
村田諒太に関して辛口な記事を書くといつも悪質な個人攻撃を受けてきたが、それは愛情からなのだと理解してもらいたい。強い、弱い、だけじゃなく、ミドル級の頂点を目指すのであればああすべき、こうすべきな心配、懸念がついてまわるのだ。その気持ちは今でも変わらないが、村田諒太33歳、2度の挫折からの復活にしてベストバウト・・・もう残された時間を好きに、最大限のチャンスを掴んで大暴れしてくれるだけでいい。
元WBAミドル級王者でロンドンオリンピック金メダリストの村田諒太は、彼からタイトルを奪ったロブ・ブラント相手に序盤からパンチを一斉射撃し、2回2分34秒で印象的にタイトルを奪還してみせた。
33歳の村田は昨年10月に大差ユナニマスでブラントに王座を明け渡した。ブラントの絶え間なくスピーディーでシャープなコンビネーションの前に守勢にさせられ、村田の潜在的な力をみせられなかった初戦は明らかな敗北、ブラントの夜だった。
村田のホームにリングを移したこの日の再戦でも、28歳のブラントはオープニングショットを当て、日本のピーカーブースタイルの村田に対し様々な角度からパンチを打ち込み、イニシアチブを握ろうとした。
村田は強固なガードでそれらを遮断しつつ、王者に激しく立ち向かっていった。手数では劣っても村田は確実に王者の正面にソリッドなパンチを着弾していった。ブラントは元王者の報復から逃れるため、サイドに絶え間なく動き続けた。
初回が終わり、ジャッジの2人はブラントに10-9をつけた。残るアメリカ人ジャッジだけが村田に10-9としたが、それが彼らのこの日最後の仕事になった。
2回、村田はさらに攻撃的になり、ブラントは後退を余儀なくされた。ブラントをキャンバスに転がしたのは、強烈な左右のコンビネーション、左ボディ、左フックだった。
すぐに立ち上がって再開したブラントは、闘争心を示したが、試合の流れはもはや村田のものだった。村田は最後の仕留めに猛然と攻め、ブラントをロープに釘付けにした。ひどく打たれ続けたブラントに反撃の余力がないとみたレフリーは試合をとめた。村田は見事にリベンジに成功しベルトを奪還した。
村田
「ブラントが最初から力強いパンチで飛ばしてきたので少し驚きましたが、それでより積極的に出ていこうと開き直れた。最初の奇襲が彼の作戦だったのかもしれないが、それは望むところでした。打ち合ってやろうと。ダウン後に強い左ボディを当てて彼の気持ちが萎えるのを感じた。明日から息子とどこにでも一緒にいける。野球でもプールでも。」ブラント
「バットで殴られたようなパンチだった。もっと距離をとってアウトボクシングすべきだった。私の奇襲を村田が利用して逆にいいパンチを打たれてしまった。」本田会長
「普通の防衛戦などしない。ビッグマッチしかない。」ボブ・アラム
「カネロVS村田が実現するかもしれない。それは素晴らしい試合になるでしょう。」数週間前、大阪はドナルド・トランプ大統領をはじめとする主要国でG20が開催されたばかりだがこの日、6500人集めた大阪エディオンアリーナは村田のリベンジの舞台であり、彼のための夜だった。
https://www.youtube.com/watch?v=y-Xvio-nbaw
[st-card id=78655 ]村田のポテンシャルをMAXで引き出す最高の戦い方がこの日の夜のファイトであり、出来るのに最初からなぜやらないのかというのが、ひねくれマニアの第一印象だが、この戦い方にはリスクも伴うのだろう。12回を想定してしまうとこんな冒険には出れない。しかしこれぞ金メダリスト村田諒太のスタイルだ。
前傾姿勢で前に出てプレスをかけることができているし、強固なブロッキングも前に出て動くことで、ブラントのパンチを効果的に弾き返していた。攻防分離でもなく、棒立ちの受け身でもない。
わずか2回の攻防で村田の顔面も紅潮し傷跡もみれたが、結果的にこういう形で終わることが出来れば、身体にダメージ少なく、エキサイティングで最高のボルテージを生み出すことになる。
解説の井上尚弥が興奮して前半勝負でと語っていたのが印象的で、いま世界で一番こういうファイトが完璧にできる男が井上だ。だからP4Pなのだ。
瞬殺、決定機を逃さない。
これは井上尚弥が次元の違う強さとエンジンを持っているが故でもあり、ボクシングに絶対はない、余裕や色気を出して長期戦をしているより効率がいいのだ。出来るなら一気に決めてしまうべきなのだ。タイソンは本当は試合の度に怖くて震えていたという。だから瞬殺なのだ。
かねてから、後輩の井上をリスペクトしている村田は井上に感化され、腹をくくったのではないだろうか。
[st-card id=2689 ]村田が柴田を下してデビューした時、この男は全KO型だと書いた記憶があるが記事を探せない。その後、スタイルを模索して、賢い村田はトリニダードが好きだと言ったり、アウトボクシングを指向したりしていた時期もあったようだが、
違う、アンタは違う、ベテルビエフみたいなものや
と感じていた。
何度も迷走し、本田会長はブラントに負けた後に
「もともと才能ないのにここまでよくやった」
みたいな発言をしていたが、それも、違う、才能を生かしきるスタイルじゃないのだ
とも感じた。
村田は恵まれている。プロで2敗したライバル、イエフゲン・キトロフはもう灯が消えかけている。無骨だし被弾するし高齢だし、足りない部分は多くある。
しかし、ここまで来たからには、話題性もお金も大きく動く村田の市場価値を考慮すれば、残りのキャリアはビッグファイトでいい。
カネロ、GGG、チャーロ、アンドラーデ・・・
彼らは綻びない。キャリアに敗北はほとんどない。
村田は大いなるアンダードッグだ。
勝てる気はしない、いや決してそんな事はない・・・
彼らと戦う権利を村田は自ら放棄し再びたぐりよせたのだ。
村田はライバルではない。しかし少し危険で美味しいオプションだ。
毎回、日本国内でミドル級で調整する環境を作るのは大変な事だろうが、カルロス・リナレストレーナーの元、今回のファイトスタイルでもう間違いはない。走って走ってスタミナ増強し今回のスタイルに磨きをかければいいとおもう。
33歳、15勝12KO2敗のキャリアを経てようやくプロとしての村田諒太が完成した。
貴殿がいなきゃもう二度と日本でこんな夢はみれない。
https://www.youtube.com/watch?v=kPY9yGT_6BM
しかし現実的な次はジェフ・ホーンかな。
取りこぼしはもう御免だ。