ヘビー級は特に王者が絶対的とはいえない。アマの金メダル含めて、運や環境がよかった者が上にいるだけ、アメリカや英国で地位を築き、金になる者だけが王者になれるような気がする。
ヘビー級プロスペクトのフランク・サンチェス(15勝11KO)は今月初め、ベテランのジョーイ・ドウェッコを10ラウンドに渡り圧倒した。この試合はプレミア・ボクシング・チャンピオンズ・オン・フォックスのトリプルヘッダーの開幕となり、メインではロバート・ヘレニウスが無敗のアダム・コウナッキを逆転ノックアウトした。
さらに、メインの前座では、ヘビー級プロスペクトの一角、エフェ・アジャグバ(13勝11KO)が9ラウンドでラズバン・コジャヌをストップした。ナイジェリアのノックアウトアーティストは2人を除いて全てをノックアウトしている。
サンチェス
「アジャグバはハードヒッターだけど、多かれ少なかれ、ワントリックポニー(一つしか才能[能力]のない人)であり、これまでの試合で関心したものはない。彼とだったら今すぐにでも戦いたい。アジャグバはデオンティ・ワイルダーに似ている。右のパワーに頼りすぎだ。私のようにリングで動き回る、スピードのあるファイターと戦えば欠点が露呈するよ。」サンチェスもアジャグバもPBCで売り出し中で、2019年には4勝3KOしている。
タイソン・フューリーが最長在位王者でほぼパーフェクトレコードのワイルダーを破ってもP4Pの声すらかからなかったのは、ヘビー級が一部の人材に偏り、全体としてハイレベルとはいえないからという寸評があったが同感だ。
しかしそろそろ、新しい世代が台頭しつつある。
英国のダニエル・デュボアVSジョー・ジョイスは(延期となったが)タイトルマッチといってもおかしくないレベルの試合だ。そんな彼らもサバイバルを勝ち抜いていかないとエリート集団には入れてもらえない。
五輪組として一番ムードのあるエフェ・アジャグバは結果こそ出しているが、最近は対戦相手のレベルが上がり、様々なことがわかってきた。雑魚には恐怖の圧倒ノックアウト、最近の4戦
ラズバン・コジャヌ
イアゴ・キラゼ
アリ・エレン・デミレゼン
ミハエル・ワリッシュ
みな無名の強豪ではあるが王者クラスではない。彼らに手こずりダウンも経験した。アジャグバは意外と打たれ強いのか、打たれても打ち返す強気な面がありエキサイティングだが、サンチェスの言うようにボクシングが単調だ。ナイジェリアの天然素材で、アマボクシングのキャリアが豊富というわけではないので仕方がないかもしれないが、上手さだけなら他のプロスペクトに譲る。
キューバボクシングが緩やかに緩和しつつあるのか、このサンチェスだけでなく、キューバンファイターのプロ化が目立つ。キューバのヘビー級はルイス・オルティスだけではない。オルティス自身、高齢だしそこまでトップを極めたアマチュアではない。
ペドロ・ディアス
「オリンピックボクシングのベストコーチであり教授でもあったアルシデス・サガラと共に何年も彼と一緒に仕事しました。フェリックス・サボンは私がみてきた中で最もヘビーパンチャーでした。彼のパワー、特に右の破壊力は信じられないようなものでした。」
テオフィロ・ステベンソンやフェリックス・サボンはモハメド・アリやマイク・タイソンよりも偉大なアマの巨人だった。
キューバ初のプロのヘビー級王者というのが国民の密やかな悲願だろう。
フランク・サンチェスを調べると、エリス・ランディ・サボンにも勝っているのに、アマで国内に天敵がおり、リネール・ペロという選手に4戦4敗している。リネール・ペロもプロになっているが未だ3勝1KO,リオではプロスペクトのフィリップ・フルゴビッチに負けている。こちらはアルゼンチン在住らしいので厳しいかな。
2人とも、193センチ程度と巨人サイズではないので、今のヘビー級でどこまでいけるかわからないが、ヘビー級は特に王者が絶対的とはいえない。アマの金メダル含めて、運や環境がよかった者が上にいるだけ、アメリカや英国で地位を築き、金になる者だけが王者になれるような気がする。
キューバ人がそこに辿り着けるだろうか。