西アフリカの蜃気楼/アズマー・ネルソンとアイザック・ドグボエ

アフリカのボクシングにはロマンがあります。砂漠の陽炎、蜃気楼のように、幻想的なヒーローが出てくる事をいつの時代も期待してしまうからだろうか。

もっと多い気がするが8人だけである。
それはガーナから誕生した世界王者の数だ。
多くの有望なボクサーが世界戦線に出てきたが、「THE NEW・・・」とコールされた者はたったそれだけである。

もっと多くいる気がするのだが・・・

西アフリカ沿岸のボクシングは世界に神秘的な影響を与えてきた。WBOスーパーバンタム級新王者のアイザック・ドグボエもまた、そんな西アフリカのセンセーションだ。4月にジェシー・マグダレノからタイトルを奪った試合は衝撃的だった。そんな彼は元世界挑戦者の大竹秀典を相手に初防衛戦を迎える。

初回にダウンしながらも11ラウンドにマグダレノをノックアウトしたドグボエを突如現れた西アフリカのセンセーションだとおもわない人はいない。それだけの衝撃を与えた。

人口3000万に満たないガーナは1980年から1990年台に、アズマー・ネルソンというレジェンドを生み出した。

”プロフェッサー”というニックネームのネルソンは1982年にサルバドール・サンチェスに代役として挑戦し大激闘のすえ最終15ラウンドにTKOで敗れた。サンチェスは悲劇的な交通事故にあい、これが最後の試合となった。その激闘は10年間でネルソン唯一の敗北だった。

その2年7か月後にネルソンはWBCフェザー級のベルトをレジェンドの一人、ウィルフレド・ゴメスをKOして獲得し6度防衛し1988年にはスーパーフェザー級で2階級を制覇した。

1990年にライト級のパーネル・ウィテカーに挑むも敗北するとスーパーフェザーに階級を戻し、ジェシー・ジェームス・レイハとの連戦で敗れるまで同階級のトップを走り続けてきた。

ネルソンは時に敗北や引き分けを経験したが、再戦に強かった。ジェフ・フェネックは初戦を引き分けるも再戦でTKOされ、ジェシー・ジェームス・レイハが長いネルソンの統治をついに終わらせるも3戦目にはノックアウされた。

40歳に近づき、ヘナロ・エルナンデスにスプリットで負けてその長いキャリアは遂に終焉を迎えた。

アズマー・ネルソンはガーナの初の世界王者ではない。1975年にデビッド・コティがルーベン・オリバレスに勝ってフェザー級王座を獲得している。しかしネルソンだけが唯一世界ボクシングの殿堂入りを果たした選手である。

長年にわたり、ネルソンの偉業を追随するボクサーがガーナからやってくる。
アイク・クオーティーはオスカー・デラホーヤに惜敗するもウェルター級の驚異的な選手だった。
ジョシュア・クロッティはマニー・パッキャオとペイパービューのメガマッチをやるほどの選手になった。
ジョセフ・アクベコはバンタム級でダルチニアンに勝利するなどの実績を作った。

しかし彼らはネルソンではなかった。
ネルソンの幻影はずっと耐え忍んでいる。

その幻影は悪いものではない。人々に生きる勇気と今の立ち位置を教えてくれる。30年もの間、ガーナのボクサーはネルソンから希望をもらい、彼の成功を追いかけ続けている。

その夢はドグボエが追い求めているものでもある。未だ遠い道のりだが意欲は十分だ。マグダレノに勝ったドグボエは5階級を制覇したいと野望を語った。

157センチしかない男が言った、マジかよ・・・

夢は大きく・・・

今このクラスにはビッグネームがいない。4人の王者の誰もが抜き出ていない今ドグボエが一番若く有望だ。リコンドーは道をはずれている。

アズマー・ネルソンはタイトルを統一したことはなかった。
ドグボエにはダニエル・ローマンとの統一戦の話がある。
統一はガーナのボクシングの歴史、ドグボエの立場にとっても意義のあることだ。

その前に、今週末、ドグボエは大竹を攻略せねばならない。マグダレノ戦と同じくらいエキサイティングなボクシングをすれば、彼は勝ち続け、ファンは増え続けるだろう。

いつの日かガーナに9人目の王者が誕生した時、彼らはドグボエの栄光、幻影を追いかけることになるのかもしれない。

ドグボエの記事だとおもったら、アズマー・ネルソンに話題が移り、ネルソンに目移りしてしまいました。未だアフリカの最高傑作だろう。

https://www.youtube.com/watch?v=LPNa3fdr4m4
https://www.youtube.com/watch?v=bnTpy0Wl9Oo

はじめてサルバドール・サンチェスに挑んだ世界戦は代役だったという。
その後も強い相手とばかり厳しい条件で戦い、勝ち続けてきた。
相手を勝たせたい。ジャッジも常に不利に動く。

晩年はジェシー・ジェームス・レイハやジェフ・フェネクに名を貸すような役目を担わされたが、ピーク時はP4P、最強クラスだったろう。ネルソンも身長は165センチと階級ではかなり小柄だったんだな。

セサール・ファレス戦、ジェシー・マグダレノ戦で魅せたドグボエのボクシングはたしかに衝撃的で、並の選手、普通の王者とは別格な何かを感じさせるものでした。洗練された技巧もパワーVSパワーも真正面から受け止めて打ちのめすような底力、アズマー・ネルソンに通じる地の強さがありました。

この野性味あふれる小男はどこまでネルソンの影を追いかけることができるのでしょうか。大竹に頑張ってもらいたいが、ドグボエに寄せる期待やスケール感は大きいようです。そのクラシカルなフックぶん回しのファイトスタイルはまさにネルソンのようです。

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