辰吉と天心とイオヌット・バルータと

少し脱線します。井上尚弥のSバンタム級の世界ランカーではあるが、対戦するには足りないレベルのファイターたちの試合の中で興味深い試合がありました。

イオヌット・バルータVSアンドリュー・カイン

イオヌット・バルータ(Ionut Baluta)はルーマニアのプロボクサーで16勝3KO4敗1分の30歳
アンドリュー・カイン(Andrew Cain)はこの試合まで10勝9KOで英国のプロスペクトです。27歳

バルータはアマチュア上がりで戦績が示すように高級カマセ、プロスペクトの踏み台のような立場にいるランカーですが、TJドヘニーに勝利したり、プロスペクトのデビッド・オリバー・ジョイスを破ったり、マイケル・コンランにも0-2と迫る試合を演じてきました。

アップセットが多い、一筋縄ではいかない曲者の実力者です。ただし登竜門的な立場で国籍からもいつも青コーナー、B面の男です。前戦は英国の無敗プロスペクト、リアム・デービスにユナニマス判定で敗れていました。

アンドリュー・カイン(Andrew Cain)は検索して試合をみてもらえばわかりますが、天才肌の動きをみせるトップアマチュア上がり。リバプールのネクストボクシングスターと期待されている選手です。カール・フランプトンあたりは未来の世界王者と太鼓判を押しています。

能力が高く、見切りがいいのでノーガードで変幻自在に動き相手を圧倒してしまうファイトをします。KO率も高くこれぞプロスペクト、世界までいくだろうとおもわせる自信あふれるファイトぶりです。

そんな両者の試合

能力上位で先にペースを掴み、ダウンを奪うカイン、このままKOで押し切りそうですが、タフなキャリアを誇るバルータが激しく抵抗し、勘でよけるカインのディフェンスの穴をつき、後半ダウンを奪い返す。白熱の激戦となりますが、最後までエネルギッシュに対抗したバルータが2-1のアップセットで逆転勝利、WBOのシルバー王座を獲得しました。

この試合にボクシングの醍醐味、奥深さ、全てが含まれている気がします。
先日日本で行われた堤VS穴口のような試合ともいえそうです。

アンドリュー・カインの方が才能があり将来有望にみえますが、ノーガードスタイルの限界を露呈しました。かつての辰吉のようです。

私はアンチ那須川天心らしく、いつもひどく攻撃されますが、アンチではなく大いに関心し期待しています。彼は一目瞭然、格闘技の天才です。ボクシング外で培った規格外のテクニックで世界を制し驚かせて欲しいとおもっています。観た限り、中谷を除くその他のバンタム級トップの日本人や武居選手よりも上にいく才能があるようにみえます。

見切り、勘がいいのでディフェンスに長けています。常人が出来ないタイミングでパンチを出したり避けたりできます。まるでシャクール・スティーブンソンのようなスタイルですが、そこに特化するなら、こういう落とし穴もあるぞという好例としてこの試合を紹介しました。何度か書きましたが、昔の山口圭司(ハメドに憧れすぎた)のようになって欲しくないのです。それでも山口は世界王者に到達した偉大な男ですが。

惜敗したカインは再戦を求めているようで、恐らく英国の力でそれは実現するでしょう。バルータはルーマニアのジャーニーマンだから受けざるを得ないでしょう。英国プロスペクトの踏み台、便利屋と化しています。

どうみても、アンドリュー・カインの方が才能があり、井上尚弥の未来のライバルのように見えますが、この挫折が彼を変えるきっかけになるでしょうか?言い訳すると初回に2度ダウンを奪った右手を負傷し、片手で戦わざるを得なかったそうです。

勝利した雑草ジャーニーマンのバルータはその後も英国の無敗プロスペクトの踏み台として、デニス・マッキャン(14戦全勝8KO)相手に引き分けで王座を死守しています。16勝3KO4敗1分という戦績や国籍から、井上尚弥と戦う位置にまでは来ないとおもいますが、こういう日陰の実力者もいるのです。

TJドヘニーだってバルータやコンランやグッドマンに負け、ジャーニーマンとなり日本人の高級カマセ扱いから逆襲してきました。

日陰の実力者を侮ってはいけない。

みんな目の前の試合をクリアしながら、井上尚弥への憧れと対戦を夢にみていることだろう。

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