個人的には今年最大の注目試合だったかもしれないこの試合。
普通に行われたがホプキンスはよく受けたなぁと関心したものだ。
結果的には怪物コバレフが1ポイントも落とさぬ圧勝となったが、左右ともに殺人的な強打を誇る彼をしてもエイリアンを仕留めるには至らなかった。
コバレフの強さはなんといっても別格の強打だが、もうひとつ、この人は相当なテクニシャンであることが挙げられる。
前にプレッシャーはかけていくがフック系のファイターではなくジャブを基軸としたアウトボクサーでありフェイントを多用する頭脳的な試合をする。
ホプキンスにとりこれが計算違いだったろう。突っ込んでくればホールド、クリンチで泥沼ペースに持ち込むことができるし、武器のアッパーも出せるが、距離がある状態でコバレフは重いパンチを振ってくる。そのせいで試合を通じディフェンスだけで精一杯となってしまった。
しかしである、初回からテンプルに喰らいダウンしたものの、ホプキンスのディフェンススキルは神がかりであった。
やや下を向いたガードポジションとステップワークですでにパンチを受け流すような形ができており、芯に当てさせない。
テンプルをとらえているようでクリーンにはヒットさせていない。
コバレフの規格外のパワーの前に攻撃がほとんどできなかったが、50歳近い今になっても超人的な強さとキャリアがあるホプキンスの奥義を見るような思いだった。
終盤、特に最終回はお互いヒートアップしホプキンスも数発ビッグパンチを食らって足が泳いだが、最後までアッカンベーをしコバレフを空転させ続けた。
フルマーク完敗の試合で褒めていいものか、惨敗かもしれぬ結果ながら、やはりコバレフの過去のどんな相手より難解な相手となった。
昔、トリニダードやデラホーヤを子供扱いしたホプキンスがパワーの違う階級で逆の目にあった感じだが、なぜ負けないのか、なぜこんなキャリアなのかが証明されたような偉大な敗戦だった。
彼にしかできないディフェンステクニックとポイントリードを打開する技を堪能した。
判定ながら圧勝で決着したコバレフ、やはり過去のLヘビーの歴史を変えてしまうほどの怪物王者である。
強打だけでなく洗練さ、老獪さもあるのが特徴だ。
ホプキンスに敬意を表し「アドニスには勝てるだろう」なんて言っていた。
コバレフはホプキンスのディフェンスを崩すべく、多彩なパンチ、強弱、右から左からと様々な試みをしたがほとんど空回りした。
唯一の懸念は一発で形成を逆転されかねないこと、パンチは食うしタフネスは未知数なところだけだ。
しかしどんな相手でも優位に試合を進めることができる超強豪王者だ。
同国のライバル、ベテルビエフやロンドン金のメコンツェフくらいしか敵がいないとおもう。
彼らもコバレフに劣らぬ豪腕かつテクニシャンだ。この階級はロシアの独壇場だ。
もうひとりの王者、アドニス・スティーブンソンは対戦してくれるだろうか?
左の一発だけしか期待できないだろう、それだけで十分魅力ではあるが。
ホプキンスVSスティーブンソンなんかも見てみたい。案外単純なスティーブンソンのスタイルならホプキンスが攻略してしまうとおもう。
コバレフ
「夢のひとつにたどり着いた。ホプキンスは偉大で年齢を考えると信じられない。予想より困難な試合となった。大きな敬意を評します。12ラウンド戦う準備をしてきてよかった。」
ホプキンス
「私がまだ戦うかって?それは仕事した直後の女性に子供が産めるかって聞くことのようなもんだ。最終のゴングが鳴るまでなんとか展開を変えようと頑張ったけど、彼に及ばなかった。クルーザー級の相手に挑むミドル級のように感じたよ。今夜はコバレフに敵わなかったよ。」
訳は適当です。
サダム・アリVSルイス・カルロス・アグレブ
北京代表サダム・アリ、同じイエメンのハメドに憧れてボクシングをはじめたそうだが、ホープの割に時間をかけている。
ハメドとは違い、基本に忠実な洗練されたアウトボクサー。
アグレブが攻めてアリがさばくような展開だったが、スピードと反射神経に優れたアリが時々タイミングのいいパンチでダウンを奪う。
基本バックステップだがチャンスには怒涛の攻めをみせるアリ。
筋はいいがいまのままだと守備的なキース・サーマンといった感じで抜けた強さは感じなかった。
ただ、もう本当に天才肌で運動神経は高いな。
惜しむらくはアブレグ、戦績は素晴らしいがアリが相手だとアウトボクシングで明らかに分が悪い。
最初から徹底して馬力、体力勝負でアリの足を止めたかった。
センス、ボクシング勝負で負けちゃった感じで馬力は優っているようにみえたのでそこで勝負して欲しかった。