情緒的な英文は難しくてつたない訳ですが、マクドネルの戦術が垣間見える内容・・・かもしれません。
CG映画で怪物に遭遇した役者は、ありきたりには大げさに怖がって逃げ回る演技をします。
ジェイミー・マクドネルは役者ではないし、金曜日に井上尚弥という怪物と戦う。これは映画ではない。32歳の英国人は世界中で最も畏怖されているファイターとの対決のために日本へ6000マイルの旅をした。
重要なのはマクドネルはこの試合を躊躇せずに受け入れた事です。
ドバイでのトレーニングを終了し、週末に日本に到着したマクドネル
マクドネル
「この試合は最高の私を引き出します。普通の試合とは違います。これまでで最も厳しいトレーニングキャンプでしたが、完璧にこなしてきました。井上尚弥に勝てない言い訳がありません。今日(火曜日)井上と対面しました。特に顔を合わせることはなかったですが、報道とメディカルチェック的な場でした。井上尚弥に対し世間は少し大げさであると感じました。彼は強打者ですが階級を上げても同じように通用するとは限りません。私は大きなバンタム級です。それでも井上は対抗してくるだろうが、私はそれを上手く対処して、自分のボクシングが出来ると確信しています。」
マクドネルは英国の有名なトレーナー、デイブ・コールドウェルの訓練を受けた本物のファイターです。コールドウェルは最近ではデビッド・ヘイを2度下したトニー・ベリューを指導しました。彼は「日出づる国」で結果をもたらすことを確信しました。
コールドウェル
「ジェイミーが10年間無敗であることを皆忘れている。彼は以前、不利な試合を勝ち抜いてきました。フリオ・セハ、亀田和毅・・・試合前は彼らがジェイミーに勝つと言われていました。彼のいい所は、予想を裏切ることです。戦いは戦いであり、ジェイミーは自分がすべき事に焦点を当てています。ジェイミーは今素晴らしい舞台にいます。井上がどんなファイターかはわかっています。彼は「モンスター」です。全てを倒すP4Pレベルのファイターです。誰もが彼と対峙すると恐れます。しかし恐れているファイターと勝つ気でいるファイターとでは大きな違いがあります。ジェイミーは勝つ気でいるファイターです。」
具体的に井上にどう勝つのかという戦術は明らかにしませんでしたが、コールドウェルは数か月にわたって井上を分析し、勝てる戦術をいくつか見出しました。
コールドウェル
「井上は相手を鋭く追い詰めます。追い詰められた相手はバランスを崩しそこで仕留められます。ジェイミーは体格を生かします。井上のようなファイターから逃げることはできません。正しいステップワークを使い、バランスを保ち、正確なタイミングで打ち返します。ジェイミーのインサイドでのディフェンスは皆がおもっているよりはるかに優れています。亀田との試合を思い出してください。ほんのわずかなヘッドスリップでパンチをかわします。これが重要な点です。ショートカウンターがポイントです。ミスはできません。穴を与えてはなりません。井上は4ラウンドか5ラウンドまでには襲い掛かってくるでしょうが、ジェイミーが大きなダメージなくそのラウンドをやり過ごすことが出来、小さなカウンターを当てていいけば(ジェイミーの後半逆転という)ドラマチックな展開がみられるでしょう。」
直近の2試合では元スーパーフライ級王者のリボリオ・ソリス相手に2度サバイバルしました。ソリスは井上よりも小さなファイターでしたが、引き分け以上の熱戦を展開することができました。
ソリスにここまでの試合が出来て井上に出来ないはずはないのではないか?
マクドネル
「ソリスは強かったけど少しオーバーペースでした。すごい執念でしたが私の気持ちはそこにありませんでした。今回の試合は気持ちが入っています。井上というベストとの戦いではソリス戦のそれとはモチベーションが全く異なります。私が望んだ戦いです。亀田もセハも未来のスターと言われていました。今、井上がそのように言われています。私は常にそのような試合を乗り越えてきました。この試合も私を飛躍させるステップです。キャンプでやり残したことは何もありません。110%を注いてこの試合に臨みます。」
マクドネルは「モンスター」など信じていない。自分自身だけを信じている。
ニュアンス訳になってしまいましたが、要するに
体格を生かし、バランス重視
井上の強襲や猛攻には細心の注意を払ってブロックや小さなヘッドスリップでかわし、コツコツ小さなカウンターを合わせていく
井上は序盤速攻型なのでダメージを最小限に抑え、中盤から後半勝負
体格を生かすのが距離のことなのか、プレスのことなのかわかりませんが
わりと丁寧でコンパクトなファイトを心がけているようです。
過去映像でもそうでしたが、大柄でリーチも長いが接近戦でのショートコンビでコツコツ打開していくスタイルです。
井上の狂暴なパンチをブロックしてノーダメージで中盤、後半勝負を狙っているのでしょう。
体格を生かす、自分を信じるというのは、井上の強襲を食らってもバランスを崩さない、モロに被弾はしない、それなら耐えられるはずと考えているのでしょう。単純なパワーだけならセハもあったはず。
ジョセフ・ディアスがラッセルjrにやったように
バドゥ・ジャックがスティーブンソンにやったような作戦でしょう。恐らく。
たぶん、いつものマクドネルより慎重でガードが固い序盤でしょう。
己の戦術を遂行するため、たとえ計量をクリアしたとしても、試合当日のリバウンド幅は大きいでしょう。
壁のようなフィジカルで耐えて逆転勝利を狙っているな
と想像できるインタビューでした。
井上の映像をみれば、序盤の強襲がすさまじいのはすぐわかるので、こういう戦術になるのは無理もないが、井上本人、大橋陣営はそれも想定内、ボクシングの非情さをみせつけてくれ。