野性の証明/比嘉大吾の可能性

早い結末で未だ全貌が把握できないボクサーであるが、ロマゴンマニアであったという彼はむしろ小型タイソンのようという声もきかれる。個人的にも同感だ。彼の今後について無責任に考察。

過去の日本人ボクサーにあまりみられないコンビネーションでフェンテスを下した比嘉。フィニッシュは、左ボディ、左アッパー、右ボディーストレートだった。

基本を重んじる日本人ボクサーはあまり左のダブル、トリプルを打たない。打てない。ワンツースリーフォーと左右交互に打つのが定石だ。しかし比嘉は感性のまま、特に左ダブル、トリプル、それ以上に連射する。

ロマゴンよりはタイソンのようだとおもうのは、全盛期のタイソンは宇宙人のごとき強さだったが、セコンドの指示通りに動いたり、頭脳的に相手を分析するというよりは、感性のおもむくまま、反射神経、身体能力に任せて戦っていたと感じるからだ。

「何が当たって倒れたかもわからない」と言っていたように、比嘉も練習で磨いたコンビネーションが、そのまま出ただけのように感じる。狙って打ったコンビネーションではない気がする。

その後、「右ボディが当たったが、あれで倒れるとはおもっていなかった」と振り返っている。

フィニッシュ以外も、比嘉のボクシングは、受け身ではなく、なんとなく相手の出方がわかったら様子見に時間をかけず、もう普段の練習を信じて、己の感性の赴くままエンジン全開で攻め続けていく。

どんなパンチで、どこを狙うとかでなく、打てば相手に隙ができ、コンビネーションで崩していけば、2発目、3発目、それ以降のパンチが必ず当たる、結果オーライ。

恐らく、タイソンのようなワンパンチフィニシャーではなく、連打型だろう。テンポが早くて、変則的、型にはまらぬ連打を防いでいても、次のパンチが意外なところから出てくる。

フェンテスの食ったボディは、それ自体が強烈というよりは、全く無防備な状態で食ったから効いたのだろう。アッパーで起こされて浮ついたところにさらにあんなパンチが入ったら腹に力なんて入れられない。

ボクシングは科学だとどんなに技術論が進化しても、根本は二本の腕による殴り合い、倒し合い、ルールあるケンカなので、こういう型破れで狂暴で計算できないボクシングというのも、とても魅力的だ。リカルド・ロペスやワシル・ロマチェンコのような極度に完成された様式美と対極をなすものだが、誰をも倒す可能性を秘めた怖さがある。

未だ、比嘉の全貌がわからないと書き続けているのは、いいところばかりで、KOで圧勝ばかりだからだが、

連打やインファイトが封印されて試合が後半になった時や
自身が効いた時、スタミナがきつくなった時
ディフェンス面

このボクシングがどうなってしまうのかが全くわからないからである。トマ・マソンは中盤まで生き延びたがほぼブロックのみで削られており、効果的な攻撃は出来ていなかったので判断できない。

振り返れば、タイソンも、反復練習とセンスによるダッキングとウェービング技術が優れていただけで、華麗なディフェンス技術などなかった。

スポーツ、とりわけボクシングは結果が全てであり、KOはファンを魅了する。であれば、比嘉のようなファイトはとても貴重で、これができるなら一番なのかもしれない。タイソンというよりプライヤーかな。

比嘉の今後だが、スポーツ紙に

年間4試合を予定、次は指名挑戦者、ムハマド・ワシーム、海外進出もいいし、田中恒成とやっても面白い

と書かれていた。
期待させる展望だ。

ワシームはパキスタン発の世界王者を目指す元トップアマ。
わずか8戦で世界1位である。

しかし、韓国プロモーターが金欠で練習環境も含め、悲惨な状況のようだ。
契約問題で揺れている、厳しい立場に置かれた状態。

1位ワシーム
2位アンドリュー・セルビー

どちらもトップアマ、特にセルビーは英国ホープでオリンピアン。アマでメダル多数。環境も潤沢だ。遠い過去にはロマチェンコとも戦っている。

そんな彼らをもう比嘉はノックアウトできるとおもう。
井上尚弥にしてもそうだ。オリンピアンのカリ・ヤファイなどKOできるだろう。

あとは、想像、妄想でなく、実現、結果でそれを証明して欲しいというのがマニアの望みである。アンドリュー・セルビーなどは、非力なので全然怖くないはずだ。そのテクニックを肌で感じつつ、乗り越える事で己の強さも自信も、世界的評価も増す、恰好の相手だ。
彼らを下してSフライに進出するのなら、最高の箔がつくといえる。

https://www.youtube.com/watch?v=zVqg60B84do

https://www.youtube.com/watch?v=Ap81moP2gXA

懐かしい過去記事

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コメント一覧
  1. るろ氏
    距離をとって相手に打たせない、ディフェンスに徹して相手のパンチを避けきるという意味では大したことはないですが、ロマチェンコと同じく攻めながら被弾しないとまではいかなくとも、ゴロのように効かされることなく常に自身の優位を維持しつつどのタイミングのダメージレースでも勝つ、という意味で日本人としては最もリスク管理がしっかりしてるという印象ですね そしてそれに必要十分な技術があってここ数戦のその技術のブラッシュアップが尋常じゃないと感じます
    マ夏氏
    今回の左はあかんかったです パンチ力に関しても前々回については同じ感想だったんですけど、記事にもある通り今回のフィニッシュの右ボディは階級上げても耐えられないと思います タイソンとはパンチの性能は比べるまでもないですが、結局のところアッパーで顎をカチ上げられるならそのフォローはパワーではないかと
    むしろこちらの耐久力が気になりますね あと馬力も
    今回の左は今まであまり見せない間合いに入りかたに会わされたクロスでした 結局すぐ終わったからどういう意図があるのかわかりませんが、比嘉がジャブをどういう意図で増やしてるのか
    タイソンはスリップから相手の腹パンさそってロマチェンコステップで潜り込むときに纏めるジャブで比嘉が果たしてこういう路線を目指しているのか…
    比嘉が潜り込むときにブロックするのかスリップするの…前者なら階級をあげればあっさり壁にぶつかるでしょうが後者ならば…

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  2. るろさん

    無名時代から彼はTV映えする、どんな試合もエキサイティング、はずれなし
    とおもっていましたが、ボクシングは奥が深いので、本当の試練はこれからだとおもっています。

    S.O.Bさん

    他の方の指摘のように、減量や増量は個人差があってなんともいえないです。
    記事にはしませんでしたが、実は昨日、日本で一番のアップセットを演じたのは
    ロシアでのハリケーン風太です。

    バンタムで日本王者になれなかったボクサーですが、ライト級で、すごいKOをしています。
    長谷川は3階級王者になりましたが、バンタムより上ではパワー、耐久力、際どいものでした。
    バンタムの防衛戦では序盤KOばかりでしたのに・・・

    減量は誰もがやってることなので、比嘉に限った事でなく個人差でしょう。

    一瞬のマ夏?さん

    Sフライは今後も続くのか大いに疑問です。
    井上やアンカハス、ヤファイが不参加では、もうシーサケVSエストが最終決戦でしょう。
    そこにビロリアやクアドラスが加わってももうPPVの価値はないのでは?

    比嘉の強さも方向性も大いに賞賛しますが、評価を問うような次元とはまだ別世界だとおもっています。

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  3. 水を差すわけではありませんが、顔面にいいのもらっていましたね。比嘉はこの階級なら強いと思いますが本人が減量苦との事。正直これが理由じゃないのを願います。
    要はかなり厳しい減量をしてのKO量産なのかよく分からないです。長谷川しかり井上しかり。。。本人・周囲から減量苦が漏れ聞こえるのではそのKOが骨格の違いからのものかパンチの力・タイミングのものかはたまた両方か、、、。自分よりはるかにデカい相手に恐怖を与えていたタイソンとは比べられません。
    とは言え160センチしかない比嘉が今後アジャストするのはSフライ~バンタム。願わくばSフライが盛り上がっている間に上がってもらいたいです。ビロリア辺りには苦しまず勝って欲しいし個人的にはアローヨとどんな戦いをするのか見たいです。

    階級を上げるのがますます当たり前になってきていますが、私は辰吉(Sバンタムにあげてはいますが)や山中のKOと今回の比嘉のKOがまだ同じようには見えないでいます。
    でも比嘉が勝って良かった。井上・田中・比嘉などにはどんどん試合をして場数を踏んで欲しいです。

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  4. 比嘉は世界戦前の1,2戦は、KOはしたものの内容は褒めれるものではなかった。
    しかし世界戦の3戦は本能かも知れないが、利にかなったボクシングをしているように見えます。
    ああ見えて学習能力は高いように感じます。

    ディフェンスに「?」はあるでしょうが、井上尚弥と何回かスパーをしている男です。つまり、練習では劣勢になっているのです。

    現在の最大の敵は減量でしょう。そこが上手くいかないと全て崩れてしまう危険はあるでしょう。

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  5. 管理人様とほぼ同意見です。
    私は比嘉の野性味あふれるファイトが大好きです。ボクシングはこうでなくては。
    まだまだ試されてない部分があり、ディフェンスもザル、パンチもそこそこ貰うし現時点では評価低いとのたまっているボクシングファンがまだまだ大勢いるように思うのですが
    比嘉の場合はそうではない。

    パンチは貰うが、それを補ってあまりある野生感。結果が全て。そう思わせてくれるボクシングです。

    私の中ではすでに井上と双璧の存在です。
    田中や田口とやっても、そこそこ良い勝負にはなるかもしれないが比嘉が勝つと思う。
    これからに期待です。ワシームやセルビーなどの世界ランカーなど比嘉にとってはカモでしかないでしょう

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  6. スロースターターにはたまったものじゃないので
    今後対策されるでしょう。

    それを乗り越えた時、さらに強くなるでしょう。

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  7. 何と言ってもアッパー。これを効果的に使えるのがいい。
    日本人ボクサーはリスクを恐れてほとんど使うことすらしない。

    上下の打ち分けを必ず意識しているのと同じように
    あらゆるパンチを散らせばKOしやすくなるという点では良いお手本だと思いますね。
    引退した三浦なんかがアッパーを使いこなせてたら違うレベルに行けてたのかも。

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  8. いつもうんうん頷いて拝見してます。
    特に日本人絡みの記事では毎回。
    更新大変だと思いますが毎度楽しみにしています。
    これからも頑張ってください。

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  9. マラビジャさん

    迷わず自在なコンビネーションが打てるのがすごいですね。
    ほとんどの日本人ボクサーはワンツーボクシングなので。

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  10. 村田さんが解説で印象的な事いってたのを思い出しました。
    「練習したことが出せているのがすごい、いくら練習しても試合で出せるなんてなかなか無い」
    沁みる言葉でした。金メダリストでもそんな風に思うのだなと。
    そんな中、練習通りのコンビをスムーズに打って倒した比嘉はおそるべしだなと。
    コメントされていた方同様の考えですがタイソンぽい野生を兼ね備えてますね。。
    洗練されたハイテクボクシングもいいんですが、こういう感じのファイトもいいなと改めて思いました。セルビーだったら逃げそうな気がしますw
    戦い方違いますが海外ではカスターニョも野性味を感じて応援するファイターで見ていて気持ちいいですね。

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