリクテ。日本、TBSという元の鞘に戻って戦う井岡の試合は、民放でマニア以外も気楽に観れるいつもの世界戦だろう。しかしこれまで見慣れた井岡の試合とは趣が違う。権力や父親によって選び抜かれた相手ではない。少なくとも井岡より大きな強打者である。

これが本当の世界タイトルマッチというものだ。

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WBO一位の「マイティ」アストン・パリクテ(25勝21KO2敗1分)は6月19日に千葉幕張メッセで空位の王座をかけて元3階級制覇王者の井岡一翔(23勝13KO2敗)と戦う。現在はフィリピンのハギオでトレーニングしている。

UFC FightPassは日本国外でこの試合を放映する権利を所有しており、この試合はこのネットワークで世界中に配信される初のボクシングの世界戦となる。興行及び配信はRJJボクシングとリーズンタキプロモーションズの共催で行われる。

キース・フェルトル(RJJ Boxing CEO)
「UFC FightPassで初めて放映されるボクシングの世界タイトルマッチです。大変なことだが準備は万端です。火花を散らす熱き戦いになることを約束します。」

ロイ・ジョーンズ
「井岡は堅実なボクサーであり、ヘッドムーブ、フットワークに長けた素晴らしいファイターだ。カウンターも上手い。パリクテは確たる”Aゲーム”を行使せねばならない。パリクテの方がパワー優位だろうが、井岡にパンチを打たさせてはならない。」

パリクテはキャンプ前半をマニラで行った。

パリクテ
「キャンプは充実しています。チームメイトのクリスチャン・ヘルナンデス、アメリカのエルネル・フィンタニラらとセッションしました。今は訳あってハギオに移ってトレーニングしています。」

パリクテ
「ニエテスとの試合で多くを学びました。プレッシャーを受ける中でどうやって落ち着いて集中するのかを教えてくれました。井岡は間違いなくトップコンテンダーです。決して甘く見ていません。私と同様に全てをぶつけてくるでしょう。我々は確固たるゲームプランにのっとって戦う。井岡の3階級制覇の実績については我々にとっては単なる過去、背景にすぎない。」

パリクテが勝てばフィリピンの偉大なる世界王者のリストにその名を刻むことになる。フィリピンの偉大な先輩たちからのアドバイスを受けたパリクテは自信にあふれている。日本で戦うことも気にしていない。

パリクテ
「トレーニングキャンプこそ全ての試合の結果を決める。一生懸命練習に集中しろ、先輩たちのアドバイスはみな共通していました。もちろんアメリカで戦うことが理想でしたが、日本とその文化には最大の敬意を持っていますので、日本での経験を楽しみにしています。」

おもわず紹介したのは、レジェンドのロイ・ジョーンズが井岡についてコメントしていたからです。

"Ioka is a very solid boxer who has good head and foot movementsl.He also counter-punches well.
So, Aston will have to be on his 'A' game. He will have the edge in power, but he can't allow Ioka to make him punch himself out."

これを読むとしっかり井岡を観てパリクテにアドバイスしている。

ボクシングでよく言うAゲームとは、ポーカーで使われる意味と同じで

「自分の能力を100%に近い水準で発揮しながらプレイできている状態のこと」

を意味する。

井岡のスキルに翻弄され、自分のパンチがなかなか当たらずとも集中力を切らさず、事前に立てた戦略を冷静に粘り強く行使せよという意味だとおもいます。まさに、ドニー・ニエテスとの試合に対する反省が込められています。

序盤はパリクテのサイズとパワーに手を焼いて距離の管理とディフェンスに忙しく何もできなかったニエテスだが、パリクテも老獪なニエテスにパンチを当てることができない。中盤から後半はパリクテのリズムやパターンを分析したニエテスが少しづつ有効打を与えていき、ラストは一方的。それでもパリクテに好意的なドローという結果になった。

パリクテのAゲームとはつまり前戦のホセ・マルチネス戦でよくわかる。

パリクテのボクシングは平凡だ。真正面に立ってブロック固めて打ち合うだけ。足もスピードも世界レベルでは平均以下ではないか。しかし大きな体躯から左アッパー、フック、ボディ、そして自慢の右ストレートの打ち下ろしでKOを常に狙っている。村田諒太に近いといえそうだが、フィリピン人らしくアッパーや多彩な左は持っている。そして一発効かせると、とにかく頭のどこかに当てれば倒せるという強打で攻撃の手を強めてくる。故意か偶然か、後頭部や頭頂部ばかりのラビットパンチを連発し相手に深刻なダメージを与えてしまった。

マルチネスのような足を止めた正面からの正攻法の打ち合いは危険だ。

井岡にはパワーがないがスキルとスピード、足がある。決して足を止めて打ち合わないこと、ブロックの上さえもなるべく当てさせないこと。スピード、出入り、タイミング、距離が重要なファクターとなる。自分だけ当てては足を使って逃げる(捌く)ニエテスがみせたようなファイトが必要だろう。

KOは狙わない方がいい。やや木偶の坊でそこに立っているだけのパリクテだからサンドバッグのようにパンチは当たりそうだが、相手のパンチが当たる距離に踏みとどまることはしない方がいい。過去の井岡からしてもKO勝ちは厳しいが、素晴らしいカウンターとタイミングを持っている。KOを狙うならばボディカウンターくらいにとどめておいた方がいい。

村田に対するロブ・ブラントのようなファイト、スピード差を生かしたい。

総合力で井岡が上回ると考えているが、勝つとすれば判定、負けるとすれば壮絶なノックアウトになるのではないか。井岡にはAゲームだけでなくBもCもある。パワーはパリクテだが井岡の方がボクサーとしての引き出し、完成度はずっと上だ。打たせず完勝する井岡の姿が観たい。

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