負けても結構なギャラだろうが、ここで勝てば再びウハウハザクザクだったブローナーはやはりブローナーだった。「俺が勝った、パッキャオを倒した、コントロールした」発言には少し驚いて、ほぼフルマークでパッキャオとつけた自己採点をおもわず見直してしまいました。結果は116-112が2者いるなど意外とブローナーに好意的だったんだな。
もう2年ほど白星がないブローナーですし、メイウェザー2世の名は死んだ、メッキは剥がれた、もういいや、な選手なんですが、個人的には実に惜しい、捨てがたき才能ともいえます。
打ちのめされた事はないし、その独特の能力は本人のメンタル、コーチ、環境などによってまだまだ変化、開花するのにな。だってまだ29歳だもの・・・
しかし、数々の愚行が示すように彼のメンタル、性格を矯正するのは負け越しボクサーを世界王者にするよりも難しいくらいな上で少し考えてみたい。
2011年11月26日、ヴィセンテ・マーティン・ロドリゲスとの決定戦に勝ってWBOスーパーフェザー級王座獲得。たしかこの頃は内山高志と同じ階級の新王者であり、内山よりもビルドアップされたゴリラのような体形で随分やばいのが出てきたなぁという印象だった。
この時代は内山VSブローナー、内山VSマイキーなんて夢のような話もあったりなかったり・・・
もう忘れてしまったが、ライト級くらいまでのブローナーはKO型であり、対戦相手は独自のディフェンスとパワーに怯え、ゴリラパンチでボコボコにされていた。
しかしスーパーライト、ウェルター級あたりになると勝手が違った。マルコス・マイダナの狂乱ファイトに巻き込まれ、初ダウン、異様なタフネスで盛り返すもこの敗北が大きな分岐点になった。
[st-card id=3517 ]元祖メイウェザーは負けないが、コピーの弟分は負けた。
これがあったからこそマイダナは2度もメイウェザーに挑むことができたが、完全披露された対ゴリラ戦術はもう対策済みだった。これが最初からブローナーではなくメイウェザーだったらひょっとしたかもしれない。
その後のブローナーは階級を上げたり下げたり定まらず、待ちのスタイルの煮え切らないファイターになっていった。ディフェンスは上手い、パンチも速い、だが踏み込まない、手数もアグレッシブも足りない。
完敗こそしないものの、スタッツで全て負けているような試合ばかりになってしまった。
マイダナに奪われたのはベルトではなくファイトスタイル、己のボクシングではないか。
ショーン・ポーターに敗れてからのブローナーはもうずっとパッキャオ戦と同じである。
相手の攻撃を捌くエネルギーに8を費やし残りの2でやりくりするようなファイトばかり。
ブローナーのボクシングは独特で、強靭な下半身やバネに支えられてはいるものの、やはりゴリラマッチョな上半身の筋肉に任せた手打ちだ。ハンドスピードはあるが踏み込みがない。腕力任せのチョッピング。
そして分厚い上半身を後ろ重心にして、踏み込まず、スウェーやアームブロックを駆使するものだから、相手のパンチもなかなか当たらない。胸板を壁にして、後ろ重心なまま戦いを貫く。
こんなスタイルじゃ当てにくいったらありゃしない。しかしブローナーのパンチも届かない。マイダナ戦でダウンを屈したものの、フィジカル、タフネスは相当だ。Sフェザーからウェルターまで通じるのも尋常ではない。素材は素晴らしい。
しかし、今のままではもう限界、もう見たくない、さようなら。
この独特なゴリラーマン、元4階級制覇、まだ29歳、矯正できる余地はたくさんある。
まずは170センチ、168センチとも言われるチビなのだから適正階級を決めよう。ライト級かスーパーライト級が上限だ。
攻防のバランスをせめて5-5にしよう。ディフェンステクもパワーもあるのだから。
リングの中央で戦おう。ロープ、コーナーに下がるな、むしろプレスをかけて前に出ろ。
最低限、相手と同じかそれ以上の手数を出そう。
もう、性格も根性なしなファイトスタイルもお腹いっぱいで観戦意欲の沸かない選手になってしまったが
ゴリラーマン、エイドリアン・ブローナーの才能だけはすげぇと認める自分がいます。
実にもったいねぇ男だよ。
メイウェザーもやりたくなかったんだろうな。
確立された今のスタイルの殻を捨てなければこれ以上は望めない。
※ゴリラという例えを多用してしまったが、侮蔑ではなく親しみを込めたものである。