ボクシングの非情、コバレフは誰に対しても負けていないのにこのような状況になった。多くの人が、アルバレスよりウォードよりコバレフの方が強いボクサーだと今でもおもっているはずだ。
アトランティックシティ、ニュージャージー - セルゲイ・コバレフはエレイダー・アルバレスに負けた後、検査的な意味で立ち寄った病院の部屋から英語とロシア語で引退を示唆するコメントをインスタグラムに投稿した。
英語の投稿では、まじめなコバレフがサポーターに感謝し敗北を謝罪すると共に、アルバレスから受けた最初のノックダウンからうまく回復できなかった事を述べた。3カ月に渡るトレーニングキャンプでコンディションが上手く作れず、疲れていたと告白した。
ロシア語の投稿ではグローブを吊るし新たな人生のステージに行く時が来たかもしれないと書かれている。アルバレスから受けたノックアウトパンチが見えず、時間内に回復できなかったと述べた。
コバレフ
「恐らく私の努力を別の分野に注ぐ時が来たのかもしれない。今は決断したくないが、ノックアウトで負けたのは事実であり、本当に申し訳なくおもう。これがボクシングなのです。全てのサポートに感謝します。時は過ぎ、次に何をすべきか考えなければなりません。」コバレフはアルバレスに対する再戦の権利があります。
6ラウンドまでジャッジ3者共にコバレフを支持していましたが、34歳の挑戦者、アルバレスもコバレフに対抗しパンチを当てていた。7ラウンドのアルバレスの右オーバーハンドがコバレフをダウンさせ、会場にいた5000人を超えるロシア人に悲鳴を与えた。
コバレフは立ち上がって試合を再開したが、足元はおぼつかなかった。できることはガードを固めることだけだったが、アルバレスはパワフルな左右コンビネーションで再びコバレフを叩き落とし、ベテランレフリーのデビッド・フィールズは3度目のダウン後、カウントを数えずに試合を止めた。コバレフは起きようとするのが精いっぱいでした。アルバレスはチームと共に喜びを爆発させた。
コロンビア生まれのアルバレスはカナダのモントリオールを拠点とし2年間にわたり、WBC王者アドニス。スティーブンソンの必須の挑戦者でしたが、試合が実現せず、代わりにコバレフ戦のチャンスをたくり寄せた。
悲しいかな日本ではアマチュアボクシングの腐敗ニュースばかりですが
この試合の衝撃の方が個人的にははるかに大ニュースです。
コバレフの敗北は全て自滅、ポカのようなもので、内容で負けていたわけではありません。
[st-card id=31811 ]決着の7ラウンドまでは個人的にはフルマークでコバレフでした。
惜しむらくは4回にコバレフの右がアルバレスの肩越しに2度ほど入り、アルバレスの腰が落ちかけ動きが止まりました。もうあと少しでストップ、コバレフタイムで終わりそうな瞬間でした。
以前のコバレフであれば、あそこで決めていた、もっといえば序盤で倒していたかもしれません。ウォードに敗れ、ジョン・デビッド・ジャクソンと袂を分かってからのコバレフはスキルとスピードを強調し前半飛ばすクラッシャースタイルから慎重、冷静な試合運びをみせるようになりました。ウォード戦の墓穴を掘りたくない、技術でも相手と大差をつけて勝てるという新スタイルへの変化の途中であるように感じましたが、一発で決まるライトヘビー級においてコバレフの持ち味、怖さはやはり老練なスキルではなく恐怖の一発、しかも序盤の一撃による圧倒でした。試合が長引くと一発逆転のリスクを抱えてしまいます。コバレフは無冠時代も一度負けかけた事がありますが、圧倒的な強打と技術を持つが打たれて効きやすい体質でもあるようでした。
再戦オプションもあるので、この方向性はもったいないとおもいますが、今からモチベーションを立て直すのは厳しいかもしれません。2度も王座についた男ですし35歳とタイムリミットも迫っています。決断は静かに見届けるしかありません。
対するアルバレスは4ラウンドあたりでダメになりかけましたがよく粘りました。鉄の意志と鉄のアゴを証明したかったと言ってましたが確かにアゴが強かった。この耐久力は意外な発見でした。コバレフのパンチは段々弱っていったと言いますが、序盤が強烈で徐々に慣れたのでしょう。
それでもやはり、コバレフが王者でいるよりは、各王者、ランカーにとり狙い目な新王者といえるでしょう。
アルバレス自身も34歳と高齢です。
コバレフの敗戦を受けて、ひとり、ジョン・デビッド・ジャクソンはほくそ笑んでいるだろう・・・と書かれていましたが、コバレフしかり、先日引退を表明したマティセしかり、
人並はずれた剛腕の持ち主は多才であっても己の一番の強みを生かして序盤速攻型、恐怖のパンチャーとしてのスタイルを極めた方がいいです。試合が長引くと、結果いいことがありません。
コバレフの今後は見守るしかないですが、個人的には歴代トップのライトヘビー級でした。なにせ、鉄腕ぶりが尋常ではなくボクシングに一番大切な恐怖を与えてくれました。
この敗北こそがボクシングだが、悲しい・・・