偏屈者のマニアになると、試合前から大体両者の特徴、戦術、試合内容を予想して、想定内外かを楽しむだけみたいなところがあり、先日の中谷VSモロニーなんてのは極上の想定内である。
しかし、この男の内容、結果は想定外であった。というより、よく知らない選手だった。
そもそも、マウリシオ・ララに期待していたのだが、体重超過の果ての判定負けと、悪いほうの想定内であったのに対し、ルイス・アルベルト・ロペスは高い確率で王者を期待されるアイドル、マイケル・コンランに判定負けするものだとおもっていたが、この内容である。
見事に観客の度肝を抜く一撃で期待を断ち切り空気を切り裂いた。
この試合のためにロペスを予習したくらいで、あぁ、低迷中のジョシュ・ウォーリントンに僅差で勝って知らぬ間に王座を獲得したのね、メキシコによくいる、レオ・サンタクルスあたりに散々カモにされたランカークラス、王者未満な立ち位置の人かなくらいにしかおもっていませんでした。
27勝15KO2敗という戦績もちょうどそんな感じです。
しかしキャリアをみると、アンダードッグながらプロスペクトを潰し続けている。特に最近KOやアップセットが増えている。かつてルーベン・ビラに技術負けしているが、ビラは元々シャクールにアマで2勝しているくらいのテクニシャンであり、エマニュエル・ナバレッテとの試合も接戦だったので、戦績をよーくみるとただものではない、雑草ながらメキメキと最近力をつけている猛者であることはわかったはずなのだ。
映像をみると、スタイルが従来のメキシカンと違う、サンタクルスあたりにカモにされてきた世界未満のメキシカンとは明らかに異なることがわかる。
身長163cm
リーチ169cm
しかない
つまり中谷や井上や井岡よりも背が低いフェザー級。エストラーダやロマゴンと同じくらいなのかな。
ガードがルーズで剛腕でフィジカルごり押し、アマチュアエリートの型にない独自のスタイル。
それでいて、トップアマのコンラン相手に、威圧も、パンチのタイミングも効果も上回って5回で潰してしまうのだからただ者ではない。
スタイリッシュなトップアマ全盛の現代にあって、久々にプロっぽい、武骨な王者が誕生したものだ。
もちろん、今のままではスタイリッシュでディフェンシブな米国黒人系選手にはあっさり判定で負けてしまいそうなクオリティであり、一階級下のスティーブン・フルトンあたりでも判定勝ちしそうなムードがしますが、こういう武骨な倒し屋は応援したくなります。
キャリアを重ねるにつれ、どんどん結果を出しています。
人気者、マイケル・コンラン相手にインパクトの強い勝ち方をしたので、次でビッグマッチもありえますが、順当にいけば次は日本の阿部麗也が指名挑戦者ということになります。
線の細さと打たれ脆さ、しかしパンチはシャープでKOできる、そんな印象の阿部がこの覚醒した狂暴なルイス・アルベルト・ロペスに勝ち切ることは出来るだろうか。体格的には阿部のほうが有利だし、ロペスは型破りの下手くそで狙い目ともいえるが、充実度とフィジカルパワーはやばそうです。
しかしながら、オシャキー・フォスターとかクリス・コルバートとか、ゲイリー・ラッセルとか、シャクール・スティーブンソンみたいな王者や、オスカー・バルデスみたいな優遇アイドルよりはずっとチャンスはあるといえます。
この一試合だけではわかりませんが、現代に「ザ・男塾」マヤル・モンシュプールみたいに面白いファイターが出てきた。
よくみりゃ結構ハンサムですが、ルイス・アルベルト・ロペスは
身長163cm
リーチ169cm
しかないフェザー級の「ザ・男塾」なのでした。
果たして短命で終わるか、化けるのか。