![Top of the Fight/中谷正義VSワシル・ロマチェンコ](https://box-p4p.com/wp-content/uploads/2021/04/EuBxToSXcAIpHJS.jpg)
今、ボクシングの世界の頂点で、究極のファイトをしている日本人は、中谷正義という男であることを知れ。
6月26日に米ネバダ州ラスベガスで正式決定。
改めて、ワシル・ロマチェンコというのは、五輪2連覇、世界選手権金メダル数知れず。アマチュア396勝1敗、プロ3戦目で世界王者となり、フェザー級からライト級まで3階級を制した、元P4P(全階級最強)王者である。実績からして長らく、井上尚弥よりも有名、上の評価を得てきた特別な世界王者だ。
コロナ禍でブランクを作り、(怪我もしていたよう)臨んだライト級統一戦で、よもや無敗の若き新人王者のテオフィモ・ロペスに敗れて、4冠統一に失敗。これが復帰戦となる。テオフィモ・ロペスはこの勝利でボクシング界全体のスーパースターにならんとしている。
対する中谷は、そのテオフィモ・ロペスを最も苦しめた男として世界に名を馳せたが、判定負けの事実に一度は引退。しかしこのアジアの実力者を世界が放っておくことはなく、彼らのライバル候補と目されていた強豪のフェリックス・ベルデホとの対戦をぶつけ、引退撤回で再起、それに見事逆転KOで勝利、本場の注目階級、ライト級の台風の目、否、それでも未だ、ダークホース、名脇役の立場を確立したといえる。
日本のトップ、世界的評価は井上尚弥で決まりだが、彼の主戦場は軽量級のバンタム級。もっと金が動き、注目を集める人気階級、激戦区がライト級、つまり、中谷の主戦場、対戦相手の方が遥かにビッグネームなのだ。
昔はライト級、ミドル級、ヘビー級しかなかった。
ライト級の字のごとく、これが歴史ある軽量級なのだ。
その中でも頂点ともいえるワシル・ロマチェンコとの対戦が決定した。
現役にして殿堂入りのファイターだろう。
いわば、かつてのシュガー・レイ・レナード、マイク・タイソン、フロイド・メイウェザーのようなビッグネームに日本人が挑むようなもの。挑むといっても世界タイトルはかかっていない。お互い立場は同じ、ベルトを目指すサバイバルの究極マッチだ。
間違いなく、日本史上、最上級、最難関、最も有名なファイターとの対戦といえる。
[st-card id=79995 ] [st-card id=104591 ]共通の相手、テオフィモ・ロペス戦を比較すると、中谷の方が善戦したと言えるだろう。この試合のロマチェンコはロペスのパワーを警戒し、とにかく手が出なかった。被弾を恐れ、(コンディションもあったのだろうが)終始ビビりなファイトに終始していたようにおもう。それでも多くのロマチェンコ信者は勝利を確信していたようだが、あの内容では敗北を受け入れなくてはならないだろう。
対する中谷は、ロペスの通過点とみなされていたが、東洋からの長身のミステリアスな無敗ボクサーは、ロペスを大いに狂わせ、泣かせた。懐深く、ジャブが強く、接近しても左ボディなどで小柄なロペスを悩ませ続けた。
しかし、ボクシングに三段論法は通じない。
ロペスやベルデホとロマチェンコのスタイルは違う。
多角的、打って打たせない、4次元のスキルのデパートのような引き出しをロマチェンコは持つ。
ここまでの中谷の大暴れと結果を理解しているマニアにしても、ロマチェンコはさすがに厳しいと考えているはずだ。失意の敗北を喫したロマチェンコにとっても、結果を出している中谷以上に相応しい再起の相手はいない。
まだ先なので、実感がないほどにロマチェンコは神格化されているが、現実を踏まえて予想すると
復帰戦で落とせないロマチェンコはこの試合も慎重、神経質なファイトをしてくるだろう。あるいはロペス戦の反省を踏まえてガンガンと手を出すのだろうか。ミスターパーフェクトというべきファイターだが、彼の特徴はやっぱりアマチュア的なタッチゲームであり、速すぎ、強すぎるが故相手がいないが、本来はフェザー級かSフェザー級が適正といえそうな体格、フィジカルである。そこが、唯一の突破口と言わざるをえない。
対する中谷は、ライト級では長身の182センチ、長いリーチに加え、狂暴に打ち合い怯まない。ベルデホ戦でみせたタフネスや精神力も相手には相当厄介だ。これら東洋とは違う試合経験が中谷をさらに成長させている可能性も高い。年齢はたいして変わらない。
それでも、現状ではロマチェンコ有利な実感だ。
中谷はこの小柄なマトリックス相手に空転を余儀なくされるだろう。
ロマチェンコにはもう敗北は許されない。テオフィモ・ロペスより圧倒的に中谷を下すことが唯一のアピール、存在証明となる。
中谷は、ここまでの相手となると、勝敗を超えた次元だと個人的にはおもうが、徹底的な対策と準備をすればひょっとする。
ロペスやベルデホが手を焼いたのは中谷の上手さ、やりにくさ、精神力、そして体格、フィジカルだろう。ロマチェンコにもそれは大いなる壁となって立ちはだかる。適正体重を彼は常々言ってもいた。ライト級を統一したらSフェザーに落とすかもしれない・・・と。
ロマチェンコのファイトはもうわかっている。
速すぎる、上手すぎる。
それを突破する戦略を遂行することが出来れば、中谷はブレイクすることになる。
この試合に世界タイトルはついていない。
しかし、どんな世界戦よりも崇高で険しい、トップ・オブ・ザ・ファイトである。今、ボクシングの世界の頂点で、究極のファイトをしている日本人は、中谷正義という男であることを知れ。