米国のボクシング事情はよくわかりませんが、王者になったくらいでは人生は変わらない、人々から尊厳は得られないのかもしれません。前記事にも書いたが
ボクシングで大事なことはキャリア全体が最後にどのような意味を持つかだ。
この記事を読んで、統一戦は口ばかりで軽めな試合が多く、ついにはロシア決戦せずにスーパーミドル級に下げようかとしているドミトリー・ビボル(本来好きだが)よりもジョー・スミスJrを応援したい気持ちになりました。オッズは不利でしょうが、スミス自身もまだ底知れぬ魅力があるはずです。わかりにくいがハードパンチャーでもあります。
ジョー・スミスJrはボクシング界で自分がどのようにおもわれているか知っている。彼は2016年12月17日に殿堂入りファイターのバーナード・ホプキンスに勝ってその名を知らしめた。しかしそんな彼は今でもロングアイランドの労働組合の会員であり、ブルーカラーの肉体労働者だ。コンクリートを注ぎ、溝を掘り、施設を建て、浄化槽を掃除し、壁を倒すなどの雑務に従事している。夕方6時にジムに向かう前に1日8~10時間肉体労働に従事している。
それは過酷なスケジュールで、特別な事情があれば仕事を減らす。平凡なファイターは時には仕事を休んででもやらねばならぬ事がある。WBAライトヘビー級王者のドミトリー・ビボルに挑戦するスミスはいわゆるアンダードッグだ。
スミス
「毎日が地獄さ。こんな過酷な状況からはできることなら早く離れたい。この苦痛から逃れることが俺のモチベーションだ。誰もこの安全ヘルメットをかぶった男を打ち負かせやしない。ボクシングを始めて以来、俺はここで何をやっているんだと考えない日はないよ。でもこの仕事がボクシングに役に立つこともわかっている。この仕事抜きで何者かになれるなんて考えていない。」ジョー・スミスに賭けるならあなたは儲かるだろう。スミスも過去のホプキンス戦で得た40万ドル以上のギャラを手にするだろう。
スミス
「少しだけ、この仕事(建設業)を辞めることも考えた。でもそれじゃ俺じゃない、俺が俺でなくなる。」スミスはかつてアンドルー・フォンファラを初回KOしてはじめて15万ドルという大金を手にした。
スミス
「ボクシングほどクレイジーなゲームはない。何か月も戦わないで飯が食える?誰が給料を払うんだ?どうやって家族を養っていくんだ?俺は全てを変えようなんておもわない。建設の仕事は俺を俺たらしめてくれるんだ。何かを変えて壊す必要なんてない。」スミスのプロキャリアの2敗にはある事情もある。
振返ってみると、ホプキンス戦のアップセットは驚くべきことではなかったのかもしれない。ホプキンスはこの試合で勝とうが負けようが引き分けようが最後の試合だと誓っていたが、リング外にたたき出されて終わるという結末は想定外だった。確かに負けはしたが、伝説の王者にとって明確な敗北ではなかった。
スミスの初防衛戦、スリバン・バレラに対し、初回にバレラをダウンさせたが、その後逆転を許し判定負けをした。そしてすぐに元の労働者に戻った。しかしスミスはこの試合で2回にアゴを骨折しており手術が必要だった。2010年にエディ・カミネロに4回KO負けした時もアゴの骨を折り、これが2度目の骨折、スミスの2つの敗北はいずれもアゴの骨折があった。
復帰以来、スミスは1度だけ戦った。昨年6月にベテランのジャーニーマン、メルヴィン・ラッセルを初回で倒した。この試合の勝利はビボルとの試合を後押しするには足りないものだが、彼の実績が評価されて対戦合意に至った。当初はIBF王者のアルツール・ベテルビエフと対戦する予定だったが、ベテルビエフの契約問題でこじれ、対戦者を探していたビボルの相手に抜擢された。
ジョー・デカーディア(スミスのプロモーター)
「ジョーは世界挑戦を待っていた。彼はチャンスを最大限に利用してきた。フォンフォラに対しても、ホプキンスに対しても。ビボルに対しても同様にうまくやってくれると信じている。」映画「シンデレラマン」のジェームス・J・ブラドックの大番狂わせのように、「ザ・ファイター」のミッキー・ウォードのように、スミスがビボルを下すならばそれら映画に匹敵する感動を呼び起こすだろう。
しかし、スミスはラッキーパンチでフォンフォラを倒し、ホプキンスに勝ったのも正当なやり方ではないと批判する者がいる。
スミス
「ホプキンスは俺を危険な相手だとはおもっていなかった。でも俺は彼のビデオを何度もチェックして脅威ではないと確信していたんだ。ライトヘビー級ではちょっとスリックなだけでパワーがない。プレッシャーをかけ続けて彼を潰そうとしてその通り実行したんだ。」対するホプキンスもスミスの意見に同意する。老化による体力低下をごまかすために引きすぎた事を認めている。
ホプキンス
「スミスは全力で成すべき事をした。でも老人(俺)のせいでもあるな。俺が若ければスミスを打ち負かしていただろう。でも俺はあの試合を後悔してはいない。長く戦いすぎた。認めるよ。スミスはとてもタフガイだ。でもビボルはもっと若くてスキルがある。スミスはビボルのレベルにない。でもスミスにはパワーがある。ノックアウトのチャンスがある。スミスが勝つにはビボルをノックアウトするしかないね。」スミスのファイトは昼間の建設業の仕事に似ている。ハンマーを使ってビルや壁を破壊する。同様の事をビボルに対してもやらねばならない。パワーは何物にも変えがたい武器で全てを覆すことが可能だ。スミスは事前予想やファンの声に耳を傾けていない。
上手くいかなくても、スミスには決して逃げ出さなかった労働組合というセイフティーネットもある。
難しい英語でほぼニュアンス訳となりました。
ジョー・スミスJr、伝説のホプキンスを引退させた男だが試合の印象は薄い、ハードパンチャーという印象も薄い。端正なマスクで髪型が違うだけで別人のようにみえ、怪物ボクサーのそれと違うし名前も平凡だから覚えにくいのだろう。
しかし振り返ると
24勝20KO2敗
バレラにも初回いきなりダウンを奪ったりホプキンスを押しつぶしたのもパワーゆえだろう。
そして2敗はいずれもアゴの骨折があったという。
ビボルの前はベテルビエフともやる気だったスミス、全ての印象が弱いと感じるファイターだったが改めて注目し応援してみよう。ホプキンスの言うように拳をハンマーに変えてビボルを破壊するしか活路はなさそうだが・・・
フォンフォラ戦で15万ドル
ホプキンス戦で40万ドル
全てが自分の懐に入るわけではないけど・・・
ここでは書かなかったが建設業のギャラもかなりいいように感じた。
伝説のホプキンスを下した元世界王者の肩書
成功、金持ちとはいえないまでも、それだけあれば、普段の生活や、何かをはじめるには十分だとおもうのだが、アメリカは違うんだろうかね。