世界より国内に疎い自分としては、興味の薄い試合だったが、年間最高試合候補のアップセットとも言われる内容となったようです。
まず両者、特に矢吹正道という選手についてあまり知らないので多くは語れないが、安定王者で確たるスタイルを持つ寺地の勝利を予想していただけに意外な結果となった。
序盤の4回で寺地のいつものジャブがジャッジに評価されず、公開採点で劣勢、そこから自分のスタイルを捨てて打ち合いにいかねばならなくなった寺地が被弾し疲弊し、流血もひどくストップされてしまった。それでも逆転KOしそうなほどの攻勢もみせた。只者ではない。
井上尚弥の影で、それに勝るとも劣らぬ安定感で防衛を伸ばしていた寺地、具志堅の13回防衛を抜くことを確実視されていたほどだ。しかし、コロナや階級の不人気もあり、世界にアピールとはいかず、国内で日本ランカー相手に地味な防衛戦を強いられてきた。実力で劣るとおもわれていた対抗王者の京口が、マッチルームと契約しアメリカデビューしたのとは対象的で、旧態依然の路線だったのも災いしたのかもしれない。
寺地はもともと、早すぎる世界挑戦で戴冠し、防衛を重ね安定感を増してきたが、相手のレベルが高かったかといえば疑問だし、ペドロ・ゲバラ戦やガニガン・ロペスとの初戦も際どいものだった。寺地自身がパンチャーなのか、判定型のアウトボクサーなのかも、いまいち測りがたかった。
なので、立派な防衛回数を誇る無敗の世界王者といえど、どこか昔の徳山昌守のような頼もしさと頼りなさが同居する図りがたさがあった。
今回の試合は、いわば、徳山昌守VS川嶋勝重の再現ではなかっただろうか。
それでも、寺地拳四朗は距離感、ジャブ、支配力を持つ、頭一つ抜けたクレバーなファイターであることは間違いなく、今回が何かの間違い、ミスであったと証明し、再起して欲しいと願う。
こんなもんじゃないだろ。
矢吹という選手も独自の華、色気のあるファイターなので、Lフライ級という不人気階級とはいえ、海を越えた活躍を目指して欲しい。