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煌めきと儚さと天才と/フェルナンド・モンティエル

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一番好きなのがリカルド・ロペスと言った口が乾かぬうちに、このフェルナンド・モンティエルに魅了されていた時期がありました。ジョーさんも浜田さんも、ちょっと無謀なところがあるけれど天才児ですねこれは、というような事を言ってた記憶があります。まだ、WBOが日本で認可されていない頃のエキサイトマッチでみたフライ級のモンティエル。スーパーキッズとは彼の事だな、世界は広いなと感動した一人です。

当時、日本のフライ級はどうだっただろう?坂田とか内藤の時代かな、ちょっと異次元、異質なんだなWBO IBFは・・・なんというか、リカルド・ロペスの様式美ではなく、リスキーな戦い方なんですが、しなやかで、センスがすさまじい、でも子供っぽいという感じ・・・幾年月を経て、日本で生観戦する日が来ようとは・・・

(2015年のリー・セルビー戦の前の記事になります)

フェルナンド・モンティエルはスキル、スピード、パワーを兼ね備えた偉大なファイターとして3階級制覇、5つの世界王座を獲得した。

モンティエルの記憶以前から彼はボクシングと関わってきた。

モンティエル
「私はジムで生まれました。」

彼の家族はボクシング一家だ。いとこ、叔父、父がボクサーで父のマヌエルは1973年に伝説のミゲル・カントと戦った。1974年にはメキシコフライ級王者にも輝いた。モンティエルは4人兄弟の末っ子で、3人はプロボクサーだ。

モンティエル
「父がいつもサポートしてくれました。子供の頃からお前にはボクサーの血が流れている。素質があると言われてきました。」

1996年にプロになって20勝1分とし、2000年イシドロ・ガルシアを破りWBO世界フライ級王座を獲得、2002年6月22日、ペドロ・アルカサール(パナマ)と対戦し、6回1分16秒TKO勝ちを収め2階級制覇を果たした。しかしこの勝利はモンティエルにとって苦い代償を残した。

アルカサールが試合の2日後に脳のダメージで死亡してしまったのだ。

モンティエル
「その知らせを受け、引退しようとおもいました。アルカサールの家族から電話を受けましたが、事故だから気に病むな、前に進めと言われました。気持ちを整理するのに時間がかかりました。」

モンティエルは苦難を乗り越えキャリアを進めた。2連勝後、元2階級王者のマーク・ジョンソンに判定で敗れ、キャリア初の敗北を味わった。

その後3連勝し、ジョンソンからタイトルを奪ったイバン・ヘルナンデスを攻略しWBOのベルトを取り戻した。7度の防衛に成功後、階級をあげバンタム級でジョニー・ゴンザレスに挑むもSDで惜敗。その後連勝を続け2010年、シソ・モラレスに圧勝し3階級制覇を達成、当時クラス最強と言われ、長期王者であった日本の長谷川穂積との対戦の機会を手に入れ、4回TKOで勝利した。

この試合がモンティエルにとって最高の瞬間だった。

長谷川に対する勝利は最初から決まっていたという。

モンティエル
「子供の頃から絵を描くのが好きでボクシングやベルトを書いていました。「将来世界王者になりたいか?」そういって父はわたしの絵を財布にいれました。時が来て、長谷川戦のため日本のホテルにいると父があの時の絵をくれたのです。すっかり忘れていたので私は驚きました。その絵には角にTokyoと書かれていました。そして長谷川との試合は東京でした。そして私はWBCのベルトをとった。絵をかいたのは1993年。長谷川との戦いはそれから約20年後の事でした。」

2011年初頭、モンティエルはHBOで部門の最高峰、ノニト・ドネアと対戦、それはバンタム級2トップによる究極の戦いだった。モンティエルにとっては悪夢の夜となった。2回に完璧な左フックのカウンターを食い、キャリアで初めてストップされた。

その後もさらにクラスをあげ、モンティエルの挑戦は続いている。

20年近いキャリアの中でモンティエルは様々なウェイトのトップクラスと戦い続けてきた。ビック・ダルチニアン、ノニト・ドネアとの再戦、友人であるホルヘ・アルセと戦ってみたかったという。

モンティエル
「アルセにはいつも対戦をアピールしてきたけど、プロモーターが違うせいもありアルセは対戦を避けました。お前は友人だから友情を傷つけたくないと言われました。」

モンティエルには2度の結婚で計4人の子供がいる。最先端のロスチモスジムを運営している。トレッドミルのおかげで周囲の丘や道路を走る必要がなくなったという。ジムだけでなくスパも所有しており、プールも併設している。

そんなロスチモスのジムで、ライバルたちの話をきいた。

ベストスキル ルイス・メレンデス

彼のパンチを食って苦しい試合でした。彼はタフでした。あの当時では今まで戦った誰よりも優れたスキルを持っていました。ジョン・ゴーレス戦でも苦労しましたが、あの時は自分の準備が足らず、60~70%でした。

ベストジャブ マーク・ジョンソン

彼のジャブと経験値には驚きました。ジョニー・ゴンザレスもいいジャブを持っていました。

ベストディフェンス マーク・ジョンソン

サウスポーで私より経験豊富でした。ジョニー・ゴンザレスもいいディフェンスを持っていました。優れたカウンターパンチャーで打ったら必ずカウンターを返されると覚悟していました。彼は私よりずっと大きかった。

ベストチン ルイス・メレンデス

パンチをたくさん当てたのに効かないんです。なんでなんだと戸惑い、ボディであばら骨を折りやっと彼を止めることができました。

ベストパンチャー ノニト・ドネア

私を唯一ノックアウトしたドネアただ一人でしょう。私が打ってドネアが返した。死角で見えませんでした。

ハンドスピード 長谷川穂積

マーク・ジョンソンもノニト・ドネアも速かったけど、長谷川だったとおもいます。とても爆発的なパンチを打てる男でした。私はそんな長谷川の意図を読んでお前がやろうとしている事はお見通しだぞと彼に知らしめ、驚かせる必要がありました。

フットワーク 長谷川穂積

ドネアの事はよくわかんないんだ。2回で終わってしまったからね。ワンパンチ以外のドネアのすごさがわかっていない。長谷川、マーク・ジョンソン、ドイツのゾルタン・ルンカはパンチもフットワークもスピードがあった。

スマート 長谷川穂積

彼は頭が良くて、私とゲームを楽しむように、イライラさせるようなファイトをしてきた。でも結局私がアドバンテージを握って彼をノックアウトした。長谷川には不測の事態だっただろう。マジかよっていう感じさ。

屈強 ビクター・テラザス

テラザスとジョニー・ゴンザレスだね。でもテラザスにしたのは彼は(体重が)デカかったからね。

総合 ノニト・ドネア

人生で最もタフな相手は妻だよ。いつも負けているからね。冗談を抜きにすればドネアだね、私が唯一ノックアウトで負けた相手だからね。

長谷川穂積にとってもフェルナンド・モンティエルにとっても両者の邂逅こそがボクサー人生のクライマックスであり、その後のストーリーも続きつつ栄光は長く続かない、ボクシングの一瞬の煌めきと儚さを感じずにはいられぬ2人でした。

長谷川VSモンティエル

モンティエル自身もそう感じていたのだ。あの試合は究極に充実していた長谷川がやっと自分が満たされるレベルの対戦相手に胸を躍らせてゲームを楽しんでいるような凌ぎ合いでした。モンティエルのパワーに序盤から骨折等をした長谷川だったそうですが、2人の究極の凌ぎ合い、フェイント合戦はそれでも勢いのある長谷川が少しだけ優勢に展開しているようにみえました。モンティエルのいう、爆発力、ラッシュ力、プレッシャーが長谷川の方にあったからでしょうか。けれど勝負は一瞬で終わりました。長谷川は卓球も相当強いみたいだが、極上のシーソーゲーム、チェスマッチの突如の終焉のようで、負けた長谷川自身もゲームを楽しんだ充実感があったようにみえました。

その後の両者、結果を出したのはバンタムから3階級を制覇し、勝者のまま引退した長谷川かもしれませんが、長谷川を破り日の出の勢いだったモンティエルはドネアに全てを砕かれました。

両者にとりバンタム級より上の階級は鬼門だったのだ。

傷つき、倒され、劣化していく、それは特別な王者となり階級を上げていくしか道のない王者にとっては避けて通れない運命だ。どんなに惨敗したにせよ、ボクサーとしての能力が劣っていたわけではなく、モンティエルにとっても長谷川にとってもそれが年齢や階級の壁だったのだとおもいたい。

この記事は2015年時点のもので、フェザー級でリー・セルビーに挑む前のものです。
このインタビュー後にモンティエルはセルビーに敗れ、母国の伏兵、ホルヘ・ララに初回でボコボコにされ、キャリアを止めることになります。正式に引退したかは定かではないですが、もう十分です。

数々の名勝負をありがとう。
ボクサーの栄華は儚い。過去かもしれず、今かもしれず、未来かもしれない。
だから今を全力で駆け抜けた。

第二の人生の活躍を祈ります。

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原始的で単純明快なスポーツです。生涯一度の敗北、無敗で引退したボクサーもいます。負けても次頑張りますというスポーツとは違う残酷さ、無常さが好きです。

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