昨日ひっそりと引退発表していました。長い間お疲れさまでした。33勝(14KO)12敗1分
私が彼を知ったのは日本王者になった菊井徹平戦だろうか、こういう無骨だけどエンドレスファイターは相手が嫌だろうなぁとおもったものだ。世界初挑戦で名城信男に接戦で負けてから、まさかここまで長く、ドラマチックな活躍をするボクサーになるとはおもわなかった。
今は世界王者が常にひとりはいるようなワタナベジムの最初の世界王者は内山高志かもしれないが、育てた、ジムが生んだ世界王者だと胸を張っていえるのはこの河野公平だろう。
正直、どこが強いのかわからない、好きなタイプの選手ではなかった。たまたま生観戦した2度目の世界戦、トマス・ロハス戦、ロハスは上手いが決して一流ではなかったので、大いに期待したが
技術差で何もさせてもらえず一方的な完敗
かとおもいきや、最終回に執念のダウンを奪ったりして、何かただでは終わらないしぶとさを備えていました。この敗戦から佐藤洋太、戸部洋平に連敗し、もう完全に終わったかとおもいきや、やっぱりしぶとい。佐藤戦も生で観戦したなぁ。序盤にダウンを食い、判定まで粘るのが河野らしいとおもったが、後のインタビューではダウン後の記憶がないという。その状態であれだけやり返すのだから精神力がおかしい。
河野のボクサー人生一番の試合であろう、テーパリット・ゴーキャットジム戦。これまた、世界トップレベルでは明らかに無骨でスキルの見栄えのよくない河野はダメダメでズルズルと差をつけられていった。絵に描いたような負けペースだ。4回にいきなり作戦を変えてパンチが炸裂、逆転KOで涙の王座戴冠となった。押してもだめなら引いてみなという感じで4回に明らかに戦術を変えると、当たらなそうな河野のパンチが見事に王者を捉え漫画のような大逆転勝利となった。
この試合から、河野にはなんだか奇妙な当て勘が宿り、勝ったり負けたりするもののダウンを奪うファイターに変化していった。タフボーイから一時はマシンガンなどと呼ばれていた。
それからも長く数奇なキャリアを積み重ねてきたが、いつも全力ファイトで大健闘、判定だと厳しいスキルなのに、倒しきれない歯がゆさと期待感を抱かせてくれた。
3階級王者という肩書だけ立派な亀田をはっきり下したのは大きいし、井上には気持ちいいほどの負けっぷりだったが、その後の井上の強さ、活躍をみると河野らしい大健闘だったことがわかる。
ルイス・コンセプションにもあと少し
レックス・ツォーも、ジェイソン・モロニーも負傷判定じゃなければわからない
そんなところまで追い詰めた雑草の名王者でありました。
ゲスト解説をやらせても、想像以上に口数も少なく、しゃべりの世界も厳しそうと感じたが、本当に不器用、センスがなくても、努力でここまでできるを証明してくれた、今となってはもう最後の日本人的、昭和的ファイターといってもいいのかもしれない。
これだけやってきて、日本人ボクサー定年の年齢を迎え、大きな怪我もなく健康にボクサー人生を終えることができた事をうれしくおもう。
その歯がゆいスタイルにイライラさせられつつも
一番生観戦してきたボクサーかもしれません。
数々の熱いファイトをありがとうございました。