復讐するは我にあり/粟生隆寛

3月1日、山中VSネリの前座の8回戦で復帰戦を行うという粟生。33歳、間もなく34歳のもうベテランだ。2015年5月1日、レイムンド・ベルトランとの悪夢の試合(2ラウンドKO負けだが、ベルトランに体重超過とドーピングでNC扱い)から約3年ぶりの復帰となる。

相手はそもそもが悪夢のはじまりといえた、王座を奪われたガマリエル・ディアス。粟生の仇打ちでディアスをボコボコに倒しベルトを引き継いだのが三浦隆司だった。その三浦ももう引退。

長谷川、三浦、内山、下田らが続々と引退する中、それを保留して復帰するのは立派な事だ。大歓迎だ。山中がネリにあんな結果じゃ辞められないというのと同じかそれ以上に、ベルトランにあんな結末では終わりに出来ない。

粟生は元2階級王者だが、五輪メダリストでもあるビダリ・タイベルトをも技術で下す試合をしたかとおもえば、格下ランカーに大苦戦したり試合にムラがある。ディアス戦も強打のターサクに完勝し一皮向けたと感じた矢先の失態だった。

よく粟生の試合はつまらないという声を聞くが、個人的にはつまらなくはない。日本人離れした先を読むディフェンスと、実はかなりの耐久力を持っており、センスは長谷川以上と感じる。ライト級に上げてからは積極性も増し、リスクをとった倒すスタイルにも変化していた。まだ発揮された試合は少ないけれどトップアマの黒人的天才ボクシングだ。

しかし、センスだけでは結果は出なかった。
ドーピングとはいえベルトランには完璧にKOされた。
パワー差が顕著であった。
センスある見切りも通用せず潰された。
もう、ベテランであるし、反射神経に頼る過去と同じスタイルでは未来はないだろう。

そして対戦相手のガマリエル・ディアス

こっちの方こそ、よく引退してないな、もっと驚くべき事実だ。まもなく37歳。粟生に勝って念願の王者になるもやはりその器ではなかった。初防衛戦で三浦にボコられ、後はカマセ街道。粟生戦後2勝9敗1分粟生と違うのはコンスタントに試合をしており、役目は踏み台だが、だからこそかなり強い選手と戦い続けている。尾川と戦ったテビン・ファーマーとも試合をしており、ユナニマスだが一人は95-92とつけている。パワーがないと簡単には倒れないしぶとさだけはまだ残しているようだ。

負けても強い相手と戦い続けているディアスと3年ぶりに実戦の粟生、どちらが有利といえようか?

この試合は因縁の相手ではあるが、相手どうこうよりも3年ぶりに粟生が復帰する事だけが焦点だ。初戦では粟生はなぜかディアスの右を面白いように食っていた。同じ展開にはならないだろう。なってはいけない。

粟生のボクシングは若さに裏付けされた勘やスピードが頼りなので、加齢は厳しいが、経験と熟練の技巧にも磨きがかかったはずだ。どういう動きをすれば効率よく倒せるか・・・

今や帝拳ジムでも古豪となった粟生、尾川がファーマーに勝った立役者でもあったとおもう。今までは、メインを張れない、泣き虫の弟分キャラのようだったけれど、大人なボクシングと威厳を持って逞しく復帰する姿をみてみたい。もう兄貴はそこにいない。

憎きベルトランは、2月16日にはWBOタイトルマッチである。相手はパウルス・モーゼス。これまたベテラン同士の決定戦だが、恐らくベルトランが勝つだろう。粟生戦後も体重や薬が疑わしいくらい屈強なパワーファイトを続けている。

いつか、ベルトランに仇を・・・その時まで。

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