
9月10日、オスカー・バルデスVSロブソン・コンセイソンのアンダーで行われる中谷の初防衛戦。アコスタはLフライ級の元世界王者で井岡を除く田中恒成の相手では最も強敵だったとおもう。
中谷潤人 21勝16KO無敗 23歳
身長171センチの大柄なサウスポーの23歳は、大手ジムでも超アマチュアエリートでもないが、高校進学せずボクシングの道を選んだアマチュアキッズ。だからボクシングの経歴は骨太だ。今勢いがある矢吹正道やユーリ阿久井政悟にもしっかりと勝って無敗をキープ。21戦目の戴冠は今時の日本人ではしっかりしたキャリアといえる。
長身で懐の深いサウスポーだから相手は距離を詰めて接近戦で潰そうと考えるが、中谷はその対策に余念がなく接近戦での対処が上手い。頭や身体の位置を変えて鋭いアッパーやボディ、カバーリングも上手く、長身選手の弱みを消している。
しかし本領はやはり、距離を生かしたアウトボクシングだろう。
アンヘル・アコスタ 20勝20KO2敗 30歳
この階級で勝利はKO率100%。攻撃の凄み、圧力、パワー、積極性は世界王者並、というか元世界王者である。ランカークラスとは違う王者の器。田中の空けた王座への棚ボタ王座的なものだったが、実力は高い。
現王者のエルウィン・ソトに最終回逆転KO負けを喫したが、レフリーが早めのストップをしなければ判定勝ちしていただろう。
しかしやはり気質がプエルトリカンであり、攻撃偏重、防御がザルでダウンをする悪癖がある。そしてモロに効いちゃう打たれ方をする。プエルトリカンの伝統芸だ。
決定戦で王者になった中谷にとって、初のアウェーにして試金石となる相手となる。若さと安定感、サイズ、弱点を消し去る頼もしさなど、中谷は今は地味でも井上尚弥に次ぐ日本が誇る本格王者を予感しているが、まだ未知数な部分があり、アコスタのパワーに粉砕されてしまうのか、ギリギリクリアするのか、圧倒してしまうのかで色々な判断が出来るようになる。
小柄なパンチャーのアコスタがガンガン攻めてくるのは間違いないし、アメリカはアコスタのホームと言ってもいい。この最初の試練をどう乗り切るかで中谷潤人の可能性は切り開かれていく。アコスタがどのくらい自分の欠点を修正してくるかも見ものだ。
中谷には、レイノソチームの怪童、WBC王者のフリオ・セサール・マルチネスをノックアウトして欲しいし、この若さでこの身長、複数階級の視野も当然入っているはずだ。ひとつ上、ふたつ上のSフライ、バンタムでさえ、中谷より背が高いファイターはほとんどいない。
フライ級で無敗、無敵を誇って転級するのと、負けて上げるのでは、大きな違いがある。
日本のエースは決まりだが、それに次ぐ存在は、彼かもしれないという期待を込めて、アンヘル・アコスタは今丁度いい相手、強豪だ。