
ムロジョン・アフマダリエフがもう来日したらしい。対策も練習も決意も万全だろうが、残り三週間はどこで、誰と調整するんだろう?激しいスパーとかはやらないにしても、仮想井上的なパートナーは?
「キャリア最大の強敵」
結果論で言えばそうかもしれない、そうでなければ、年老いたノニト・ドネアか、蓋を開けたら圧勝だったスティーブン・フルトン、はたまた無名のラモン・カルデナスが「キャリア最大の強敵」だったことになってしまう。
ムロジョン・アフマダリエフは井上がバンタム級だった頃にスティーブン・フルトンと4つの王座の2つを分け合ってた無敗の統一王者でした。
フルトンと違うのは、パワフルなKO型のサウスポーで、2人が対戦すればスキルでフルトンともパワーでアフマダリエフとも言われましたが、ややフルトンに分があったかとおもわれます。共通の相手、ダニエル・ローマン戦などを観れば明らかです。しかし井上の対戦相手としては、一発のあるアフマダリエフの方がリスクがあって面白そうだとおもっていました。
しかし国柄か試合が少なく、防衛戦では結構苦戦や怪我も多く、怪我明け、ブランク明けのマーロン・タパレス戦でまさかの陥落、無敗記録とベルトと井上戦を逃してどん底に落ちました。そこから名誉回復、井上とのビッグマネーファイトがやりたくて数々の挑発をしてきましたが、来日してみればものすごく紳士。元々礼儀正しい紳士なのはなんとなくわかっていましたが、心の奥底では挑発していた時の発言が本音でしょう。
アマ、プロ通じて自分に絶対の自信がある、特にパワーに関してはかつてのビッグ・ダルチニアンくらい自信がありそうです。
冷静に過去試合を観ると、井上にとって脅威ではない、事故的なものを除けば問題なく勝てると信じていますが、アフマダリエフの強さは分析しきれないところがあります。
タパレスに負けた試合はエンジンのかかりが遅く、序盤全部ポイントを取られたのが原因で後半の戦い方であればタパレスを下していただろう。タパレスの速さに苦労していたのも事実で、捕まえることができず終始追手にまわっていました。スピード系に弱いのは確実だろう。
引退した岩佐亮佑に対しては間違いなく過去最強の相手だったようにみえる。ストップが早かったが、「強くてめちゃくちゃパワーがあった」と負けを認めていました。この試合岩佐の入りもよかったですが、アフマダリエフの上手さとパワーに徐々に削られていきジリ貧になってしまいました。
強い時のアフマダリエフは支配的だしパンチが強そう、痛そうというのは観ていても伝わってきます。アウトボクシングの駆け引きも上手いです。しかし結局はプレスと近距離でのパワーが武器のようで、距離があると厳しそうに見えます。
実際アマチュアでもスピード系に苦戦して金の頂には届かない印象があります。(準決勝でロベイシ・ラミレスに敗退、ロベイシには2度負け、マイケル・コンランにも負け、ちょいちょい負けています。)
個人的に井上尚弥に期待するのはスティーブン・フルトン戦のように戦うことです。
スピードのあるテクニシャンとがっつりそこで勝負して全て上回り、ペースを完全に支配してから劇的に仕留めた、完璧な内容でした。
アフマダリエフにスピードはあまり感じませんが、対峙した者はスピードがあったと言いますし、歴戦のトップアマチュアだし井上対策も万全、過去最高のコンディションで仕上げてくるだろう、なのでがっつりスキル勝負で、慎重、丁寧にボクシング勝負し、試合のペースを完全に掌握してから仕留めに行く、あるいはシャットアウトしてしまう。
ルイス・ネリ戦やラモン・カルデナス戦のように序盤から倒しにいくようなアグレッシブは今回は必要ないとおもいます。
それでも、井上が井上たる理由は試合がとてもエキサイティングで序盤からエンジン全開、強いパンチをかまして相手に畏怖の念を与えるという姿もみてきたので、一発効かせたら爆発するだろう。
アフマダリエフはいかにもマッチョで首も太く、プロでダウンシーンは記憶にないので、打たれ強そうな印象もありますが、苦しい時は結構わかる、顔、態度に出るような気がします。一番苦しそうにみえたのはダニー・ローマン戦のボディです。
まだ、井上尚弥がバンタム級で何も証明していなかったWBSSの初戦、ファン・カルロス・パヤノ戦
あれは痺れるような探り合いから始まりました。そこでのタイミングをずらした右一閃、ファーストパンチのような一撃で決まってしまった試合でしたが、あれが私にとっては井上尚弥の最高傑作です。
ああいう一撃の再現が見られたら最高です。
ムロジョンは”観る”選手なのでああいう探り合い、タイミングがあるのです。
いずれにせよ、ムロジョン・アフマダリエフが「キャリア最大の強敵」かどうかはわかりませんが、過去に戦ってきたサウスポーの上位互換、フィジカルもパワーもスキルも一番あるサウスポーであることは間違いありません。
過去の両者の試合を観れば井上尚弥の圧勝が予想されますが、最近の井上は危ないシーンも見せています。井上のタスクとしてはエキサイティングな試合をすることよりも「被弾しないこと」が重要です。
どんな勝ち方をするのか、あるいは公言通りの判定決着、おもわぬ大苦戦をするのか
で現在の実力が図れ、次こそ「キャリア最大の強敵」といえる中谷潤人戦が占えるとおもっています。
中谷潤人はまだまだ伸びるばかり
32歳の井上尚弥はどうなんだ?
という懸念はあります。
「キャリア最大の強敵」ムロジョン・アフマダリエフ戦はとても興味深いですが、次といわれるアラン・ピカソ戦はいらない、ガス抜きか・・・
ここで立ち止まれない、苦戦も許されない、しかし「キャリア最大の強敵」ムロジョンの人生を賭けた試合がまもなくです・・・





