
昨日のハイメ・ムンギアVS井上岳志はスコアだけみると完敗ですが、勝敗を超えて観る者を熱くさせる素晴らしい試合でした。(特に井上)中には下らない予想通りの惨敗、レベルの低い試合とみる向きもあるかもしれませんが、海外識者の視点は我々日本人とは異なりつつ、似たような点もあるんだなと感じさせる一文です。イギリスの記者なのかな、全体的には俺のとはちょっと違いますが、なるほどね。
[st-card id=53920 ]WBOジュニアミドル級(スーパーウェルター級)王者のハイメ・ムンギア(32勝26KO)はテキサス州ヒューストンのトヨタセンターで12ラウンド判定で日本の井上岳志(13勝7KO1敗1分)を下したが、予想以上にハードな試合になりました。
この試合は22歳のムンギアにとり通過点であり、彼がこの階級の統一やミドル級のエリートレベルに加わるためのテストでしたが多くの課題を残しました。未来のスターとしてのお披露目でしたが、ムンギアはとても一流の世界王者とはいえないような姿を晒してしまいました。
GBPとゼンファープロモーションはムンギアを十分改善させるまで彼のキャリアを遅らせる必要がありそうです。
ムンギアは井上に対しインパクトのある勝ち方ができなかった。唯一の救いは、井上がとてもタフだったという事だ。しかしそれでムンギアを賞賛することはできません。井上に対してかなりの苦戦を強いられました。
ムンギア
「井上の打たれ強さに驚きました。ボディにも顔面にもいいパンチをいれた。他のファイターなら倒れているようなパンチです。」3人のジャッジのスコアは酷いもので、ムンギアに好意的すぎた。ムンギアの井上に対する賛辞を加味すれば3,4ラウンドは井上のポイントになっていたはずだ。
井上がムンギアの懐に入り攻めている時にレフリーは度々ブレイクで流れを止めた。それはやりすぎのようにみえた。ムンギアはインファイトに苦しみ、対応できていなかった。
ボクシングファンの中にはムンギアとカネロを比較している人もいるかもしれません。しかし両者には雲泥の差がありました。カネロはインファイトが上手く、ハンドスピードも速い。ムンギアはカネロよりも体格が良くいいジャブを持っていますがインファイトができません。カネロのようなボディワークがありません。
ムンギア
「素晴らしい試合でした。井上は偉大な戦士でした。私にとって重要な事で、この試合で多くの経験を得ました。私は自分の距離で戦いたい、しかし井上に距離を詰められました。今後のいい課題になりました。」ムンギアは井上に接近されないためにフットワークを多用しました。ロープに下がりながらもパンチを出して井上のアタックを阻止しようと務めました。4分の1の時間はクリンチで井上の接近を封じようとしましたが、クリンチできずにレフリーが両者を引き離すシーンも目立ちました。それは奇妙な事でレフリーがそこまでブレイクする必要はありませんでした。レフリーがムンギアを助けたとも言えます。
ムンギアはまた、井上が後頭部を殴る事にクレームをつけていましたが、ムンギアも井上の後頭部をよく殴っていました。そしてそれに対する注意は受けませんでした。両者荒れ模様の試合で、井上だけでなくムンギアもローブローなどダーティーな行為をしていました。
試合後にムンギアはこの階級のビッグマッチを経てミドル級に移動する考えを伝えました。この階級のエリートレベルと戦うまで、ムンギアは階級を上げるべきではありません。この階級のライオンたちと戦う必要があります。
次戦の予定はエリート、ライオンとはいえないデニス・ホーガンが予定されています。エリートレベルと戦った時にムンギアの欠点が露呈するでしょう。
オスカー・デラホーヤは近い将来にムンギアとカネロを対戦させたいと述べましたが、昨晩のムンギアならばカネロにノックアウトされてしまうでしょう。ゴロフキンやジェイコブスと戦っても同様です。もしムンギアがミドル級転向をするのであれば、これらビッグネームと対戦する前にじっくりキャリアを積んで成長していく必要があるでしょう。
ムンギアには大きな期待と過大な宣伝がかけられていますが、現実は追いついていません。ジャレット・ハードであれば井上を虐殺していた事でしょう。
私たちが昨晩観たのは井上岳志というウェルター級くらいの小さなファイターを殴るミドル級の男でした。ムンギアは試合当日少なくとも175ポンドくらいの重さがありました。
井上は軽い相手に優位性を保つために20ポンド脱水して戦うような男には見えませんでした。自らの自然な体重に近いスーパーウェルター級で、本来はもっと大きな男を相手にしていました。ナチュラルな体重に近いのであればムンギアのような巨大な男は本来この階級にはいないでしょう。
ムンギアVS井上は今年DAZNで放映された最もエキサイティングな試合のひとつでした。エンターテイメントとしての観点でいえばカード全体で最高の試合でした。これ以上の試合はなかったです。しかしそれは均等に組まれたからともいえます。
井上
「ムンギアは31戦全勝の名に恥じない、単なるハードパンチャーだけではない素晴らしいチャンピオンでした。我々は互いの武器を殺すスキルを持っていました。今夜ムンギアは僕よりも優れたファイターでした。もっと練習して再びアメリカに戻って来れるよう精進します。」
最近は記事を深読みせず、何も考えず、時間短縮で書いているので意味がよくわからないところが多々ありますことをご容赦ください。海外記者は試合ひとつで、ダメ出し、あっちの方が強い、弱いと断定する傾向があり、そこが個人的に相容れません。
一番素直で正直なのはムンギアのコメントだとおもいます。
たしかに期待されたパフォーマンスとはいかず、課題が残ったかもしれませんが、ムンギアだから勝てた、手を焼いたがさすがな面も見れた、やっぱり強い、こういうタイプとの苦戦は今後の糧になるというのが個人的な感想です。打たれ強さや対処力はさすがの化け物、若さ故。すっきりしないが負けにくい王者だなと感じました。
観客がキャーキャー絶叫し(ムンギアが捕まるのが怖かった)
解説が井上をモンゴリアと連呼していたのが全てです。
得体の知れない鬼フィジカルな井上が怖かったんでしょう。
フルマークの結果をみると、ムンギアはカネロ2世であり、判定優遇されるボクサーなんだなと確信しました。
このへんの見解とレフリーの対応、体重に対する印象などはこの記事に共感するところもあります。
しかし
ジャレット・ハードであれば井上を虐殺していた事でしょう
とか、案外そうとも言えないでしょう。
そのくらい、井上岳志という男の根性、フィジカルは驚異的でした。
強いて言えばやっぱり体格差、スキルが全然世界トップレベルではありません。だから極端な戦術を行使したのですが・・・
村田にも言えたことですが、自慢の武器、右オーバーハンドやフックはとっくに読まれている、警戒されているので威力を殺されてなかなかまともにあたりません。
だからこそ、右を囮に左を本当の武器に、さらにはボディやショートパンチなど細かな部分の向上の余地がたくさんありそうです。
かつて長谷川が右一発でネストール・ロチャをぶっ倒したシーン
内山高志がいきなりの左フックでホルヘ・ソリスを失神させたシーン
などが印象に残っています。
あれがなくても総合的に勝てる相手、試合でしたが、なぜ印象に残っているかといえば
いつもと違うやん
違うパンチやん
そんな武器があったのね
利き手以外もすごいやん
という驚きがあったからです。
必殺、得意パンチじゃないパターン(本当は得意なんでしょうが)で決める試合は痛快です。
そういう武器まで身に着けた時、ムンギアという極上の相手との経験が糧となった時、鬼フィジカルな井上岳志は世界の扉をこじ開けるのかもしれません。
そんな夢がみれた試合でした。
井上岳志ナイスファイトをありがとう。