
最近はもうマニア引退真近となっているので、試合でエキサイティングすることはない。冷静に確認作業として観る感じになってきた。昨晩一番驚いたのは、拓真でも天心でもなく・・・坪井智也でした。
坪井智也VSカルロス・クアドラス
クアドラスが高齢で落ち目かといえば、ある程度はそうだったかもしれないが、キビキビして動きはよく往年の実力の片りんはみれたとおもう。そんなクアドラスと同様に背が低くキビキビしたスタイルが特徴の坪井は、互いが得意な距離でよく噛み合ってテンポよく打ち合っているようにみえたが、精密度や余裕が全く違い、接戦のようにみえて細かく観るとクアドラスを全局面で圧倒していました。
クアドラスはSフライでは総合力が高くパンチも弱い方ではなかったし天才肌でしたが、そんなクアドラスのすべてを見切って冷静に、簡単に対処していました。外して打つことも出来るし、クアドラス程度のパンチなら全部ブロックしてから自分の作業を遂行することも出来る、まるでスパーリングをしているかのような余裕、相手に胸を貸しているような全能感がありました。
坪井智也は井上尚弥のようなパンチャーではないし、トップアマとしてのプライドと自信が高いので、KOなんて狙わない、気にしない等・・・発言や態度に違和感を抱くこともありますが、大変な完成度で、これはごく一部の特別な存在にしか出来ないボクシングです。
一発はないが相手を無効化してしまうワシル・ロマチェンコみたいな全能感をまとっていました。
世界一位を圧倒したのでもう世界戦の権利があります。
坪井の階級は今、ジェシー・ロドリゲス(バム)が絶対王者として君臨し、残る王座はIBFのウィリバルド・ガルシア、無名の雑草王者で往年のビクトル・ラバナレスのようなバタバタしたスタイルの王者ですが、この王者とは寺地拳四朗との対戦が決まっています。
そして寺地が王座を戴冠したらバムとの戦いを強く希望しています。さらにバムはバンタム級やその上、井上や中谷との対戦を希望しているので、坪井の世界戦時に誰が王者でいるのかわかりませんが、フェルナンド・マルチネスさえ完全KOしたバムすらインプットして無効化してしまう可能性を坪井には感じました。まだプロ3戦、何の欠点も見せていないので感じることですが、それほど能力が高かったです。
ただ本当に、パンチャーではないですね。強く打ったらああいうファイトは出来ないからだけかもしれません。
増田・中野
ますだおかだではなくますだなかのですが、日本のアマチュア上がりのサウスポーのパンチャーで、上手いし必殺の強打を持つプロスペクトですが、その必殺の強打を持つが故、それを当てたくて攻撃が単調です。手数も少ないです。彼らの上をいく井上尚弥は極上の強打者ですが、得意パンチを狙っているわけではなく、ありとあらゆるパンチが強くて超一流です。崩し方もディフェンスも多彩、多芸です。
そのようになれるわけではないが、もっと全体的に試合を支配するような圧倒感、左が武器なら右で相手を翻弄するようなプレッシャーをかけていかないと左強打を当ててKOすれば勝てるけど、当たらなければ全部負けみたいな試合になってしまいますよ。
世界王者にはなれるかもしれないが現状では強い世界王者にはなれなそうと感じました。
那須川天心VS井上拓真
初回、2回を観て、これは天心ファンにボコボコに悪口を言われてしまうなとビビりました。体格の似た両者ですが、天心の方が大きく見え、何よりリーチ差が効いており、拓真がまったく届かない距離であしらわれてしまいました。
しかし天心はややべた足でフットワークを封印し、後ろ重心でロングの距離で拓真をやりこめようとしていた作戦だったようです。スタイルを見直し、元のキック時代の原点を取り入れたというような話でしたが、それがこのべた足後ろ重心、リーチ差を生かすだったのだろう。
それが明らかとなり修正できた拓真が3回から見事に挽回していきました。
天心には相変わらずすごい才能、センスを感じますが、最初みた時からシャクール・スティーブンソンのようになるのかなとおもいましたが、シャクールよりボクシングの幅は狭いし接近戦で被弾します。
ジェイソン・モロニーあたりも天心の距離と反射神経にやられたのだろうか、終盤はガムシャラに前に出て打ち合いとなりましたが、天心にはこれが多い。序盤は己の強みが効くが終盤に疲弊した打ち合いになる。
接近戦や右、ジャブ、などまだまだ課題、克服すべきことがあり、それを身に着けたら強い世界王者になるだろう。
やはり井上拓真にはボクシングの経験値があった。
これがダメならこっちでいこうという切り替え、修正、多様性があった。
出だしが最悪だっただけに顕著となった。



