このくらいのネームになるとマニアの領域か、激戦のライト級は、ヘイニー、タンク、シャクールだけではありません。それに続くプロスペクトも目白押しです。
フランク・マーティン 18勝12KOは、より期待されていた、モハメド・アリっぽいミシェル・リベラを破り、トップコンテンダーに躍り出た。それでも世界挑戦とはいかず、こんなに厳しい相手と戦わなければならない。
おそらくアメリカの元トップアマ出身だろう。走攻守の整った筋のいいサウスポー
アルテム・ハルトゥニャンはアルメニア→ドイツの元トップアマで、リオ五輪ではライトウェルター級で銅メダル。その時の金メダルはウズベキスタンのファズリディン・ガイブナザロフだが、アントワン・ラッセルに負けていたのではという疑惑の試合もあった。ラッセルはノーメダルに終わっている。
プロではドイツをベースにここまで12勝7KO
さすがにハイレベルに拮抗しており、ハルトゥニャンはオーソドックスにして力強い。しかし引き出しが多く幅のあるマーティンがギリギリ要所を抑え、小差のユナニマスで勝利した。ラストのダウンがなければ引き分けかハルトゥニャンかという結果だった。
最近のアメリカのアマチュアはやや低迷しており、キューバや旧共産圏に阻まれてなかなか金メダルがとれないが、プロになると環境が充実しているせいか、逆転するケースが多い。ハルトゥニャンは五輪メダリストであり、マーティンは五輪代表になれず、国内予選で消えていた存在だが、試合前からオッズではマーティンだった。
今をときめくテレンス・クロフォードもアマチュアで世界の頂点だったわけではなく
エロールスペンスは五輪でメダルに届かず
ジャロン・エニスも五輪に選ばれず
この階級には、もっと上の成績を収めたダニエル・イエレウシノフやシャフラム・ギヤソフなど、アマチュアで名を馳せた猛者がランキングに名を連ねているが、彼らと対戦が実現したとしても、米国人が不利ということはないだろう。
それが、アメリカボクシングの層の厚さだろうし、アメリカ中心のプロの世界の現実だ。プロを育む環境が違う。
ヘイニー、タンク、シャクール
シャクールだけは五輪で銀メダルを獲得したが、一階級上の金メダル、ロブソン・コンセイサンをも簡単に退けた。
なので、このあたりのレベルになってくるとアマチュアの実績などあまりアテにならない。
そして同日、アマチュア界の怪物、超大物のアンディ・クルスがデビューした。相手は完全に高級カマセに落ちた、ファン・カルロス・ブルゴス。KOできなかったがユナニマスでクルス勝利でプロの門出。
笑って、遊んで金メダルをとっちゃうくらい別格のトップアマだったクルスだが、プロでどうなるかは未知数だ。
明日にもタンクやシャクールに勝てる才能かもしれず、プロではそのレベルまで到達せず、ノックアウトされてしまうかもしれない。
とりあえず、恐怖の強打者ではないな。