Do you remember/(Ahas=ヘビ)ドニー・ニエテス

現役ボクサーのファイトスタイルとしては、個人的にかなり好きな選手がドニー・ニエテスだ。匠のような滑らかなボクシング、体格、パワー以外どこに注文があろう?井岡一翔は永遠のライバルといえるくらい鏡のような好敵手、極上のファイトだった。ニエテスと日本人が戦った意義は深い。

技術や経験はピカイチでもそれで全てに勝てるかはわからない。スーパーフライ級ではもっとパワーのある者に屈する可能性もある。パリクテとの再戦を辞退し王座を返上したことで、ニエテスの次の試合がみえてこなくなってしまったが、彼に残されているのは意義のある試合、ビッグネーム、レジェンド、大いなるチャレンジだけだ。

ドニー・ニエテスは王座の防衛回数、在位期間で、フィリピンの伝説のガブリエル「フラッシュ」エロルデが50年間保持した記録を破った。

しかしエロルデは永遠にニエテスのヒーローであり、エロルデの功績から多大なるインスピレーションを得た彼は、記録など気にしない、リング内外の人生で受けた全ての祝福に感謝したいと述べた。

自分の物語で歴史を作ったニエテスの感動的なスピーチの中で、彼は無敗の疾走をあと3年間延長することを約束した。

西ネグロス州ムルシアの貧困家庭で育ったニエテスとボゴセブの貧しい農家の16人兄弟の末っ子だったエロルデには類似するところが多い。

違いといえば、ニエテスは37歳でも健康な身体を保つため、決してタバコを吸わない点だ。残念ながら、エロルデの未亡人、ローラによると「バイ」と呼ばれたエロルデはヘビースモーカーだったと言う。1985年1月2日、エロルデは肺癌により49歳という若さこの世を去った。

運命のいたずらか、エロルデの死からちょうど30年後にニエテスは彼の記録を破った。史上最高のフィリピン人チャンピオンの遺灰から、新しいチャンピオンは生まれた。

ニエテスは、バコロド市にほど近いムルシアのボクサー一家で育った。祖父、父、叔父、いとこ、みなボクサーだった。4年生の頃にボクシングをはじめ、バランガイカスラヤン国立学校のクラスメイトと一緒にスパーリングした。

ニエテス
「リングの外では私は小さな子供だったのでいつも怯えていた。」

小さくやせっぽちのニエテスはいつもみんなにからかわれていた。ニエテスは彼の最初のトレーナーである叔父のジェルソン・ニエテス・シニアの家に住み、文武両道に励んだ。朝早く起きて走り、学校が終わるとまたトレーニングを続けた。

奨学金で電子工学の大学に通いながら50戦以上アマチュアで戦った。(40勝3敗とどこかに書かれていた)ある時、叔父からセブ島で働きたいかと声をかけられた。

仕事はタランバンのナシピットにあるALAジムの雑用係だった。
毎朝、ジムの掃除をしたり、リングのマットを拭いたり、道具を磨いたり、ジムで飼っていた様々な動物の世話もした。

ドニーは5匹の大きなニシキヘビの世話までやった。

トニー・アルデゲール(プロモーター)
「怖がらずにヘビの世話をする勇気があったのはドニーだけでした。何度が噛まれたけど、そのうち馴れてヘビの一番の友達になった。ある日、ヘビは11個の卵を産んだが生き残ったのは1匹だけでした。そのヘビこそがドニーが世話をした一匹であり、今でも首にペットのニシキヘビを巻き付けてリングインする理由です。ニエテスのニックネーム「Ahas」もこれに由来しています。」

2004年の9月8日にインドネシアのジャカルタで行われた試合で、ニエテスは地元のアンキー・アンコタにスプリットで敗れた記録があるが、あからさまな地元判定かつアンコタは体重超過もしていた。これがなければニエテスは未だに無敗といえる。

ニエテスはその記録、功績により、フィリピンボクシングの伝説となったが、スターになったとは言えない。

高度でテクニカルなカウンタースタイルはフィリピン人にはいまいち受けが悪い。過去に短いキャリアで終えた、レイ・バウティスタやジョン・ゴーレスの方が当時から世界王者のニエテスよりも人気があった。

控えめで謙虚なニエテスの性格、カリスマ性の欠如、受け身なボクシングスタイルが不人気の理由だ。しかしニエテスの不人気の主な原因は、戦いの定義の欠如であると断言できる。

歴史を通じ、ボクシングのヒーローは、頂点に君臨したからでも一番強かったからでもなく、ライバルの存在や、偉大な試合を通じて記録されてきた。

史上最高のボクサーと言われるモハメド・アリには、ジョー・フレイジャーやジョージ・フォアマン、ケン・ノートン、ソニー・リストンなどの個性豊かなライバルの存在があった。

1980年代の中量級ビッグ4(レナード、ハグラー、ハーンズ、デュラン)然り、メキシコの伝説、マルコ・アントニオ・バレラとエリック・モラレス。マニー・パッキャオには彼らがいてさらにマルケス、ハットン、コット、デラホーヤ、メイウェザーなどのビッグネーム、本場アメリカのビッグステージがあった。

ドニー・ニエテスは今まで一体誰と戦ったのだろう?

ニエテスが戦った偉大なファイターを覚えている者はいるだろうか?残されたニエテスのキャリアで必要なのは、そうしたビッグネームとの戦いの記憶だ。ロマン・ゴンザレスやファン・フランシスコ・エストラーダへの対戦は実現せず、タイのシーサケット・ソールンビサイに追い越されてしまった。

アストン・パリクテに勝利したとして、それがニエテスの遺産に何を追加するというのだろう。

井岡一翔に対する勝利は、ニエテスのキャリアに多くの価値ある遺産を残した。

しかしまだ足りない。今後、そのような意義ある試合がどのくらいできるかがニエテスの最後の仕事といえる。

ニエテスのヘビの由来を書きたくてダラダラと紹介しました。
タイトルは「忘れないで」にしようかとおもいましたが、キマらないので「Do you remember」にしました。

軽量級のマイク・マッカラムのような存在になってしまっているニエテスがキャリアの集大成に臨む試合、相手が誰になるのか(誰が相手をしてくれるのか)

最後まで見届けたい。

私を忘れないで。

それにしてもボクシングに関する限り、フィリピンはすごいな。

https://www.youtube.com/watch?v=wu8nEdFqPXA

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コメント一覧
  1. プクーさんのおっしゃる通りの展開になってきましたね。

    ニエテスはパリクテ再戦を避けて王座を返還してしまった結果、誰にとっても美味しくない対戦相手になってしまってます。

    エストラーダが、ヤファイ戦から始めて、統一ロードに向かうようですが、ニエテスはベルトを持っていないから相手にされていないようです。残念なことです。

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  2. 気持ちはわかるが、タイトルのないニエテスと誰が戦ってくれるのかまで考慮してなかったのかな。同胞のアンカハスしかいなかったりして。アンカハスすらやりたくなさそうだ。

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  3. ロマゴン同様、やる気あるのかないのかはっきりしてほしい。
    今年、試合がないようだとかなりまずいと思う。

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  4. ロマゴン同様、やる気あるのかないのかはっきりしてほしい。
    今年、試合がないようだとかなりまずいと思う。

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  5. 井岡が近距離の攻防で競り負けていたのが印象的でした。
    いつも井岡がやっている相手のパンチを外して自分のパンチだけを当てていくボクシングを逆にやられてしまっていて、観ていてものすごく焦燥感を覚えました。
    膝の柔らかさを活かして低い体勢から打ち込むパンチとか、どことなくペニャロサ的で、それも怖かった。

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  6. 結構派手でかっこいいボクシングだとおもうけどな。
    ただスーパーフライ級だと小さいし迫力不足だな。
    それでも井岡よりはパワーがあったし少しだけ上に感じた。
    ロマゴンと同じで増量の限界かな。

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  7. 派手さは無いですが、とにかく負けないボクシングが出来るボクサーの代表ですねもう。ニエテス自身のボクシング人生は晩年だから、このままフェードアウトするのは、寂し過ぎます。井岡チャンプとの再選はないですかね?純粋にもう一度観たいです。でも、ニエテスの破棄をしたタイトルだから、それは無理ですかね?

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  8. パリクテと再戦する意欲がなかったのでしょう。
    年齢的にも、意義が見いだせないし、初戦は苦戦したけど確実に勝ちに等しかったし。

    誰が相手をしてくれるかですね。

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  9. 正直、「ビッグマッチがしたい」という理由で、井岡と争ったWBOタイトルを放棄した理由がまったく理解できないです。
    タイトルを持ってるからこそ、(統一戦という大義名分で)まだエストラーダとかの大物にも相手をしてもらえる可能性があるのに、それすらなかったら、誰が不人気の割りに実力がピカイチなニエテスを相手にしようか?
    リゴンドーのように(大いに理不尽だが)団体から見捨てられたわけでもなく、自分からその道を選んだのは、ただ単にパリクテが苦手だったから、という理由だけなら、何とも勿体無く、かつバカらしいです。

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