コアなファンにとって意義を見出しづらいというか、レジェンドパッキャオどこへ行く?という試合ですが、オーストラリアの人々にとっては英雄が拝めて羨ましい限り。そして両者の今の実力はどうなのよという試合でもある。
マニー・パッキャオ
59勝38KO6敗2分
メイには敗れたが信用という意味では失ったものは少ない。攻める姿勢を貫き、打ちのめされた訳じゃない。そして、38歳、全てをやり尽くし政治家との2足のわらじの今なお、個人的には衰えはさほど感じていない。ブラッドリーとの再戦、ジェシー・バルガス戦、コンディションもボクシングも相変わらず素晴らしいのだ。
たしかに168センチ、フライ級上がりのパッキャオにとりここ数年KOがないのはさすがに体格、階級の限界であろうし、マルケス戦で墓穴を掘ったイケイケの攻めは鳴りを潜め、あと一歩の踏み込み、もう一発の大砲は影を潜め慎重になったといえる。けれどブラッドリー戦、バルガス戦で奪ったダウン含め、スピードもタイミングもこの人だけのミラクルなものを感じてしまう。そして慎重になった分、ディフェンスもまた固いのだ。
今回も蓋を開けてみねばわからぬが、前戦2試合はメイウェザー戦より成長を感じてしまうのです。
そしてジェフ・ホーン
ジェフ・ホーン
16勝無敗1分
予想では大きく不利だろうが、かなりのトップアマだ。
ロンドン五輪では3回戦でウクライナのベリンチク(銀メダル)に敗れた。17戦のキャリアはなかなか濃厚で10戦目あたりからかなり骨のある選手を破ってのキャリア。アマの実績とプロキャリアでは挑戦に値すると十分にいえる。ただし相手がパッキャオなのだ。
https://youtu.be/E6ryhr4zMsc
身長はナチュラルウェルターのホーンが10センチ近く上回るが、ホーンはリーチはさほどなく距離の近いスタイル。柔軟なボディワークと勘の良さで見切り、コンパクトでシャープな連打が効くタイプ。
この距離だと両者はかみ合うだろう。ホーンもかなり多彩でシャープなパンチを持つしディフェンスも巧みで筋がいいが、かみ合うとなるとやはりパッキャオの左が火を噴きそうだ。
若く、勢いあるロンドン組のエリートといえども、プロの超一流パッキャオには屈するとみる。しかも、KO決着も十分ありえるスタイルだ。
ホーンの地元、オーストラリア開催
亀海VSコット以上の超豪華マッチといえるのでホーンの準備、気持ちは相当なものだろう。その条件とタイミングだけがオールドマニア、パッキャオファンにとり不安要素だ。
コンディション次第ですが、やはりパッキャオはここでは負けないとおもいます。
ウマール・サラモフVSダミアン・フーパー
これも大注目です。フーパーがアマで格上ですが脆さを感じるのでサラモフかな。
ジェルウィン・アンカハスVS帝里木下
パッキャオの弟子相手なので、セットで大舞台が用意された帝里。どっちかというと翁長見たさに帝里を何度も生観戦した思い出がある。徳山や李烈理の系譜か、サウスポーのボクサーで距離管理が巧みなんだけどパワーレスで、接近すると頭が当たる、クリンチ多発というなんとも煮え切らないタイプであった。
負けにくいボクシングをするので、世界挑戦までたどり着いたが、そのスタイルでは強打とより鋭利なジャブを持つテテには何もできずじまいであった。
アンカハスという選手はしぶとく成長した地味目な王者だが、少しだけみた印象だと攻撃的かつ慎重で冷静な試合運びをみせる。フィリピンによくいる大振り大砲ではなく、ガードもパンチもしっかり基本に忠実な優等生的なものだ。ボディやスタミナに難のある多くのフィリピンボクサーとは違う印象。爆発力はないがどこかパッキャオのフォルムを感じ、彼の指導を忠実に守っているように感じる。サウスポーとして欠点が少なく、負けを肥やしにこれからまだ強くなる選手だろう。
アンカハスは強烈に強いとはおもわないが、帝里より隙もなくパワーも攻撃力もやはりフィリピン人らしくあるので、帝里得意の退屈な展開、お見合い、クリンチだけでは歯がたたないだろう。
パッキャオの前座という大舞台であることを考慮しても、KO奪取を狙って積極的に攻めるボクシングをしないと何も打開できないとおもわれる。
今回もパッキャオが未だ強さをみせつけて勝つような結果となれば、いつ引退でもいいし、まだ続けるならば、クロフォードやスペンスあたりとのビッグマッチが有終の美でいいとおもう。
既にクロフォードやスペンスが予想で上回るタイミングだろうが、それでもブラッドリーに隙を与えないパッキャオだけは彼らより強いかもしれないという夢をみせてくれている。
本当にアンビリーバブルなボクサーです。
恐らく、ボクシングが彼の人生の全てなので、状況が許さぬ限り、彼にとり引退の2文字はないのだろう。