この自信は自己肯定感か脅迫観念か、たしかに過去、強くても不安定な時期、日本で帝里木下と戦った時に比べ、心身、特にスタイルを確立し、自身の長所を生かしきった負けないボクシングを身に着けたと感じるテテだが、それを凌駕するバンタム級がいると信じている。
今週土曜日の夜はWBSS準決勝、ルイジアナ州ラファイエットのケイジャンドームで試合が開催される。バンタム級のWBO王者、ゾラニ・テテはフロイド・メイウェザーシニアに師事し、とても良好なコンディションを作り上げた。
テテ
「最高の準備で素晴らしい試合を提供できます。ラスベガスを出てとても楽しいひと時を過ごしました。メイウェザーシニアは自分をさらなる高みへと上昇させる心理的なXファクターです。試合で必要な最後のパズルのピースでした。」テテの前に立ちはだかるのは、4階級に渡り何度も王者に輝いた現WBCダイアモンド、WBAスーパー王者のノニト・ドネア(36歳)”フィリピーノフラッシュ”は間違いなく伝説的存在であり、このトーナメントに参加するにあたり20歳も若返ったと発言している。
テテはそんなドネアの功績に敬意を表しつつ、対決には自信をみせている。
テテ
「ドネアの素晴らしい挑戦を楽しみにしている。彼はキャリアの終わりに近いだろうが今でも危険でハイレベルな状態をキープしている。しかし自分こそが試合を支配する。今本当に最高の状態で、とてもフィットしていてパワーも感じている。試合が待ちきれないよ。」ドネアと同様にテテも賞賛に値する名誉を持っている。2017年11月に行われた防衛戦では、シボニソ・ゴニャを開始わずか11秒でノックアウトした。これは世界戦の歴史に残る記録だ。現在31歳のテテは南アフリカのムダントサネで生まれ、厳しい少年時代を過ごしてきた。もしボクシングに出会わなかったら過酷な運命が待ち受けていただろう。
テテ
「8歳でボクシングをはじめた。トレーニングが自分を犯罪から守ってくれると信じていた。友人の何人かは恐ろしい世界に足を踏み入れた。自分のボクシング人生は母と子供たち、婚約者に捧げている。彼らが道を外れることなく健やかな生活と未来を過ごすために。ここで生まれなければ、祖国を、家族を代表して統一王者になる夢など持てなかったでしょう。トーナメントのメンバーは皆強い。でも俺と戦うまでのことだ。どんなにタフな試合であっても、俺は自分やチームを理解しており、彼らを破壊する術を知っている。俺が走る線路に足を踏み入れようとする邪魔者は誰であっても、俺という名の列車が蹴散らしてやる。」
ノニト・ドネアVSゾラニ・テテ
[st-card id=66346 ] [st-card id=64133 ]日本にファンの多いドネアだからこそアンケート結果はこのように出ているが、コメントや世界のオッズでは今が全盛期といえるテテが優勢だろう。何を言ってもドネアは全盛期を過ぎた引退間際のファイターであり、上の階級では冴えない試合を演じてきた。ダメージの蓄積もキレや反応の劣化も感じる。初戦のライアン・バーネット戦も昔に戻った、信頼を回復したとはいえぬ微妙な内容といえた。
キャリアとパワーを強調するドネアだが、体格はテテの方が大きい。当日も同じかテテだろう。ドネアの方が重いとすればそれは無駄な肉かもしれない。テテのスタイルはわかりやすくてやりにくい。サウスポーからの長身と強打で懐に入れない。入っても鋭いアッパーで毒針を刺す。左右に一撃必殺のキレとパワーがあるので、とにかく距離が遠くてやりにくい。中に入れず何もできず散ったナルバエスや、不用意に入って刺されたゴニャがその象徴だ。トップアマのテクニシャン、ミーシャ・アロイヤンはあの手この手でテテの解体を試みたが、フィジカル、パンチ力が違いすぎ跳ね返された。
全盛期のドネアなら、そんなテテのスタイルも解体するタイミングとキレ、カウンターを持っていたが、36歳の今同じ事ができるだろうか。我らが井上尚弥が決勝で対戦するとしても、距離のケアは大変だろう。パヤノを下した一瞬の踏み込んだ右、数々の相手を倒してきた左フック、接近すれば強力なボディ、倒すツールは多々あれど、テテの体格とリーチとパワーを前にすれば容易ではないだろう。
相手が出てくれば鋭利なパンチで印象的なノックアウトも多いテテだが、出てこない、反応が速い選手になるとテテの精度も鈍る。テテ自身が試合を作るタイプのスタイルではないからだ。相手に攻めさせて隙を突く、後出しジャンケンのようなやり方をする。だからKO率、戦慄のKO動画ほどこのレベルで倒す確率は低くなるとおもわれる。テテが不用意に前に出てくることはまずないだろう。あったとしても威嚇的なものだけだろう。
今まで、そのやりにくさと強打で敬遠されてきた南アの長身サウスポー、ゾラニ・テテ。独自の武器を持った極めて危険なファイターであると共に、そこを突破すればそんなに芸達者ではないとみている。
彼の一番の武器はやりにくさ、12ラウンドでアジャストしきれるかにかかっている。出てこないで長い槍ばかり突くテテをどうこじ開けていくか・・・一番優勝を心の底から望んでいる、ハングリーなのも立場が不遇なこの男だろう。
いよいよ今週です。