1年に3回くらい、どえらい才能を目撃してしまったなというシーンがあるのがこのスポーツの魅力か、昨日の中谷潤人のインパクトは強烈でした。
初回からずっと安心して観られる展開でしたが、比較的静かな中、6回、刹那の一撃でフィニッシュしてしまいました。
今はまだ見返そうとはおもわないが、あれは左ストレートが来ると察してサンチャゴが本能でダッキングしていたように見えましたが、軌道が変わり、打ちおろすようにパンチも下へ、コークスクリューのようにひねりが効いたブローにみえました。
小さな体格ながら階級を上げても無双状態の井上尚弥には、相手がデカくて重いからこそ未知なる怖さはありますが、実績的に名のあるライバルがいないので、これはひょっとして上ではなく下からやってきた同じ日本の中谷潤人が一番の脅威、手ごわい相手かもしれないとおもわせるに十分でした。
身長も骨格もナチュラルな部分では中谷の方が大きいし。Sフライまではガリガリの細身にみえましたが、バンタム級の中谷は筋肉にハリがあり、パワーが漲っているようにも感じました。
しかし、じゃぁ直接対決が観たいかと言われれば今は全く観たくないです。実績、知名度がまだ全然違います。
それぞれが己の道で海外の強豪に勝ち抜いていけばいいとおもっています。特にバンタム級には日本人の強豪も多いので、中谷だけ避けて通るわけにはいきません。
モンスターとネクストモンスター
強さの質が全然違います。
井上は誰が見たって速くて上手くて爆発的で美しい、試合が楽しい、マンガのヒーローのような、究極の理想形のようなスタイルですが、中谷はどちらかというと玄人好みかな。
抜群に速くはみえないし、即効型でもない。フランシスコ・ロドリゲス・ジュニアやアルヒ・コルテスあたりには危なげないものの判定だったり、1試合に1度はヒヤッとするパンチを食ったり、まだまだ世界的にはP4Pの上位に評価されるほどの存在ではないだろう。
しかしその実力はP4Pのトップ10に入るに相応しいものがある。
日本人離れした難解で高度な技術の引き出しがすごい。接近戦にも強く、ロープ、コーナーに追い込まれても巧み。体勢を変えながらアッパーなどもじ込んでくる。ディフェンス意識もメチャ高く打たれないポジショニングも絶妙だ。
いろんなジャブが使え、左ストレートの当て勘も異質だ。モロニー戦もサンチャゴ戦も軌道を微妙に変えてドンピシャねじ込んでいく。まっすぐな左ストレートではないのだ。
若いのにとても狡猾で難解で多芸、過去の日本にいなかった異能のタイプといえる。
どんなスタイルにでも対応できる奥の深いボクシングだが、昨日のサンチャゴ戦のように、自分の強みが最も生かせる距離で、相手をまったく寄せ付けないで圧倒できるならそれが一番だろう。かなりタフで荒っぽいサンチャゴ相手にあれができるなら、同じタイプの相手は敵じゃないだろう。
減量が深刻でないのであれば、バンタム級でこそ少し腰を据えて、長い防衛や統一を目指し、その評価を確固たるものにして欲しい。
井上尚弥は全てに圧倒的に勝ち抜き、当時未知数だった無敗テクニシャンのアメリカ黒人、スティーブン・フルトンを圧倒し評価を不動のものにした。
中谷も可能であれば、そういう本場アメリカの黒人選手とか、みるからに速い、本場で評価の高そうな選手などとやって世界の評価を不動のものにして欲しい。
本当にびっくりしました。
すげぇ
じゃなくて
やべぇ
と感じる日本人の試合を井上尚弥以外で目撃するとはね。
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