見捨てられた男たちの再生とでもいえそうな記事、ここに上げた以外にもたくさんいます。挫折を経験した彼らが輝きを取り戻すことで勇気や希望を得られる者がいる。負けた試合の中に一瞬の輝き、才能、神をみる瞬間すらある。
ロブ・ブラントは元々アメリカのトッププロスペクトだった。優秀なアマチュアキャリアがあり、世界王者候補だった。2017年7月にはWBSSスーパーミドル級から招待を受けた。
8人のトーナメントには名のある強豪もいたが、ブラントにはこのトーナメントを制する力があるとみなされていた。しかしベテランのユルゲン・ブリーマーに翻弄されユナニマスで敗れた。トーナメントに敗退しただけでなく、その期待はずれのパフォーマンスに多くのボクシングファンは彼を見捨てた。
1年後、ブラントはナチュラルな階級であるミドル級に戻り、WBAの注目度高い村田諒太に挑戦する機会を得た。WBSSのパフォーマンスの影響で、ブラントはこの試合ではかなりのアンダードッグとみなされていたが、見事にステップアップし大差ユナニマスで眩いばかりの圧勝をしてみせた。今週金曜日に24勝16KO1敗のブラントは地元のミネソタ州ヒンクリーで初防衛戦を行う。相手はロシアの無敗選手キャサン・バイサングロフ(17勝7KO)だ。
ロブ・ブラントのようなケースは珍しいことではない。期待されたプロスペクトは時に敗北を味わうが、そこから立ち直り、かつての高い期待に応えることがよくある。経験し学ぶのだ。
では、誰が次のロブ・ブラントになるだろうか?
ここに3人の男をピックアップしてみよう。ライアン・マーティン(22勝12KO1敗)
200戦以上のアマキャリアを持ち、期待されたプロスペクトであったマーティンには無限の空が広がっているようにみえたが、ブラントと同様にWBSSでヨーロッパ勢に一蹴されることになる。マーティンはアンダードッグであったとはいえ、地元のジョシュ・テイラーにとってはかなりの高いテストになるだろうとおもわれたが、ヘッドライトに照らされた鹿のように、何もできずに7回でストップされた。
さらに2カ月後、マーティンはVADAの薬物検査にも引っかかった。(マーティンは異議を唱え、現在問題は何も解決していない)
マーティンには敗北の他にVADAの問題も残されているが才能があることには変わりない。彼の運動神経、ハンドスピードはジムで教えることはできない天賦の才能だ。テイラー戦の敗北はマーティンがプロとして次のキャリアに入った証ともいえる。最終的にはマーティンが生まれ変わる貴重なレッスンだったのかもしれない。
アントニオ・オロスコ(27勝17KO1敗)
とてもプレシャーが強く、技術もあるバランスのとれたファイターだ。2015年にはエマニュエル・テイラーやウンベルト・ソトを破り、世界はもうすぐであるとおもわせた。しかしその後オロスコに暗雲がたちこめる。アブナー・ロペスとの試合ではディフェンスの欠点を晒した。さらに減量苦で体重超過を繰り返し試合の不成立を起したりした。
それでもついに昨年9月にホセ・ラミレスに対する世界戦のチャンスを掴み、見事な試合をみせたが、戦術眼が狭く、勝利を逃した。
ラミレス戦ではオロスコのディフェンスの欠点はかなり克服されており、この敗北から何かを学ぶことができれば、彼は次のチャンスを特別なものに変える可能性がある。
https://www.youtube.com/watch?v=bIE61awB9Iw
フェリックス・ベルデホ(24勝16KO1敗)
彼はプロになる前からプエルトリコの次世代のスター、PPVスターと期待されていた。しかし昨年アントニオ・ロサダにKO負けし、多くのファンが彼の元を去っていった。ベルデホに輝かしい才能があるのは間違いがない。眩いほどの才能の塊だ。しかしロサダ戦の敗北に繋がる赤い旗は確かにあった。
相手レベルが上がるにつれてパフォーマンスが低調になり、成長が感じられなくなった。私生活やトレーニングに問題が生じていると噂されていた。
ベルデホを見捨てるのは時期尚早だ。皆を興奮させたナチュラルな才能はまだ確実に存在する。必要なのは、ベルデホ自身のボクシングへの献身だ。彼がボクシングに専念すればこの敗北を糧にすぐにトップ戦線に戻ってくるだろう。
https://www.youtube.com/watch?v=KC4wP0M4uzU
ロブ・ブラントの記事かとおもったら、そこから敗北を味わい、ファンから見捨てられそうなホープへと話が変わっていました。全て納得の人選ですが、この中ではオロスコが何も期待はずれではない立派なファイトをしたという印象です。偉大な敗北。しかし王者、ホセ・ラミレスが大好物なファイトでもありました。昨日のホセ・セペダの横の動きとディフェンス、守備的なファイトこそラミレスの苦手パターンであると露呈した印象です。
ここで、個人的にもう一人加えると
岡田博喜(19勝13KO1敗)
日本、東洋ではテクニカルにしてタイミング抜群のカウンターで無敵を誇るも、本場で活躍するトップレベルのファイターのフィジカル、パワーに屈した。アジアで倒していたパンチも、元王者にして獰猛なベルトランは食っても倒れず、そのパワーに飲み込まれた。
下から上げてきたベルトランにこのフィジカル差だ。岡田の課題は明確だ。スキル、スピード、ヒット数では互角以上に渡り合い、元世界王者のベルトラン以上の部分もみせただけに、この明確な課題を確かなる手ごたえで克服した時にこの日本人の再浮上は大いにありえる。
しかし、ベルトランにとってもこの先は険しい。世界スーパーライト級というのは現在最も激戦区であり、運やタイミングに恵まれないと戴冠は厳しいだろう。
https://boxvideo.sports-web.net/top-rank-boxing/10376
とこの記者風なタッチで加えてみました。
岡田の敗北もオロスコ同様に期待外れだったわけではない。偉大な試合だった。
課題が明確といえた。フィジカル差はもちろん、軽打であれば凌げるディフェンスではガードの上からでも潰された。ダメージも深刻だろうが、学びもすごい試合であった。(さらには、試合後のベルトランのメディカルチェックも同時に願いたいところだ。普通なら負けるようなファイト、打たれ方をしていたともいえる。)