昨日は、WBSS、村田VSブラント、アンドラーデVSカウトンドクワと3つのメインが重なり、観戦も記述も混迷を極めました。楽しい経験なので大満足ですが、そういう時に限ってアクセス負荷が増大し、サイト表示も編集も困難になるという2重苦・・・反省を込めてサーバーの増強を図りましたが、それで何か変わるかなぁ・・・
なので、前座の方が落ち着いて、冷静に観戦できたほどです。
その中から、改めていくつか振り返りたいとおもいます。
村田VSブラント
ブラントの積極性で陣営のプランが狂ったのか、予想通りの展開だったのかわかりませんが、前半抑えて中盤から後半勝負という村田の青写真は、ブラントのジャブを中心にした積極性と闘志に序盤からペースを握られ、嫌がおうにも応戦せずにはいられず、遂に取り返せないまま敗北してしまいました。
しかし個人的にはこのような展開は予想通りであり、村田の強さ、欠点、全てが発揮された試合だったと堪能できました。ガードを割られ、顔面を跳ね上げられたシーンも多かったですが、村田はタフでパワフルでした。海外識者は、それみろ、やっぱり村田の技術は低いと感じた一方で、その巨神兵のごときスタイルと屈強さを楽しんでいたのではないでしょうか?会場はヒートアップしていました。試合が退屈だったわけではありません。
村田はかなりインテリで、プロになってから試行錯誤してスタイルを確立してきましたが、やはり、フィジカルとパワーというのが特徴で、武器はジャブ、右ストレート、左ボディしかなく、ディフェンスはブロッキングのみ。ダッキングやウェービングなどのボディワークは皆無です。
それだけの武器で、スロースタートのアウトボクサーとして世界のミドル級で戦っていくのは厳しいと言わざるを得ない。致命的な被弾を避けてガンガンプレスして潰す、ドファイターとしてのスタイルが唯一の道であると考えていましたが、スピード不足や左フックも打てないのを考えるとこれが限界か、この試合はコンディション不良などでなく、村田の良さが出たうえでの完敗であるとおもいます。村田の特徴を生かし切ったスタイルに改造してくれる参謀がいたらなぁ。
五輪で金をとったあのスタイルの延長ではダメだったのだろうか・・・
ブラント陣営に読まれてましたがそれでも村田の右はかなり当たっており、左フックがあればなぁ、倒せたでしょう・・・な破壊力でしたが・・・
ボブ・アラムは諦めきれず再戦を示唆してましたが、全てを発揮した、やりきったようなファイトに映りました。ロブ・ブラントが、GGGやチャーロとやってどうなのよ、というところの方が興味深いです。
エマニュエル・ロドリゲスVSジェイソン・モロニー
モロニーの準備が素晴らしく接戦になりました。モロニー、ルイス・ネリを倒しちゃってください。
多くの方がこの内容なら井上の圧勝だという意見でしたが、じゃぁ、ロドリゲスのどこが弱点かといえば、やはり緻密、精密で穴の少ない完成度ではありました。けれども全体的にコンパクトにまとまっており、スペシャルなものはありませんでした。線の細さ、驚異的な破壊力はなく、大橋会長の言うように、井岡的にまとまりのある完成度の高いボクサーであり、破壊力や突破力は井上が遥かに上でしょう。あとは、緻密な技巧戦、フェイント合戦の果てに井上のパンチが先に炸裂すれば圧倒的な勝利に繋がるだろう。この穴の少ないロドリゲスとやりにくいテテをKOするような事になれば、井上のスケールはもはやバンタム級ではなさそうで、アリ・トロフィーを引っさげてSバンタム級に連続参戦して欲しいくらいです。
ユニオール・ドルティコスVSマテウス・マステルナク
とてもクールなWBSSの事前PVを観て、無名のマステルナクに肩入れしてしまいました。この試合の反響は少ないなぁ。マステルナクは生涯一度のいいファイトをしたとおもいます。前半はドルティコスの強襲の前にいつ捕まるかハラハラでしたが、マスターのニックネームは伊達じゃなく、ギリギリでかわして、短いリーチで攻め込んでいくマステルナクの金星もありかな、な接戦でした。しかしジャッジは冷静にパンチの効果をみていたようです。
WBSSの井上以外の試合をみて、人生一度の究極の舞台なので、皆すごい準備をしてきます。サッカーの頂点を決める試合や、野球のエース同士の投げ合いのように、0-0の均衡はなかなか破れません。トップレベルが極限まで仕上げてくると派手なKOは生まれにくいのかもしれません。WBSS人気、存続のために派手なKOやスペシャルな選手の選出は不可欠ですが、ウシクが象徴しているように地味な判定が目立つ大会になってしまう可能性が大です。だからこそ井上尚弥やドルティコス、プログレイスなどはブギーマンとして欠かせない存在になります。WBSS本部の本音もKOファイターの優勝でしょうな。
デメトリアス・アンドラーデVSウォルター・カウトンドクワ
生涯一度のチャンスを代役という形で実現したカウトンドクワ、急遽出場でもアンダーで計量パスした普段からの節制は見事でしたが、ボクシングは非情です。過去に一度でもアンドラーデクラスとは言わないまでも、まともなランカーと戦っていればもう少し違った戦いができただろうに。
アンドラーデは今まで戦ったことがない、アフリカにはいないタイプだったでしょう。スピードに全くついていけませんでした。そしてあれだけ強気な発言をしていたのに、リングでは何をしていいかわからないほどビビり、固まってしまいました。
アンドラーデは確実にベルトを巻きたい、安全策に終始しており評価できないファイトぶりでしたが、DAZNと契約して水を得た魚のようにうれしそうです。カネロもファーマーもダニー・ローマンさえもDAZN、エディ・ハーンと契約しましたが、村田のDAZNは今回限りの特別枠か、誰が最初にエディ・ハーンと契約する日本人ボクサーになるのでしょうか。契約金の桁が違います。DAZN日本専用じゃなく海外版と同じでいいのになぁ。音声も英語だけでいい。子供の英語教育にもいい。村田の敗戦で解約の嵐ダゾーン。
トカ・カーン・クレーリーVSキッド・ガラハド
トップランクに捨てられ、ホリフィールドに拾われ、ホリフィールドが最初に世界王者にすべき逸材と言われたリベリアの優しき孤児、トカ・カーンの人生をおもうと、応援せずにはいられませんでしたがやはりボクシングは非情です。
ガラハドも英国で、フランプトンやウォーリントン、セルビー、クイッグなどの輪に入れてもらえない不遇の立場でした。決め手のない地味な接戦でしたが、ガラハドのスキルは特筆ものでした。ハメドとケル・ブルックの融合、スイッチ版みたいな変態テクニシャン。
しかしパンチに力感がなく、濃い髭のアゴに食らっていつ消えてもおかしくないような脆さも感じつつ、ゲイリー・ラッセルに迫るフェザー級の実力者はこの人じゃ?とおもいました。少なくとも同日別の興行に出ていたマイケル・コンランよりは曲者であり実力者かと。
テビン・ファーマーVSジェームス・テニーソン
これだけ注目試合が多い日のKO決着は、非力で有名なファーマーだけでした。
この試合より次、ゲルボンタ・デービスとの試合が目当てな通過点のような位置づけの試合でしたが、テニーソンというのもKO率の高い危険な挑戦者だったとおもいます。(フランプトンとカネロを足して割ったような顔でした。)エディ・ハーンのDAZNと契約したファーマーは水を得た魚のように躍動しており、ヒラヒラで派手なトランクスも相まって、まさにディフェンスマスターなド派手な動きでテニーソンをボディで簡単に料理しました。
究極の世界戦、相手も強いとなると案外パワーパンチなんかよりもこういう地味なボディが決め手になったりするんだよなぁ。派手な門出ができたファーマーですが、相手が尾川クラスに仕上げてくると、ジリ貧になるのだけど・・・
以上、とても充実した週末でしたが、どの試合に注目していいかわからず混乱しました。
今週はWBSSスーパーライト級の2試合とデレビヤンチェンコかぁ、もうちょっと腰を据えてじっくり観戦できるといいな。
そしてWBSS、井上以外全部判定やんけ、実力者を集めるとこうなっちゃうかもしれません。
やはり、役者が違う、ノニト・ドネアは必要なのだ。バーネットは究極の判定、塩系である。
そんな中で週末はブギーマンのプログレイス、どんなパフォーマンスを発揮するのだろう?